459 : むか~し、むかし 2006/01/02(月) 20:54:28 ID:???
むか~し、むかし 因幡の白うさぎ

1/2
むか~し、むかし。因幡の国に白うさぎさんがおりましたとさ
ある夜、大洪水が起き、白うさぎ沖の島へ流されてしまい困っていました
そんな時、ワニザメさんと出会いました

刹那 「このちゃん。向こう岸まで送ってくれへん?」
白うさぎさんはワニザメさんを騙すことなく素直に頼んでみました
木乃香 「・・ええで、向こう岸まで送ればええんやな?」
このとき、ワニザメさんがにやりと笑ったのに白うさぎさんは気が付きませんでした

白うさぎさんはワニザメさんの背に乗って河を渡っていました
後ちょっとで対岸に着くときのことです
木乃香 「せっちゃん、ただ乗りはアカン。わかっとるやろな?」
白うさぎさんはびっくりして聞き返します
刹那 「な、何をすれば・・」
木乃香 「今度はウチが乗る番やで!!」

白うさぎさんはワニザメさんに押し倒されました
そして無残にも白うさぎさんの衣服は毟り取られます
木乃香 「いたたきま~す!!」

・・その二時間後、対岸では白うさぎさんが半裸で泣き崩れていました
ワニザメさんは満足そうに河に帰っていきます
木乃香 「またのご利用をお待ちしてるで~」


460 : むか~し、むかし 2006/01/02(月) 21:03:34 ID:???
2/2
半裸の白うさぎさんが河原で泣いていると、たぬきさんが通りかかりました
ハルナ 「ウホッ!いいネタ女!!」
哀れにも白うさぎさんはたぬきさんに色々と調べ上げられ、スケッチブックに書き込まれていきました
ハルナ 「ここがこうなって・・・うわ!こんなに入っちゃった!」
何かの考察もされています。他人が見たらなんというでしょうか?
ハルナ 「いいネタもらったわ。完成したら一部あげるね~」
白うさぎさんの瞳からは涙がとめどなくあふれています
刹那 「汚れちゃった・・」


悲しみに打ちひしがれる白うさぎさんに、今度は優しそうなねこさんが声をかけました
のどか 「だ、大丈夫ですか?」
白うさぎさんは返事をしませんでした
のどか 「そんな格好で寝ていたら・・ごにょごにょ・・されちゃいますよ。うちに来てください」
白うさぎさんは思いました。もう遅いと・・

結局、白うさぎさんはねこさんの家に連れられていきました
白うさぎさんは今度はどんな酷いことをされるんだろうと考えていました
でもねこさんは優しかったのです
白うさぎさんの傷を手当てして、暖かい服を着せて、おいしい料理をふるまいました
白うさぎさんはちょっぴり嬉しくなりました


夜、ねこさんの家で寝ていた白うさぎさんは大声をあげて目を覚ましました。とっても怖い夢を見たようです
そんな様子を見たねこさんが白うさぎさんの布団に入り、そっと白うさぎさんを抱きしめました
のどか 「私がそばにいますから・・怖くないですよ・・」
刹那 「のどかさん・・」
白うさぎさんはねこさんの胸に抱かれ、ゆっくりと目を閉じました。母に抱かれて眠る赤子のように・・
めでたしめでたし



462 : 刹那 安らぎ 2006/01/02(月) 22:01:45 ID:???
刹那 安らぎ


最近安らぎが欲しいと思う

お嬢様は色に狂い、私を襲う
龍宮は私をいやらしい目でしか見ない
後の者は、気が向いたときに私に変なことをする

最近安らぎが欲しいと思う


黄昏ている時間が好きだ
誰も私に干渉しないから
黄昏ている時間が好きだ


そんな私に最近、安らぎができた
優しい人は好きだ。暖かい人は好きだ。いい匂いがする人が好きだ
それがのどかさんだ

のどか 「どうしたんですか?手、冷えてますよ」
のどかさんの手は暖かい。そして冷えた私の手を温めるために自分の頬に当てる優しさが好きだ
刹那 「暖かいですね。のどかさんは」
のどか「そ、そんなことは・・」
前髪からちらりと見える瞳は優しさが溢れ出ている


私はのどかさんと一緒にいるときが好きになった
優しい時間が好きになった




468 : マロン名無しさん 2006/01/02(月) 23:09:25 ID:???
>>174
二人目は、絶叫マシンにでも乗っているかのような悲鳴で発狂しつつ手足をばたつかせ、仰向けで落ちている。
先に地面に激突したのは、猿の形をした人形、そして、それをクッションにするように後から落ちてきた人影は、
明日菜、このかの見知った顔だった。
千草「ぐあっふぅ!!」
巨大人形の潰れる凄まじい音と共に、目の前に落ちた人間を眺めながら、柿崎達は呆然となった。

人が……降ってきた。

一人は、自分の知っているクラスメートと全く同じ顔をしている。唯一違う事といえば、背中に羽根が生えている
事ぐらいだろうか。
このか「せっちゃんが……二人……?」
目を開けた刹那は、鬼の様な厳しい目つきで辺りを見回し、一言、成る程、と呟いた。背後では、思い切り腰を
打ち付けた千草が、痛む箇所をさすりつつ、「ちょっとぐらい気にしてくれても」だの、「死ぬかと思った」だの、
二言三言愚痴をこぼして、苦笑いのまま、後ろで呆然としている4人と挨拶を交わした。
千草「イタタタ……。どうも、おはつに~」
初めて顔を合わせた4人は何と返してよいか分からず、「あぁ」とも「はぁ」ともとれる、気の抜けた返事を返した。
縁のない丸メガネの位置を片手で直しながら、やや歳の離れた中学生に何と言ってこの奇妙な空気を
乗り切ろうかと千草は考えたが、結局答えが見つからず、黙って刹那の言葉を待った。
その場に居合わせた殆どの人間が呆然とする中で、斬撃を受け止められた、こちら側の刹那が辛うじて声を
出した。
「天ヶ崎……千草……?何故、お前がここに……それに、私が……もう一人?」
千草は、不意に自分に向けられた質問に意表を突かれ、答えを見失った。今は、言葉など意味を持たないのでは
ないか、そう思わせてしまう程、異質な空気が辺りを支配している。
龍宮「状況は後で聞こう。どうせ説明する気もないんだろう?」
しびれを切らした龍宮が、早く闘わせろ、とでも言わんばかりに刹那を睨み付け、挑発している。
刹那「そうだな……それに……」
一呼吸置いた時には、緊張のためか、誰かがごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。
刹那「記憶がはっきりと残る程、無事にここから帰れるとは思うな」




469 : マロン名無しさん 2006/01/02(月) 23:29:09 ID:???
>>468                                       3対6
余りの気迫に、構えたままの古菲が一歩後退する。
刹那「柿崎さん」
柿崎がはっとして我に返り、刹那が自分の名前を呼んでくれた事で、改めてクラスメートであった事を実感した。
柿崎「な、何……?」
刹那「手に怪我を負っているようですが、大丈夫ですか?」
柿崎「う、うん……」
刹那「よく、ここまで耐え忍びましたね」
優しい声で、しかし、しっかりと自分の背負った役目を忘れていない。そんな力強い声が、胸の中に染み込んだ。
刹那「柿崎さん……今、私のすべき事を教えてください」

柿崎が深呼吸をして、意識を整えた。願いは届いたのだ。見ているだけなのは辛いけど、私が刹那さんにお願い
しなければいけない、それだけで、ちょっとだけ嬉しかった。
柿崎「のどかを……のどかを、守って」

戦闘装束に身を包んだ刹那が夕凪を脇に構え、完全戦闘態勢に入った。右足を前に出し、柄に手を掛ける。
刹那「承知しました」

刹那は柿崎の一言があるまで、のどかが敵であると認識していた。しかし、のどかを守る、という矛盾した
クラスメートの頼みを、何も聞かずに受け入れた。
説明はいらない。ただ、目の前にあるものを信じて、刹那は闘う。茶々丸は、もう少しだけ柿崎を、自分を、
信じてみることにした。
故障した個所に応急処置を施す。
バランスを辛うじて保っている、ボロボロの身体でふらつきながら立ち上がり、千草、刹那と並んだ。

信じる事とは何か。この戦闘の後に、ほんの少しだけ、その謎が解けるのではないか、そんな予測があった。

三人と六人が改めて見合うと、凄まじい程の気と感情が、黒雲の下の広場を支配し始めた。

491 : 絶望の淵から 2006/01/03(火) 13:08:39 ID:???
>>313
ザシュウッ!!
音と共に、文字通り身を引き裂くような痛みが私を襲う。
痛い、痛い、痛い。
何年ぶりかに味わう激烈な痛み。強すぎる刺激が脳神経を焦がす。私の視界が、真紅に染まる。
目に映るのは流れ出す血のような紅のみ。そこには頼りになる戦友の姿も、私に強烈な一撃をくれた魔物の姿も無く、あるのはただただ紅い平面。
その時、決定的な何かが私の体から奪われたように感じた。
程なく、私は意識を手放した。




気づいたときには、白い部屋の中に居た。
ベッドから起き上がり視線を落とせば、お嬢様の姿。私の上に突っ伏すようにして寝ている。そして視線を上げれば、壁に寄りかかるようにして眠るネギ先生と明日菜さん。
「起きたのか」
不意に背後から声を受け、体が強張る。
「何もそんなに警戒せんでも良いだろう。分からないのか?私だ」
少し寂しさの含まれた声の主は、龍宮。見知った者である事を確認して、ふっ、と緊張が取れた。
「痛みは無いか?」
「あぁ」
「そうか」
ごく短い会話。まだ私の頭が完全に覚醒しきっていない故の、淡白なもの。
そしてその後訪れたのはしばらくの沈黙と静寂。龍宮は私が今どういう状態なのかわかっているようで、黙っている。
………ようやく頭が回ってきた。とにかく、現状の確認をしないと。
「ここは?」
「学園内の病院だ。学園長の息がかかった病院だから、お前と私の素性の事は心配しなくてもいい」
「……そうか。すまない。迷惑をかけた」
「礼ならそこのお姫様に言うんだな」
「え………?」


