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曝されし手掌の道
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曝されし手掌の道
未熟な拳闘家は、太鼓をたたくように拳をやたら振りまわして敵をぶちのめすものだ。甚だ無様な勝利である。曝されし手掌の道とは、それよりもはるかに洗練されていて、危険極まりないものだ。
ひとつ問いを与えよう。ある男の胸を一枚の大皿で引っぱたいた。小さなあざができるが、怪我らしい怪我はそれだけだ。そこで大皿を割ってその破片を手にとり、同じだけの力でもって男の胸を突き刺した。今度ばかりは男も死ぬか重傷を負うだろうが、なぜなのか? どうして大きな皿より小さな破片のほうがひどい傷を負わせられるのか?
この質問の要点がそのまま、曝されし手掌の道の最初の指となる。手掌の指は五つある。集中、反応、均衡、速力、呼吸の指だ。素手による戦闘をきわめるには、これらの五つの指をすべて究めなければならない。
男と大皿の話は、「集中」の指の比喩である。すべての殴打は一点に集中させることで威力を増す。拳全体で打ち抜くよりも、親指だけで攻撃したほうが致命傷を負わせられるが、厳しい訓練を積んだ戦士にしかできない芸当だ。
「集中」はまた、自分がなすべきことだけを考えるための精神的鍛錬も意味する。究極的な目標をいつも見すえていれば、意志が雑念に揺らぐことはない。真なる戦士は、痛みすら遮断することができる。