492 : 絶望の淵から 2006/01/03(火) 13:10:44 ID:???
>>491
一瞬面食らったがすぐに言葉の意味が理解できた。
よくよく考えてみればおかしな話だ。死を覚悟するくらいのダメージを受けておきながら、痛みが少しも残っていないなんて。
現代医学ではそんな事はまず無理。治癒魔法でも使わない限りまずありえない。
それが現実に起きている。つまり誰かが私に治癒魔法を使ったということだ。
「お嬢様が…」
無性に自分が情けなく思えた。本来ならば私がお嬢様を守らねばならない立場なのに。それなのに私は今、お嬢様に助けられた。
自分の弱さに絶望すら覚える。
「ん………………あ?せ、せっちゃん!?」
「あ………木乃香お嬢様……」
「せっちゃーん!!!」
お嬢様が目を覚ました。私の顔を見るなり目を潤ませて飛びついてくる。
「……せっちゃん……無事で良かった…ウチ………せっちゃんが…ひぐっ…死んでしもたらどうしようかと……えぐっ」
「お嬢様…」
「グスン……ひっぐ…えぐっ…」
私の元気な姿を見て安心したのだろう、私に抱きついて、泣きじゃくるお嬢様。
その姿を見るとますます自分が情けなく思える。お嬢様に泣いて貰うだけの価値は私には無いから。
心配してもらって嬉しくない、と言えばそれは嘘になるが、今は嬉しさよりも申し訳なさの方が大きい。
自分のミスで大怪我をして、それを守るべき人に治してもらって、その上泣かせてしまう。
何処の世界にそんなナイトが居るというのだろう。

その上、今私はお嬢様に泣くのを止めてもらいたいと思っている。私の事を本当に心配して泣いているのに、お嬢様の泣いている姿を見ていると、自分の弱さが露呈している様に感じてしまうから。
私の、汚いエゴ。
私には、強烈な自己嫌悪にさいなまれながら、泣きじゃくる木乃香お嬢様の姿をただぼうっと見ていることしか出来なかった。



結局あの後、お嬢様の泣き声でネギ先生と明日菜さんが目を覚まし、お嬢様をどうにかこうにかなだめてくれたので、とりあえずその場は収まった。
既に夜も深く更けていたため、その後すぐに皆帰っていった。最も、お嬢様は何か名残惜しそうな顔をしていたけれど。
そして夜が明けて、一日がかりで精密検査を受け、今に至る。


493 : 絶望の淵から 2006/01/03(火) 13:15:42 ID:???
>>492
私の前に今座っているのは、初老の男性医師。時折診察カルテに目をやり、深く刻まれたしわを顔を歪ませてますます深くしながら何事か一人でぶつぶつと言っている。
しばらくの居心地の悪い沈黙の後、ようやくその重い口が開かれた。
「桜咲………刹那さんでよろしいでしょうか?」
「はい」
「失礼ですが後ろの方々は?」
「!?……あぁ。友人です」
「そうですか」
授業が終わってすぐに駆けつけてくれたのだろう、いつの間にやら私の後ろには息を切らしたお嬢様と、明日菜さんと……簡単に言うと昨日の四人が立っていた。
医師はちらりとそちらに目をやると、苦々しげな顔をしてすぐに私に視線を戻した。なんだかひどく感じの悪い医者だ。
「……一応確認しておきますが、一般の方では無いですね?」
「?……はい」
何故私の検査結果を聞くのにそんなことを確認する必要があるのだろう。嫌な予感がする。
「分かりました。それなら問題ないですね」
「あの……何か一般の人間に知られるとまずいことでもあるのですか?」
「………それでは率直に申し上げましょう。昨夜貴女が魔物との戦闘で負った身体的損傷は、完治しています」
なんだ、人騒がせな。大丈夫じゃないか。
後ろで聞いていた皆も安心したようで、ほっ、と息をつく音が聞こえた。
「しかし、今後貴女が気や魔力といった魔術的な力を行使することはできないでしょう。……原因は恐らく、霊的攻撃による二次的精神・肉体エネルギーコントロール機関の死滅。簡単に言うと気や魔力の制御機関が壊れてしまったということです」
頭を後ろからハンマーで一発殴られたような衝撃。私の思考が止まり、目の前の視界がブレ始める。
コイツハイマナニヲイッタ?
「日常生活を営む上では問題はありませんが、今後は退魔士としての活動は絶対にしないで下さい。今の貴女の身体能力は、一般の女生徒のそれと何ら変わりはありません」
医師の口から紡がれる言葉を理解する度、急速に頭に血が上って行くのが分かる。同時に、視界が段々と黒に染まってゆくのも。
「治す……方法は…?」
「今のところわかっていません」
決定打。私の意識を暗い暗い絶望の底へと突き落とすのに十分過ぎる程の。
その時私は、私が信じて疑わなかった自分の存在価値が、この世から消えて失せた事を知った。


506 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 00:19:49 ID:???
バトロワ読んできた。クオリティ高い~(`・ω・´)

3分後、長いSS投下します。スレ汚しにならなければいいのですが…


題名)『lic lac la lac lilac』

【注意】残酷な、または、痛々しい描写があります。苦手な方はスルーをお願いします。
また、都合により、原作にまだ登場していないキャラが出てきます。オリジナルキャラと見なして構いません。嫌な方はスルーをお願いします。

508 : 『lic lac la lac lilac』1 2006/01/04(水) 00:23:57 ID:???
陽は薄まり、世界は夜に晒された。漆黒の覆いに散った輝く涙の数々は、一回りも二回りも過ぎ去った思い出にあるのと同じ顔をしている。
世界樹の太き御身を支える足に重みを預け、私は時を感じる。束の間にして永遠。不死者の、あるいは永久を手にした者の、避けられぬ宿命を想い、感傷に浸る。
ゼロ「御主人~、何時マデ、コウシテルンダヨ?」
エヴァ「うるさいな…折角の黙だというのに…」
根元から見上げた世界樹の幹は、星空も貫く柱で、幾百年の我が昨日さえ易々と支えてくれる。ここ学園で私が頼れるものは、この世界樹くらいなものだろう。
風に囁く葉々は、月光に舞う蝶のように表裏を瞬かせる。しかし、幹は風を裂き、揺れず歪まずの真っ直ぐを徹した。
葉と葉の隙間を漏れる月明かりが、私の肌に触れる。冷たく、高貴で、鋭いその光は本能に通じ、呪いの籠に閉じ込められた今の私にさえ語りかけてきた。
疼く犬歯を噛み締めながら、瞳を閉じる。そして、初恋の人に思いを馳せる。初めて呪文を唱えたその時から、きっと私はナギ…お前を知っていたのだ。

風の唸りが少し大きくなったように感じられる。その中に、遠い記憶に眠るナギとの思い出を見い出そうと、耳を澄ます。
泉が騒がしく流れ、ナギの声が聞こえてこない。欲しい記憶が甦らない。既にベルザンディは煩く叫び、無限を抱えたスクルドが迫る。
ナギのことを忘れてしまうのではないか、という恐怖に私の心が戦く。次々と枯れ落ちる葉に、ナギが埋まってしまうのではないか、と。
ナギの声を求めて、泉に耳を澄ます。やがて私は過去に紛れて、気付けば今日を失っていた。夢という架空の時が、私に語り始めたからだ。
脳髄が夢を織り始め、眩暈と似た感覚に堕ちていく。そこは生温かく、しかし、何度訪れても懐かしくはない。
深く沈んだ記憶が、今日もまた、波打ち際に打ち寄せられた。私はそれを手にとって、苦い日々をまた目にする…。意識は時空を越え、"あの時"に堕ちた。


509 : 『lic lac la lac lilac』2 2006/01/04(水) 00:27:29 ID:???
陽射しの下、大衆に晒された私。ここは領主の屋敷に作られた処刑台。鍬が似合う愚か者共が私を囲み、恐怖と興味を握り締め、残酷の対象に舌舐めずりをする。
彼等の声は喧騒の爆発で、それを束ねる男の声が私の罪を叫ぶまで止まなかった。その男は片手に炎を掴み、丸太の幹に身を繋がれた私に近付く。
寸前で男は立ち止まる。そして、恨みを込めた眼差しのまま、一歩だけ踏み出した。人間共の昂奮が徐々に高まる。炬を掴んだ手の指を、男は私の足元で開いた。
放たれた炎は足元の藁を走り、すぐに私の体に巻き付いた。これが、火あぶりの刑。
皮を剥がされるような痛み。髪も燃え、視界が煙に覆われる。私は叫ぶ。この痛みは堪えがたい。
分厚い暴風の向こうから、農夫共の罵りが聴こえる。不思議と自分の叫びは耳に届かない。喉も焼かれているからだろうか。

やがて煤が全身を黒く埋め、火は尽きた。
灰となった藁の床から煙が細く伸びる中、人々はざわめき怯え始めた。私が焼け死ななかったからだ。
両手を繋ぐ拘束具は焙られ身を捩らせ、丸太は白い粉を散蒔き脆くなっていた、か弱い私でも崩せる程に。
衣服は全て煙となってしまった。だから、黒く焦げてはいるが、私の裸体の輪郭を人間共は見てとることができただろう。
自由を得た私は、体の煤を払いながら深く息を吸った。吐いた息にも、やはり煤が混じっていた。煤を全て吐き出すと、再び私は息をした。
そして辺りを見渡し、様々な感情に縁取られた瞳たちが、瞬きもせず私にただ見入っていることに気付く。
素肌の身の私は、焦げても凍える寒さに耐えきれず、燻った藁の盛りに倒れた。我が身を焼いた炎の温もりに、自ら身を埋めるとは…。
処刑台を囲む人々は、藁の寝台に横たわる私を凝視していた。しかし、私に為す術はない。まだ私には魔法は使えず、人形は作れたが操れはしなかった。しかも今は昼間だ。まだ、吸血鬼の力は眠っている。
炎を放った手の主は、やはり怯えて私を見ている。台の縁から覗く面々も、そのまま恐怖の色に染まっていった。
悪魔は刑に処され、刑を経ても生き延び、今や自由を得た。しかし、何の為の自由か。私が掴んだのは無意味な自由だ。
髪に霜が生え始めたようだ。肩に垂れた金の流れは、粗雑な麻布のように肌を摩った。じりじりと体を焼く藁の残り火に目が覚める。
一度死んだ不死鳥の気持ちがよくわかった。


510 : 『lic lac la lac lilac』3 2006/01/04(水) 00:31:24 ID:???
屋敷の大卓は、主人の身で拵えた灰の山を並べる処刑台となり、それが置かれた庭は、自由を得た農夫たちに踏み躙られ、花は皆、土に花弁を汚している。今や、全ての美徳は失われた。
私がゆっくり起き上がると、静まり返った屋敷の周りを吹き抜ける微風が、私の髪と煤が覆う体を優しく撫でた。
私より先に刑を受けた、処刑台の脇に横たわる十人近くの亡骸。それらは、私を匿ってくれていた領主とその家族の無惨に焼け焦げた抜け殻だった。
処刑台から降りると、人々は足の下をよける蟲のように私から遠退いていく。その中を、煤をぱらぱらと撒きながら亡骸に近付き、隣にしゃがんだ。
良い人だった…。吸血鬼だと知りながら、私を一年もここに置いてくれた。私が悪いのだ。私が吸血鬼なんかでなければ、彼等がこんなに苦しんで息絶えることもなかっただろうに…。
人間味のある生活を思い出し始めたばかりだった。しかし、それも、もう終わったのだ。
必死に泣こうとしたが、何故か涙が出てこない。口数の減った男衆の囁き合いが空気を擦る中、庭には涙の渇れた嗚咽が響いた。

私の踏み出す足の先々、人の群れが避けていく。吸う息さえ足らなくなるほどの衆の中、私は難無く屋敷まで至った。
背で屋敷の打ち割れた扉が閉まると、水を打ったように静まり返った庭から、血の気が再び通い始める音が追って来た。それでも、後ろに振り返ることなく、私は玄関から屋敷の廊下を見つめた。
屋敷の中はかつての様子を留めていなかった。農具で顔を削がれた血も出ぬ名画、脚の足らないピアノ、床に垂れた純潔の紅涙。
我が家を離れる時がまた来たのだ。刻まれずに残った布は少ない。温もりが残る褥を見付け、身に纏い、私は流離いの心を取り戻す。そして、持ち物を集め、この地を去る支度を始める。
とは言っても、物など無いに等しかった。ここの屋敷主が与えてくれた装飾の数々は庭に群れる奴らが持ち去っただろうし、そもそも、私には唯一無二の親友だけだからだ。
親友と聞けば、何か伝わらないかもしれない。それは不恰好な人形で、大き過ぎる頭を支えきれず、
平に切り揃えた前髪を傾けながら、だらしなく両腕を重力に委せている。文句も返さず、ただ居場所を共にしてきた友。
エヴァ「また、私は人を不幸にしてしまったよ…」
人形「…」
私には友の声が、確かに聞こえていた。


511 : 『lic lac la lac lilac』4 2006/01/04(水) 00:33:32 ID:???
まだ真上から傾き始めたばかりの陽の下。裏口から屋敷を抜け出て、ただただ走る。遠退く賑わいも気に留めず、葡萄の生った木々が列を成す畑を過ぎ、屋敷の敷地を裏から囲む暗い森に入っていった。
冬子守り歌が動物の寝息を指揮する寒さの中、獣の足跡をなぞって、凍る土の上に積もった枯れ葉の柔らかな坂を登り続ける。心は空っぽで、瞳は渇き、残るは深い深い虚しさだけ…。
どれくらい走っただろう。鼻や耳が赤らんで、痒さを伴うほどに熱を奪われた頃、左右に深く広がる森に恐怖を植え付けられた。
彼方から呼び掛る遠吠え。茂みに体を潜めた野獣の息遣い。眼を白く灯らせた鳥の飛び去る羽音。久しく触れていなかった孤独に、情けなくも私は翻弄されてしまった。
まるで夜のように光を奪われたこの地は、鬱蒼たる森林の繁茂するままにあらゆるものの存在を隠している。今、何かが私を見つめ、涎に顎を湿らせているとしても不思議ではないのだ。
焚き付けられた恐怖を私は抑えられず、行き先構わず足を早めた。辺りを見回しながら、髪を忙しく揺らし、荒くなる息と脈に余裕を奪われた。
自然と私は安心を求む心に導かれ、樹々の狭間からちらついた光に気付くと、それが何の光であるかさえ気にせず、それがある方向に爪先を向けた。
昼も夜も違わぬ森の下から、草木の禿げた土の床に迷い込んで気付く。そこには、大きく開かれた樹海の穴があった。
煌々と囁き合う星々と何処で目にしたよりも大きな満月が、私とその後ろ、森山の麓で賑わうあの村を照らしていた。
月の指す方に振り返る。昨日まで、いや、今朝まで穏やかだった日々の痕跡が、そこにはあった。


涙が溢れて溢れて止まらない…。
どうしていいか、わからない…。
ただ、ただ、流れる涙に戸惑うばかり…。

でも、わかっている。泣くしかないのだ。再び涙が渇れるまで、泣き続けるしかないのだ。
情の込められた人形も、いつの間にか訪れたこの夜だけは、一言も語りかけてくれなかった。


512 : 『lic lac la lac lilac』5 2006/01/04(水) 00:35:38 ID:???
エヴァ「んん…ん?…ここは?」
茶々丸「あ…マスター、目を覚まされたのですね?」
見慣れた、そして懐かしい木製の天井が広がっていた。私の両手足、この体を支える寝台はやわらかで温かい。私の家、ここは私の寝室。
茶々丸「世界樹に寄り掛ったまま熟睡されていたようなので、私がおぶって来ました。あのままでは風邪をひいてしまいます」
エヴァ「あぁ、そうか…世話をかけたな…」
茶々丸「いいえ、マスター。それでは、私は夕飯の支度がありますので」
わずかな音も立てずに、茶々丸は優しくドアを閉じた。
それから、時計の針が一度か二度、分を刻む軋みを響かせた。調理台のある部屋から、食欲を誘う香りが早くも漂ってくる…。


窓を通して、夜の帳を尚も照らす学園都市の照明を眺め、世界樹を仰ぎながら目にした静かな夜景を懐かしむ。そして、あの哀しき夢も…。
そう何度も見る夢じゃない。数年に一度、断片的に思い出すくらいだ。
魔女狩りという恐怖の暴走が、政治に操られ始める少し前。私がこの身になって、ほんの二十年も過ぎてない頃だ。
魔法も使えず、人形も操れず、の生き延びるのに困難だった時期。まだ、人間に戻れる日が来るのではないか、という淡い希望を捨てきってはいなかった。
いつか、この呪いが解け、苦痛を伴わずに陽の下を歩けるようになるのだと信じていた。
今からすれば、馬鹿馬鹿しい幻想だが、それが当時の自分の生きる意味だった。その希望だけを手に、生き延びていたのだ。唯一の友と共に…。
エヴァ「そうか…あの頃から、一緒だったのか…」

夢を見て思い出すこともある。今の私に、ナギの夢を見ることはできるだろうか…。
鮮明な記憶となった哀しき夢の夜に見た夜空は、やはり、この星空と同じ。寄せる思いの無力さを知った、あの夜の星空と同じ。


513 : 『lic lac la lac lilac』6(1) 2006/01/04(水) 00:41:18 ID:???
樹々の狭間を抜ける風もなく、露垂れる葉も揺れることなく、北の精が森に居座ってしまったかのよう。冬将軍の剣は鋭く、容赦ない。
踏まれた草が音を立てて折れる。土すらも軋む。頭を振れば、髪からは霜が砕け落ちる。肌と身が離れてしまったかのような寒さだ。加えて、この身を包むものは屋敷からの褥だけ。
吐く息はもう白くもない。腹も空いた。森を何日も歩き続けた素足は、小石を踏んでも痛まない。全てが虚ろになりつつある。吸血鬼とはいえ、死なないだろうが、辛い。

赤く部屋を照らす暖炉、食卓に並べられた湯気を引くスープ、綿毛で肌を掻く冬着、幾重にも枚数を増した夜着…

ほんの数日前まで続いていた幸せの残像が、憎たらしいほどの再現をもって私の心を弄ぶ。今思えば、有り得てはいけないほどの幸せだった。そして、もう終ったのだ、その日々は…。

気付けば、星たちが音を立てて落ち始めていた。欠けた月は、もう満月とは程遠い有り様だ……フン、それはつまり私のことか?


514 : 『lic lac la lac lilac』6(2) 2006/01/04(水) 00:42:27 ID:???

そろそろ町か村かを見付けて、食べる物を探そう。それに着るものも欲しい。褥の他に私の素肌を隠すものは何もないのだから。

夜に潜む我が儕たちと同様、夜は私の刻だ。ここに私を射る陽はいない。私は身を隠す布を自ら脱ぎ、蝙蝠共に命じた。

"敬意を払え、我が儕にして衣を織る糸よ"

けたたましい羽音と無数の黒に包まれ、私は漆黒の衣纏う吸血鬼になった。
友を腕に抱いて、私の両足は地面を離れる。落葉をも舞い上げて、枝葉の天井を突き破る。螺旋を描いて宙に浮いた私は、周りの光景を知って息を呑んだ。
そこから見えた眺めは、この世には自分ひとりしかいないのではないかとさえ思わせる果てしないものだった。
彼方まで広がる樹木が眼下を埋め、頭上には恐ろしいほどの迫力を持って星空が覆いを成していた。月の何と明るいことだろう…。
蝠蝙譲りの羽をそのまま鋭く尖らせて、遠ざかるばかりの月に向かって、私は森の上を走ることにした。
どれも似通った森の屋根が足の下を延々と過ぎていく。夜を作る森なだけあって、土が覗く箇所はなかなか見当たらない。この限りなく続く屋根の下だからこそ、陽の眼を避けて私は宛てのない旅を続けられたのだ。
エヴァ「町に付いたら針と縫い糸を手に入れよう。お前の服も少し綻びてきたみたいだからな」
人形「…」

北訛りの風が吹き付けてきた。しかし、私は速度を緩めない。前方の森と空の境目に、人の灯りを見たからだ。


515 : 『lic lac la lac lilac』7(1) 2006/01/04(水) 00:45:42 ID:???
町中に敷き詰められた石畳は潤っているように見え、それぞれが月明かりを溜め込んでいる。
行き交う人々が靴か車輪かで磨いたその人気のない路に、私は素足で舞い降りた。ひんやり冷たい石の鼓動が伝わってくる…。それすらも暖かいと感じる私は、まさに溶けない雪だ。
その雪さえ溶かすほどの温もりが、路の両脇の蔀窓から洩れている。人の点した煉瓦色の灯りが、蔀窓の隙間から路に人の気配を映し出す。
私にもこの幸せの影が触れた。温かい…。この温もりが懐かしく恐ろしい。それは私に、安息と狂気の葛藤を与えるからだ。
私が純粋な人間ならば、この葛藤はないのだろうし、逆に完全な化け物になれてしまえば、これもまた同じことだ。
人間でありたい、しかし、私は紛うことなき化け物。
私はこの町に来た。本能が愛する月よりも、彼方に見えたこの町の灯りの方が、どこか少しだけ自分に近く感じられたからだ。
人の手によって汚され、それでも触れていたいと思う心は、正しいのだろうか…。何故、私はこの町に来たのかわからない。
人の温もりを求めて来たのか、それとも、群れる羊に潜んだ狼になったのか…。


516 : 『lic lac la lac lilac』7(2) 2006/01/04(水) 00:46:39 ID:???
この町の表層は、あの村と同じくどれも笑顔だ。怖れても仕方ない。私は黒衣を身に巻いたまま、町の中を調べることにした。
腹も鳴っているし、服も欲しい。特に、服は今夜の内に手に入れなけねばなるまい。朝陽と共に素肌を晒す気はさらさらない。
とはいえ、この時刻に子供の私が町を歩き回るのは、少し具合の悪い話だ。私は蝙蝠羽を広げ、人目を気にしながら、再び舞い上がった。
この町を囲む森が見えたが、それはもう嫌というほど見てきた。見たいのは町中だ。私は静かに、密やかに、並ぶ家々の屋根に降りた。こういう時、軽い体は便利だといえる。
息を忍ばせながら、屋根に足を這わす。屋根は煉瓦質な板の重なりで、誤って瓦を動かせば色々と厄介なことになる。だから、慎重を要する仕事だった。
実に少ないが、一応、道を行く人は見掛ける。艶やかに光を返す湖面のような石畳に、眼が焦点を失っていたが、徐々に眼が慣れてきた。そして、通りを見張る吸血鬼の眼は"あるもの"を捕えた。

他と異なる貴族風な屋敷の門から人が何人か、それぞれに黒い外套を着込み、囁きながら玄関先の馬車まで歩いている。その馬車も黒い。
囁き合う影たちの中に、その"あるもの"はいた。夜よりも黒い外套に栄える白い肌。そんな美貌を備えた若い女の姿を、屋根上の吸血鬼は見た。


517 : 『lic lac la lac lilac』8(1) 2006/01/04(水) 00:49:48 ID:???
口元を滴る体液は温く、鼻孔を擽るはチカラの匂い。満悦に歪む頬は紅く血塗られ、女の柔肌を貫いた二本の剣は上唇の下で月に応えた。
気付くと、周りで黒い外套の人間たちが、慌て乱れ叫び逃げ狂っていた。私は素足で血溜まりに立ち、傍らには例の若い女が首の辺りを噛みきられ言絶えていた。

やったのか…

本能が再び眠りについた今、私は事態を把握しながらも、高揚する肉体を悦んでいた。吸血の儀を終えた今は気持ちが良い。
しかし、人の心が完全に戻った時、それは罪悪感と恐怖に変わる。罪悪感は命を奪うという捕食行為に。恐怖は、これで自分がまた一歩、人間から遠退き、化け物に近付いたという感覚に、だ。
女と共にいた人間共の無駄に張り上げる声で、町が目を覚まし始めた。静かだった蔀の向こうはざわめき、扉や窓の開く軋みがあちこちから聞こえてくる。
このままだとマズイ。私は逃げる為、黒衣の羽を広げ、灰色雲の渦巻いた夜空を見上げた。暗雲の彼方に潜む月は、雲を透かし、まだ私に訴え続けている。"もっとやれ"と。


518 : 『lic lac la lac lilac』8(2) 2006/01/04(水) 00:50:48 ID:???
しかし、私はそれを拒んだ。躊躇いはわずかで、私はすぐに体重を風に委ねた。町のどの建物よりも高い位置にまで舞い上がり、目下の様子を眺めた。
通りに人が流れ出始め、数人が灯を手にし、口々に「殺しだ、殺しだ」と声を大にしている。
私と共に黒衣で包まれた人形は、瞼を持たず、事の経過を懐で見守っていた。生きていないかのように無口な友は、私の全てを受け入れてくれている。この、化け物である私の全てを…。

ん!?

ここで、自らの心に語りかける声は途絶えた。魔力の作動を感じる。何処だ?…足元…町の中!?
真下を見下ろして、そこに全ての集中を注ぐ。何処だ?魔法使いか?この町に魔法使いがいる!?
宙に浮いたままでは、格好の的になる。追尾型の光矢でも射たれたら逃げ切れない。通りを行き交う野次馬たちを観察し、魔法使いを探す。見当たらない。
通りから屋根の上を狙うことは、まず無理だ。屋根の上に隠れて難を逃れるしかない。それでも、魔法使いが屋根まで来れば無意味だが…。蝙蝠羽を三角に伸ばし、足下の屋根の上を目指して空中を突進する。
近付く屋根に手を伸ばす。次の瞬間には、屋根に着地しているだろう。しかし、不意に寄せた視線の先に、私は不吉な光を見た。焦茶色の外套を着込んだひとりの男が通りに立ち、短めの杖の先端をこちらに向けていた。


519 : 『lic lac la lac lilac』9 2006/01/04(水) 00:53:36 ID:???

『FLANS EXARMATIO!』

ちっ!武装解除か!

道端の男は呪文を唱え、杖射す先の私には荒風が巻き起こった。風は私から翼を奪ってゆく…まだ羽無しでは飛べない私から…。
蝙蝠共が黒い雲になり散っていく。通り上空から屋根に急降下していた私は重力を思い出し、屋根上の代わりに、屋根端の下の硝子窓に突っ込んだ。幸運なことに壁じゃない。


蝋燭の揺れる炎が夕陽色に染める壁を目にしながら、節々が傷む体を起こす。飛び込んだ部屋の中を見渡し、ここが書斎であると確信する。
さぁ、ここからどう逃げようか。逃げ道になりそうなのは、備え付けのドアと、私が作った閉じない窓だ。窓は駄目だろう。魔法使いが迫っているはずだ。だからといって、ドアの向こうは更なる檻の中。
痛む頭を抱えながら動物的本能で生きる道を探す。どうすれば逃げられる?眩暈が邪魔だ。ドアが二つに見える。頭を強く打ったらしい。
二つのドアが同時に開く。向こうから、一人づつ同じ姿格好の子供が覗いた。残念だ。やはり、ドアはひとつらしい。怯える様子もない妙な子供を眺めつつ、無駄に悔しがる。小僧、何をするつもりだ?
子供「Evangeline.A.K.McDowell……呼ぶときは"エヴァ"でいい?」

は?

考える間もなく後ろの窓を人影が塞ぐ。魔法使いだ。しかし、魔法使いの男はなかなか私を襲う素振りを見せない。これじゃあ、歪む視界に悶える私が馬鹿みたいじゃないか。

男「よりによって私の部屋に墜ちたか…私がそこに行くまで、シャントト、お前はそいつに触れずに待っていなさい。Evangeline、君には少しの間、眠っていてもらうよ」

魔法使いは再び杖を構え、聞き覚えのない言葉を唱えた。眠りの呪文か何かだろう…。無地の壁に宿った蝋燭の灯りを前に、私の意識は遠くなっていった。



532 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 17:42:29 ID:???
>>469
瞬動……常人にの目にはとても捉えられない速さで動くその移動が、戦闘の口火を切った。
戦闘状態となった刹那は、個人戦であれば他の四天王よりも圧倒的に戦闘力は高い。チームワークとも言えない
相手の闘い方は、最早個人戦と言ってもいい程だった。刹那はたった一人で四天王を相手取り、戦局を押し
始めている。元より四天王の中では№1の実力を持つ刹那にとって、それはいとも容易い事だった。
全方位の攻撃を受け流し、あっさりと背後を取っては、一撃ずつ決めてゆく。しかし、一見余裕そうに見えるその
動きに焦りを感じ取っていたのは、龍宮だった。
やはり、いくら刹那といえど、全員に本気を出されたらたまったものではないだろう。ましてや、こっちにも“刹那”は
いる。こちらにとっては本物である木乃香が見ているのでは、刹那がいつ、本気に近い状態に入り込んでもおかしく
ない。そうなる前に勝負を決しようとしているのだろう。
龍宮「刹那」
一歩距離を取り、制服姿の方の刹那に声を掛けた。
龍宮「お前も羽根を出せ」
「な……し、しかし……」
龍宮「どうせ一般人に見られている。ならお前も解放しろ。引き延ばした方が有利だ」
刹那は苦い顔で躊躇っていたが、木乃香の方を横目でちらと見ると、決意を固め、背中を天井に突き出した。
白い羽根が露わになる。相手の刹那が一瞬、しまった、という顔をしたが、すぐに元の厳しい目つきに戻った。
向こうにも、この程度で怯んではいけない理由があるのだろう。
龍宮「楓、古、後は任せたぞ。私は……あっちへ行く」
龍宮が千草の方を向き、歩みを進めた。
最近、龍宮神社に入り込んだ新人。そして、刹那の呼び掛けた『千草』という言葉。

龍宮「こんにちは。天ヶ崎千草さん」
千草「……ぎくッ!!」
柿崎達の周りに結界を張っていた千草が、びくりと肩を震わせ、龍宮の方を一瞬だけ、チラリと見た。
龍宮「この間、修学旅行があったんですよ。この学校。そこで、ちょっとしたいざこざがあってね……」
符に結界の印を書きながら、龍宮と目を合わせまいと、必死で目を逸らしている。
龍宮「どうやら、その事件の犯人は関西呪術協会からの刺客だったらしく……」
額に冷や汗を浮かべながら、小刻みにふるふると震えた顔が、龍宮の方へと動いた。


535 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 18:42:32 ID:???
>>532
龍宮「それで、刹那から聞いた話によると、確か名前が……天ヶ崎千草、とかなんとか……」
完全に龍宮と顔を向き合わせた。弁明の余地がない。
いやしかし、ここにいる龍宮は偽物……バレても何ら問題はない筈……。
龍宮が銃口をダビデ像の真上へと向けた。それは、ついさっきまで方陣のあった場所を指している。
龍宮「確かあれは、禁呪だったな……。刹那もとうとうそんなものに手を出したか……」
千草「せ、刹那はんは関係ありまへん!ウチが勝手にやった事……それに巻き込んだだけですえ」
自分の事情を唯一理解してくれた刹那の事を悪く言われ、同罪にしたくない一心で慌ててそれを否定した。
龍宮「そうか……フフ……随分深い事情がありそうだな。だが……」
二つの銃口が千草の方を向く。結界は張り終わったが、一歩でも動いたら撃ち抜かれる、そんな気迫が銃口から
溢れ出ていた。
龍宮「そんなものは知らないね」
銃声に驚いた亜子達が、口から小さな悲鳴を漏らし、目を覆った。恐る恐る手をどけて前を見ると、そこに千草の
姿はない。あるのは、穴の空いた一枚の紙切れだけだった。
千草「フフフ……甘いどすなぁ。お嬢様を奪われた刹那はんの目の方が、20倍は恐ろしかったえ。ここにいる
他の子ぉと違て、アンタにはまだ余裕があるみたいやなぁ。」
背後に立った千草が、唇に当てた符越しに龍宮を挑発した。そのまま投げ捨てる様に背中に符を放つと、熊型の
新たな式神が出現し、猿鬼と共に龍宮を挟んだ。
龍宮「ほう……これがあなたの式神か……」
耐久力だけはバカに強い猿鬼と熊鬼が龍宮の相手をしている隙に、千草は広場を覆う壁に向かって走り出した。
そこに予め用意しておいた無印の符を張り付けていく。

通常、符には“目眩”などの攻撃手段が書いてあるが、同業者や、文字の意味を理解する敵には、その文字を見た
だけで対策を講じられてしまうため、符に更に呪を掛け、無印に見せる事ができる。龍宮がその文字を理解する事を
刹那から聞いていなければ、この戦法は破られていただろう。
次の張り付け場所へと向かうために向きを変えた瞬間、目に入ったのは、穴の空いた熊鬼と猿鬼の姿だった。
千草「そっ、それは速過ぎるやろ……」
口元を緩めた龍宮の顔が、銃口と同時に再びこちらを向いた。

544 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 21:16:36 ID:???
真名「刹那は学園長に呼ばれて遅くなるそうだ」
楓 「それならば3人でやってるでござるか?」
古菲「誰か代わりに人呼ぶアルよ」

刹那「ふう、すっかり遅くなってしまった。 みんな怒ってるかな? まあ、どーせドンジャラだが」
部屋に戻った刹那が見たものは真っ白に燃え尽きた武道四天王の姿であった。
刹那「なっ! こ、これはどうしたんだ?!」
真名「…か、勝てない… 何故だ…」
楓 「まるで手の内で踊らされているようでござるよ…」
古菲「食券がもう無いアル~ 明日から学食が食べれないアルよ…」
刹那「一体誰の仕業なんだ…?」

美砂「あれ桜子どうしたの? その食券」
桜子「んふふ~ 儲かったにゃ~」
円 「桜子と賭けをやる命知らずがまだいたんだ…」

547 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 22:35:33 ID:???
1/2

朝倉「おおっと、吉田の心は折れない! 下から攻める!!」
ザジ「( ・ω・)?」
朝倉「おわっ、ザジちゃんいつの間に?!」
ザジ「(・ω・ )プライドノビデオ?」
朝倉「あー、これは実況の練習にちょっちね。 ザジちゃんプライド好きなの?」
ザジ「ヽ(´ー`)ノスキー」
朝倉「! じゃあ、ちょっと教えてあげるよ」

ちう「ザジ寝ようかー」
ザジ「三( ゚∀゚)」
ガシッ
ちう(なっ、アルティメットタックル!?)
ちう「プライドごっこか? ふふ、この程度じゃあ倒れないよ」
ザジ「(`・ω・´)マダマダ!!」
ちう(かっ、担ぎ上げ!?)
ザジ「(ノ≧□≦)ノ テヤッ」


548 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 22:36:20 ID:???
2/2
朝倉「おおっと、ザジ選手ベッドにちう選手を叩きつけた! そしてそのまま流れるように寝技に突入!!」
さよ「す、すごいですね」
朝倉「ザジ選手マウントの位置から服を脱がしにかかる! ちう選手は下からそれを防いでいます」
さよ「なんだか必死ですね…」
朝倉「ああっと、ちう選手の上着は脱がされました! そしてそこからザジ選手横四方に移行!」
さよ「朝倉さんの教えを守ってますね」
朝倉「ザジ選手、ちう選手の胸をあごで抑えながら、ズボンに手がかかる!! ちう選手太ももを閉じて防戦!
しかしこれは苦しいか!?」
さよ「ひゃあ~」
朝倉「脱がされた~!! これでちう選手は下着のみ!! あっ、ザジ選手脱がした勢いをそのまま
縦四方に移行!! 胸でちう選手の顔を押さえ込む!!」
さよ「…ゴクリ」
朝倉「さあ、通常の縦四方とは違う! より深く重なり、これは正にシッk…」
さよ「あ、朝倉さん…」
朝倉「な~に、さよちゃん、今いいトコ…」
ちう「あ・さ・く・ら・さぁ~ん、何で昨日の事がビデオになってて、あなたがアフレコしているのかな!?」
朝倉「あっ、いや、ちうちゃんこれはね…」
ちう「ザジにプライド教えたんだって? ちょうど良かった私もコマンドサンボに興味があったんだ… 付き合ってもらうよ」
朝倉「は、話せばわかる…」
ちう「問答無用!!」
ドガッ!!
さよ「見事なロシアンフックです…」


550 : マロン名無しさん 2006/01/04(水) 23:51:56 ID:???
3分後に、二日目投下します。一日目と比べて、話がダルくなります。すいません(´・ω・`)三日目で盛り返しますんで、ご勘弁を


題名)『lic lac la lac lilac』二日目(>>508->>519の続き)

【注意】残酷な、または、痛々しい描写があります。苦手な方はスルーをお願いします。
また、都合により、原作にまだ登場していないキャラが出てきます。オリジナルキャラと見なして構いません。嫌な方はスルーをお願いします。


551 : 『lic lac la lac lilac』10 2006/01/04(水) 23:55:57 ID:???
耳傍を擽る従者の囁き。ここは…?

茶々丸「マスター、起きてください。夕飯の支度ができました」
趣味に合った木目の天井に茶々丸の顔が覗き出ている。私は寝台で上半身を起こすと、額に滲んだ汗を手で拭った。ゆっくりとした瞬きの合間に呼び起こされる記憶。私は何の夢を見ていたか…。
茶々丸「マスター?大丈夫ですか?悪い夢でも見ていたようなので…」
エヴァ「大丈夫だ…いや、ちょっと待ってくれ」
荒くなった息を整える。気付けば、肩で息をしていた。下着が汗で湿っているのがわかる。
茶々丸「マスター、私は着替えを用意してきます」
エヴァ「ああ、そうしてくれ」
濡れて鋭く固まった髪が重くなって揺れている。紅潮しているだろう頬を撫でながら、夢について、つまり、思い起こされる過去について考える。
エヴァ「あの後、目覚めたときもこんな風だったな…あそこは落ち着きがなかったが」

木の香を籠める天井に再び目をやりながら、深呼吸を二度三度と繰り返した。窓から外のただ真っ黒な空間を眺める。
唾を呑むと、ごくりと大きな音が耳に響いた。鼻息さえも耳に煩い。それでも静かだと感じる、もちろん、あの場所と比べて、という意味だが…。

着替えを手にした茶々丸が戻ってきた。
エヴァ「何の夢を見ていたか、訊かないのか?」
茶々丸「はい」
エヴァ「興味ないか…」
茶々丸「いいえ、違います」
エヴァ「ん?…どういう意味だ?」
茶々丸「悪い夢なら、思い出して欲しくないので」
エヴァ「あぁ、そうか。いや、違うんだ。悪夢じゃないんだ、結局はな。むしろ、良い夢でもある。苦悩を伴うが…」

そう言いながら私はやはり数百年の時を遡り、あの時、あの場所の、夢の続きと戯れた。
それは悩ましく、しかし未熟の薫りを秘めた若き日々。


552 : 『lic lac la lac lilac』11(1) 2006/01/04(水) 23:59:32 ID:???
突如にして起きた農奴の反乱。安住の崩壊。その場で殺されるもの、後で殺されるもの。持ち出される家財。相次ぐ略奪。

自室の窓から奮起する農奴共を見ていて、こうなることは確信していたけれど…。乱暴に扉を開け、男達が部屋に入ってきた。その内のひとり、白髪混じりの皺の深い男が、力一杯に私の腕を掴んだ。
男は下劣な訛りに声を張り上げ、他の農奴もそれに声を合わせた。奴らは私を悪魔と罵り捕え、虐殺の材料に喜んでいる。
無抵抗に従っていると、逆に懐疑心を刺激したのか、奴らから畏怖の念の卵を感じた。
そのまま連れられ、鮮やかな草花が淫らに肌を染める領主御自慢の庭園まで来る。しかし、そこにかつての華やかな庭はない。花粉撒く娼婦たちは泥に塗れて、足元に伏していた。
美しい皿が並ぶはずだった大食卓が庭の中央に置かれ、支配者を灰にする祭壇と化している。屋敷の者たちがその脇に自由を奪われ、死ぬ順番を待っていた。
今朝まで笑顔で世話をしてくれていた顔は、今や絶望に殴られ青褪めている。そして、その中に領主の姿を見付け、私も青褪めた。
藁が積まれ、胴を括る丸太木の杭が付いた台が卓に乗せられた。これから皆、灰になる。恐らく、私だけを残して…。
次々と焼かれていく新しい家族。そして、私と領主の番が来た。反乱の頭が炎の揺れる炬を片手に、私達の前を行き来し、いやらしい目つきで私の体を舐めた後、大衆に向き返って雄叫びを揚げた。
男の持つ炬は火の粉を散らしながら、ゆらりゆらりと遊ぶように領主に近付き、男の小言と同時に藁に沈んだ。

うわぁああああ!!

炎の中の領主に私は叫ぶ。声が渇れるほどに。


553 : 『lic lac la lac lilac』11(2) 2006/01/05(木) 00:00:59 ID:???


ハッ………

悪夢から逃げるように眼を醒ますと、そこには見慣れない天井を背景に子供の顔が覗き出ていた。寝台で横になっている私の手足は、奇妙な疲労感を帯びて思うようにいかない。
乱れた息を整える。気付けば、肩で息をしていた。下着が汗で湿っているのがわかる。
唾を呑むと、ごくりと大きな音が耳に響いた。鼻息さえも耳に煩い。それでも静かな音に感じる。それ程に、窓の向こうは騒々しい。
側では、安物のブランケットに顔をうずめながら、あの魔法使いが寝ていた。手に杖を掴んだままだ。夢の中でも盗み見られたか…。
私の顔を覗く子供の顔は悲しそうで、同情に満ちていた。そういえば、何故、この子供は私の名前を知っていたのだろうか?


554 : 『lic lac la lac lilac』12 2006/01/05(木) 00:03:58 ID:???
傍らの魔法使いが目を覚まし、納得したような優しい眼つきで語りかけてきた。気に入らない眼だ。
男「悪いが、夢を透して記憶を見させてもらった」
エヴァ「そのようだな」
男「前もって言うが、そもそも私には、君をどうこうするつもりはない。不死者の恨みを買うのは御免だからな」
エヴァ「そうか、なら今すぐ逃がしてくれ」
男「そう望むのなら、そうしよう。しかし、約束して欲しい。この町には二度と近付くな」
エヴァ「……約束などできんな。したとしても、明日には破ってやる」
男「…困ったな。それなら、自衛の手段として、やることはやらせてもらうぞ」
エヴァ「何をする気だ?」
男「君を人間にする」

今、何と言った?

男「君をどうこうすることが私の目的ではない。しかし、敵に同情を寄せる余裕も私にはない」
溜め息を吐いた魔法使いは、軽く瞼を閉じ杖をこっちに向けた。
エヴァ「ちょっと待て、どうやる気だ?」
男「吸血鬼の力を奪う。それだけだ」
エヴァ「お前は真祖の吸血鬼を人間に戻す方法を知っているのか?」
男「今やろうとしている」
エヴァ「本当に戻せるんだな?」
杖を握ったまま、男は閉じかけていた瞼を上げた。見開いた眼は、若干驚いたようにも見えたが、しかし、どこか芝居染みている。
男「君は人間に戻りたいのか?」
エヴァ「……ぁあ、そうだ」
魔法使いは嘆息に老けた顔を若返らせ、下手な芝居を続けた。
男「ならば止めよう。本物の人間に戻す方法は、まだ知られていない」
魔法使いが次にどんな言葉を続けるか、無表情のまま私は詮索する。
男「君自身で探すしかないな。この部屋の向こうに、君が飛び込んだ書斎がある。そこに吸血鬼の秘術に関する書籍がある。自由に読んで構わない」
エヴァ「それで、お前は私をどうもしないのか?」
男「さっき、言っただろう?それに、私が君を捕えた理由は、何よりも保身だよ。この町で魔法が悪く作用することは避けたい。私まで町を追われかねないからな」
こういう脚本だったか、と鼻で笑うところだ。それを止めて良かったと思わせる真実の台詞が後に続くまで、私も無表情の芝居を続けた。
男「それに、あの村の一揆で生き延びたお姫様と知れば、悪くはできないさ。実は、君が世話になっていた領主に私も恩があってね」
そういうことか。


555 : 『lic lac la lac lilac』13(1) 2006/01/05(木) 00:05:52 ID:???
それからのわずかな会話の後、魔法使いと子供は部屋を出て行った。賑やかな外から遮断されたここに、私はひとり残してもらえた。

この両手足の倦怠感が魔法の仕業でないとすれば、魔法使いは本当に私を拘束するつもりがないらしい。今にでも、私は蔀を破って通りに出ることができる。
しかし、逃げ出す気が不思議と起きない。理由はわからない。でも、何とも言えない安堵感が付き纏うのだ。前の村の屋敷を訪れた時のように…。

ん?

今更、思い出して、ブランケットの中を確認する。ぉぃぉぃ…服着てないじゃないか…。
脳を無駄に高速回転させ、色々と恥ずかしい光景を想像する。過去も何もかも見られた…。あ~、もう死にたい…。くそぅ…。

そんな憐れな私をからかう視線が感じられる。視線を蜘蛛の糸のように手繰り寄せ、蔀間から洩れる直線の陽光を浴びた我が人形を、家具の上に見付けた。眼が笑っている。鋭い眼で睨みつけたが、友の眼は笑い続けた。
寝台から這い出て、友の肩を揺らしてみるか、または顔を背けさせるかしようとしたが、扉を越えて響いてくる足音に阻まれた。
私はより深くブランケットに潜り、目から上だけ顔を出して、扉に視線を注いだ。


556 : 『lic lac la lac lilac』13(2) 2006/01/05(木) 00:08:03 ID:???
扉は激しく軋みながら開き、忙しい雑音が流れ込んでくる。例の魔法使いが子供と一緒に顔を見せ、両手に持った衣類を大袈裟に見せびらかした。
男「着るものを持って来てやったぞ。生憎、男のものしかないが………」
エヴァ「な…なんだよ…」
魔法使いはブランケットを透視するかのように私の胸元に軽く目を落とし、溜め息を吐いたことを誤魔化しながら、笑顔で言葉を続けた。
男「…男の服でも平気だろう」
エヴァ「うるさい」
からかっているつもりか?どいつもこいつも…
男「まさか、何も着ないままでいる気か?」
エヴァ「とりあえず、今はそれで我慢してやる」
魔法使いの男は別として、傍らの子供が特に気に入らない。無垢だからこそ隠さないのか、気味が悪いほどにニタニタしている。私と魔法使いのやり取りを楽しんでるみたいだ。
そういえば、この小僧、私の名前を知っていたはずだ。この家に墜ちた時、悶える私に向かって名前の呼び方を訊いてきたのを覚えている。
エヴァ「おい、魔法使い」
男「なんだい?」
いい加減、その堪えた笑いを止めてくれ…
エヴァ「このガキは何だ?」
ついに魔法使いは、笑いを堪えるのさえ諦めたらしい。男にしては高い声で、魔法使いは女々しく笑った。


557 : 『lic lac la lac lilac』14 2006/01/05(木) 00:09:55 ID:???
男「君の言いたいことは、いや、訊きたいことはよくわかる」
エヴァ「だったら早く答えろ」
男「シャントト、来なさい」
魔法使いは子供を自分と私の狭間に立たせると、笑いで乱れた呼吸を整え、端の震える唇を開いた。
男「さて、エヴァンジェリン。何か言葉を思い浮かべてくれ」

"裸"

ぉうあ~!従ってしまった!
子供「"裸"…だって」
男「合ってるか?」
エヴァ「違うな、思い浮かべたのは"月"だ」
子供「うん、合ってるって」
エヴァ「ぅおおい!違うって言ってるだろ!」
子供「"ごまかすしかない"だって」
男「それは、お父さんにもわかるぞ」

ぎゃ~~~~!!

厄介なシャントト坊やの読心術披露は数十分に渡り続けられ、魔法使いの親子が飽きた頃には、私は心労でぐったりしていた。

エヴァ「つまり、常に心を読むことで、私を完全に監視していたというわけか」
親子揃って、首を縦に振る。嗚呼、憎たらしい…。話を聞けば、このシャントトとかいうガキは他人の心が読めるらしい。なんて迷惑な才能だろうか。
エヴァ「心を読むなと言っても無駄だろう……」
こら、頷くな。
エヴァ「……しかし、着替えの時はひとりにさせてくれ」
頷け。よし、良い子だ。


558 : 『lic lac la lac lilac』15 2006/01/05(木) 00:11:34 ID:???
二人を部屋から追い出すと、私は着替えを始めた。雑多な綿で織られた服をブランケットの上に展げ、色々と感想(むしろ文句)を述べる。何よりもまず、真祖に相応しくない。
しかし、何も着ないわけにはいかず、渋々、着替える。あのシャントトとかいうガキの服か?微妙に私の方が体は大きいようだ。例えば、袖が足らない。それに加え、あぁ…、やっぱりだ。
扉を少し開け、わずかな隙間に顔を突っ込み、廊下で待機する二人に注文をつけた。
エヴァ「服が小さくて腹が出る。もう少し大きいのを頼む」
男「シャントトの服だと、それ以上の大きさは無いぞ」
エヴァ「あ~、じゃあ、お前ので構わんから持ってこい」
男「シャントト、見張ってろよ」
魔法使いは何処かの部屋に服を取りに行ったようだ。フン、なかなか従順じゃないか。戻ってきた魔法使いから服を受け取り、再び部屋に閉じ籠る。
うぁ…、大きい…。鏡の前で大き過ぎて着れない服と悪戦苦闘する。私が着ると、まるでワンピースのようだ。ふと思いついて、再び注文しに扉を開けた。
子供「はい、これでしょ?」
シャントトが手渡してきたものは細めの帯。そういうことか、やられた。
エヴァ「心を読んだのか?」
シャントトは自慢げに頷いた。


559 : 『lic lac la lac lilac』16(1) 2006/01/05(木) 00:14:28 ID:???
茶色を脚に穿き、胴続きの草色のワンピースを黒い革紐で腰に結び付け、とりあえずの間に合わせとする。
質問攻めにしてやるつもりで二人を部屋に招き入れたが、親の魔法使いが訊いてもいない問いに勝手に答え始めた。
男「まず、人間に戻りたいという君の願いには協力しよう。さっきも言ったが、書斎にある魔法関連の本は好きに読んで構わない」
エヴァ「見返りには何を望む?」
男「家事全般だな。飯作れ、部屋掃除しろ、洗濯もだ」
真祖の私が雑用係?こいつらは、そんなことをやらせるために私を保護したのか?思わず不機嫌が顔に出る。
男「居候の上に書斎を貸してやるんだ。そのくらいの条件は呑め」
そんな使用人の役目は私の自尊心が許さない。第一、何不自由なく育ってきた私に、家事などできるはずもない。自信を持って誇れるのは、好きでやっていた針仕事くらいなものだ。
エヴァ「飯作るのも掃除も洗濯もやったことはないが、それでもいいなら…」
男「シャントト、教えてやれ」
子供「うん」
苦し紛れの言い訳も通用しない。初めからそうだが、こいつらは強引なんだ。しかも、やけに子供っぽい。
エヴァ「なんて奴らだ…腹立たしい」
子供「あ、本音を隠さなくなったね」
エヴァ「お前が筒抜けにするからだ」

確かに、書斎を自由に使えるということは、私にとってこの上なくありがたい話だった。人間に戻れるかもしれないという淡い希望については勿論だが、
この機会に魔法についての知識も得ておいて損はないだろうからだ。魔法関連の本に触れられる機会は極めて少ない。これは好機だ、魔法を学ぶための…。


560 : 『lic lac la lac lilac』16(2) 2006/01/05(木) 00:15:11 ID:???

魔法使いは思い出したように表情を改めて、外界から陽射しを受ける蔀を指でつついた。
男「今は昼間だが、なんでこんなに外が賑やかだか、わかるかい?」
エヴァ「私のせいか…」
男「さっき、外を見てきた。悪魔が現れたと騒ぎになってる。しばらく外には出ない方がいい」
エヴァ「そうか…すまないな。迷惑をかける」
男「好きでやってる人助けだ。迷惑なんて思ってないさ」
魔法使いはシャントトの肩に手をそっと置き、目は遠い彼方にはたたく彼なりの悲愴に落ち着いていた。私はその目に心惹かれた。自分と同じ寂しさが籠められているように思えたからだ。
詰る所、これは傷の舐め合い。忌み嫌われる宿命を背負った者同士、一本の傘の下に隠れているだけ。
魔法、魔力といった類のものは、大概、禁忌とされる。人間は自分らを脅かす存在に容赦しないものだ。
しかし、"人間"は望んでもいる。強大な力や永遠という驚異を貪欲に、そして無差別に求める。それがどんな不幸であったとしても、構わず自分のものにしたがる。

そして今の私は、"吸血鬼"から"人間"に戻ることを望んだ。


561 : 『lic lac la lac lilac』17 2006/01/05(木) 00:17:52 ID:???
エヴァ「…いや、やはり話すのは止めよう」
恥ずかしいからな…。
茶々丸の持って来た服に着替えながら言葉を続ける。唇は曖昧な単語を刻み、何とも意味を持たない一続きの言葉を綴り終わると、私は茶々丸に向き直った。
エヴァ「言うなれば、私が最弱最小の吸血鬼だった頃の話だ」
茶々丸は黙って私の全体を眼球のレンズに映している。レンズの中の着替える自分を意識の外で確認し、その姿を意識の内に引きずり込んだ。
夢を経た体がまだ微かに残る感覚で、シャントトの服の小ささを訴える。あれ以来、私は自分が他よりも大きい体なのだと感じることは稀だ。
成長のしない肉体が時の経過を忘れさせる。毎年と変わらぬ年齢の身体は衣服の寿命より長くそのままで、足らぬ袖に憤りを感じることもない。

エヴァ「茶々丸」
茶々丸「はい、マスター」
エヴァ「明日、適当な店で服を買うぞ」
茶々丸「服を?」
従者は電算の入り組んだ心で意図を汲み取ろうとしている。服は手作りと決めているのに何故?と習慣に反する事態に困惑を隠さない、そんな正直なお前が好きだ。
エヴァ「ああ、服だ。今回ばかりは手作りでは面白みがない」
茶々丸「わかりました。では、後で学園内から適当な店をいくつか探しておきます」
エヴァ「頼む。私より少し小さいサイズの服が欲しいんだ。着れなくはないが、着るには小さい服が…」
言い終わる寸前に、自らの異常に気付く。小さい服で何をしようというのだ。きっと、あんな夢を見たからだろう。どうかしていた。
エヴァ「…っあ~、すまないな茶々丸。やっぱり今のは無しだ」
茶々丸「服は探さなくてよろしいのですか?」
エヴァ「ああ。探さなくていい。ほんの気まぐれに惑わされただけだ」

汗に湿った服を茶々丸に手渡し、私は食卓に向かう。木の質感をしっかりと足裏で踏み、あの町に初めて舞い降りた時の石畳と比べる。
そして、食卓に向かう自分の像は夢に流れる時に呼び掛け、また異なる過去の情景で私を覆う。
別れを悲しむと知りながらも尚、出会いを喜び求む、時の経過を知る心の一時の慰めが思い出されてならないのだ。


562 : 『lic lac la lac lilac』18 2006/01/05(木) 00:20:01 ID:???
人形片手に木目の軋む階段を降り、食卓に並ぶ暖かい食事の匂いを想像して鼻を利かせる。
そこには、あの村の屋敷にある大卓と異なり、小さな小部屋に小さな小卓が置かれていて、三つの小さな小椅子がその周りを囲っていた。何もかもが小さいので、自らも含め、全ての他の家具が大きく見える。
魔法使い、シャントト坊や、私の順に席に腰を下ろした。疑問と決めつけに満ちた沈黙が、布擦れの音まで大きく感じられるほどに気まずく流れる。
理由は実に簡単だ。食卓には何も並んでいない。
エヴァ「…何も出ないのか?」
男「君が作るんだろう」
子供「料理、掃除、洗濯…の中の料理」
エヴァ「今日から…なのか?」
男「君は昨夜から居候してるんだが」
子供「最初は手伝うよ。ほら、立って」
強制的に料理をさせられる羽目に陥った私を、代わりに椅子に座した友なる人形が、やはり馬鹿にする目でこちらを見ていた。癪に障る。
私の心を読んでか、側のシャントトが芋を洗いながら言った。

子供「友達の"チャチャゼロ"に笑われてるよ。ほら、ちゃんと洗って」

その一言で、シャントトが差し出した芋を受けとる余裕などなくなった。
エヴァ「チャチャ…ゼロ?」
目を丸くして小僧は驚く。そして、また心を読んだのか、問いを先取りして答えていく。
子供「君の友達の"あの人形"には名前があってね、あぁ、自分で付けた名前らしいけど、"チャチャゼロ"っていうんだって。うん、え?、読めるのは人の心だけじゃないよ。人形だって、草木だって、心があれば読めるんだ」
エヴァ「お前…」
子供「チャチャゼロの言葉を代弁しようか?"シッカリシロヨ"だってさ。ほら、芋洗って」
冷水を抱えた盥で芋の泥を洗い流しながら考える。全てシャントトに読まれているだろうが、もう構ってはいられない。
私が旅に連れていたのは単なる人形ではなく、本当に、語らぬ親友だったのだから。


563 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 00:27:46 ID:???
>『lic lac la lac lilac』
今日はとりあえずここまで(´・ω・`)

投下してても「長いなぁ~」とか思いました。これで、全体の2/3を投下したことになります。つまり、次回で話は終わります。

一日目(確か『lic lac la lac lilac』5かな?)にある通り、エヴァが30歳に達してない頃の話なので、言うなればエヴァの成長物語に位置します。なので、徐々に原作のエヴァに近付いていくのが演出できたらな…と思っています。

ちなみに、シャントトは原作の世界にも、ちゃんと存在している人物です。完全なオリジナルではないです。

571 : 真名の苦悩 27 脂肪 2006/01/05(木) 01:35:54 ID:???
流れを無視するようでスマソ

真名の苦悩 27 脂肪


お正月、私たちはゆっくりとした時間を共に暮らしていた
朝、目がさめれば隣に居る二匹の子犬
お寝坊さんな彼らは、朝食の香りがするまで起きてくることは無い
仰向けになって大の字になって気持ちよさそうに寝ているのだ
警戒心といったものはまったく無い

カワイイ・・

お昼にもなれば彼らは昼食をせがんでくる、ご飯しかないか?キミたちは
だがそんな彼らと一緒に食べるご飯がたまらなく好きだ
一生懸命食べるその姿は見ていて微笑ましい
たまにご飯の取り合いをしている姿も見られるのもたまらない
ご飯を食べればお昼寝の時間だ
やっぱり警戒心は無い、大の字で寝転んでいる

カワイイ・・


というような感じで彼らは立派な寝正月をすごした
横で寝ている彼らをつついてみる。ぷにぷにと柔らかい感触が気持ちいい
だがしかし・・
寝正月は彼らを太らせてしまったようだ
お腹の丸みが、かわいい様で危険な感じだ

明日から外で特訓だな。ボール遊びがいいかな・・



573 : ハルナ いたずら 2006/01/05(木) 05:13:26 ID:???
ハルナ いたずら


ハルナ 「ほほう・・なかなか男前じゃない!」
ハルナの目の前には仔犬がいる。ハルナは近くで寝ていた仔犬を捕まえて、ちょっとしたいたずらしていた
手にもった黒マジック、ハルナは仔犬に眉毛を書く
仔犬は自分が何をされたのかはわかっていない。きょとんとした顔でハルナを見つめている
少しばかり首をかしげながら、舌を出しておすわりをしていた
ハルナ 「バカ殿みたいでなかなかいいね!!」
ご満悦のハルナであったが、迫りくる危険な気配に気が付かなかった


真名 「貴様、私の仔犬に何をしている・・」
ハルナが振り返ればそこには人鬼が立っていた
明らかに殺意と憎悪に満ちた目で鬼はハルナを見つめている

ハルナ 「こ、こんにちは・・この子、真名さんの?」
真名から放たれる殺意はハルナに向けられている。もうじき修羅場になるなとハルナは感じた
でも・・こんな修羅場は・・好きじゃないなァ、と思う
真名 「かわいいだろう・・私の仔犬は。眉毛が無いほうがもっと可愛いんだろうがな」
ハルナ 「私は、眉ありのほうがいいかな・・」
死はもうすぐそこまで迫っているような気がした

ゆらり・・と鬼は動いた。いや、ゆっくりと動いたように見えた
交通事故のときなんかに世界がスローモーションで見えるような感じだろう
ハルナの最後に見た映像は、眉間に突きつけられようとしている銃口であった

ハルナ 「うきゃあああああ!!!!」
痛いってよりも熱いな・・額はそんな感じであった



583 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 17:47:16 ID:???
>>535
突如、銃声が止んだ。回られたかと思い、慌てて周辺を確認すると、茶々丸が龍宮に向かって体当たりを仕掛けて
いるのが目に飛び込んできた。龍宮はすれすれで身体を捻って回避してはいたが、警戒を誘うには十分な
牽制になっただろう。
すると今度は、今まで茶々丸の相手をしていた明日菜と葉加瀬が、千草の方に狙いを定めてくる。明日菜の
手持ち武器が、こちらの式神を一瞬で消してしまう事は知っていた。ここまで猿鬼と熊鬼の耐久力が役に立たな
かったのは、前回の失敗以来だと、改めてこの学園の人間の恐ろしさと、この闘いに勝つ事の難しさを実感した。
千草「あっ、アンタ何でそんなに足が速いんや!!」
木乃香「明日菜はクラスで2番目に速いんやよ。もっと速く走らな、追いつかれてしまうえ」
遠くの方から聞こえてきた木乃香のその声は、以前に会った時よりも、明らかに質を異にしていた。
あれではまるで……
しかし、そんな事を考えている暇はない。バカに足の速い明日菜と、何やら宙に浮いている巨大な機械からの
光線を回避するのに全神経を集中させなければ。あれを喰らっては、怪我どころの話ではない。




584 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 17:48:25 ID:???
>>583
茶々丸の空中からの援護が入り、何とか2枚目を張り終える。2枚目の符を張るのにさえ、ここまで苦労するとは。
千草「そこの飛んでる娘ぉ、ちょっとこっち来てや!!」
茶々丸を呼んだつもりで言ったが、葉加瀬と偽者の刹那が何か用か、と言いいそうなキョトンとした顔でこちらを
向き、飛んでいく茶々丸の姿を見て、ああ、自分じゃないのか、と妙に納得したような恥ずかしそうな顔で元に
戻った。千草は間違えて呼んでしまった事に変な責任感を感じ、何か言わなければいけない様な気がしたが、
茶々丸が到着してそのままうやむやになってしまった。
その妙な空気で趣味の川柳ができそうだったが、やめておいた。相手に隙ができたから、まぁいいか。
千草「お札張るの手伝ぅてや。あの二枚を一辺にして、正八角形を作っておくれやす」
茶々丸はこくりと頷き、再び飛ぶ姿勢に入る。しかし、千草が何か思い出したように、茶々丸を呼び止めた。
茶々丸「なんでしょうか?」
千草「アンタ、名前は?」
茶々丸「絡繰茶々丸と言います。それが何か?」
千草「ほうか、ほなら頼みますえ、茶々丸はん」
千草が茶々丸の背中に符を張り付け、その勢いで宙へと後押しするように、押し出した。
589 : ハルナ いたずら2 2006/01/05(木) 18:42:57 ID:???
ハルナ いたずら2


とある昼下がりの公園
二人の幼い兄弟たちが人目もはばからず戯れていた

兄 「もう我慢できないんだ!!お前のこと・・好きだ!!」
弟を押し倒した兄は、押し倒した弟の瞳をじっと見つめる
弟 「ダメだよ兄ちゃん!僕たち・・兄弟なんだよ!」
しかし弟は頬を赤らめながら、プイっとそっぽを向いてしまう
だがその表情には何かの期待が込められている様にも見える
兄 「もう一度言う、好きだ」
横を向いていた弟であったが、普段とは違う兄の真剣な言葉に顔を正面に向け、お互いに見つめう
弟 「兄ちゃん・・」


ハルナ 「くは~!たまらないな。お姉さんこのシチュエーション大好き!!」
暇だったハルナは、そのあたりで寝ていた仔犬を二匹捕まえて”兄と弟 禁断の愛”ごっこを繰り広げていた
ハルナ 「ふふ・・では、クライマックスへ・・いきましょうか!」
そのときである。後頭部に何か硬くて冷たい物が押し付けられた

真名 「貴様、私の仔犬たちに何をしている。前回、殺したくらいでは懲りていなかったということか・・」
ハルナは仔犬を掴んでいた手を離し、両手を上げて”抵抗しません”のポーズをとった
真名 「ん?どうした、続きはしないのか?」
ハルナ 「この後は・・意外と弟は激しく兄を求めてきたってプレイなんだけど・・見る?」
真名 「貴様にかける慈悲はいらないようだな・・」
ガアアアアアン!!!

ハルナ 「うきゃあああああ!!!!」
後で鏡を見てわかったが、撃たれた跡が禿げになっていた



592 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 19:01:01 ID:???
3分後、『lic lac la lac lilac』三日目(>>551-562の続き)を投下します(`・ω・´)

今回で完結です。


593 : 『lic lac la lac lilac』19 2006/01/05(木) 19:04:46 ID:???
舟から見た陸地のように濃紫色の雨雲は流れ、川を下る桴の如く町は為れるままに時を過ごしていた。
石畳に溜った雨水に、次なる雨が波紋を重ねる。屋根から垂れる雨水は過去の涙の跡を辿り、石の窪みを更に深いものにする。
雨降る毎に繰り返されてきた風景が、今日もまた何ひとつ変わらず繰り返される。初めの雨はいつの事だか、私がこの町に来たのもいつの事だか…。

一際暗い雨降りが数日と続き、一向に晴れる気配はまだない。しかし、それも私には関係のないことだった。揺らぐ灯に蝋を融かしながら、難解な書物と格闘しているだけの毎日だからだ。
傍らには何時も離れずチャチャゼロがいる。何もかもが充実していく。本当の友、新しい家族、ついに終わる苦渋の日々…。

説き明かされていく吸血鬼の秘術。思うに、実体験が大分の助けになったはずだ。十日の誕生日にされた儀式の記憶が、断片的で蒙昧に見える秘術の記述を確信的なものに変えていく。
そして、その複雑な糸の絡まりを解いた時、吸血鬼の永遠は絶えるだろう。
男「なぁ、エヴァンジェリン。あまり無理するなよ」
エヴァ「吸血鬼を見縊るな、…フフン」
魔法に対する知識も増えた。始動キーの存在、呪文詠唱と精霊の関係、体内から発する力と体外から取り込む力…しかし、全ては後回し。吸血鬼の呪いが解けるのなら、私は魔法などに頼りたくない。
シャントトのお陰で家事も得意になった。人間に戻った後で役に立つだろう。他にもシャントトには感謝することが山ほどある。シャントトは私とチャチャゼロの文字通り架け橋だった。
チャチャゼロの声、それが空想の域を越え、現実の触れられるものとしてある、それが何よりも心強かった。今までの長い人生、ずっと一緒だったからだ。

芽生えた絆は奈落よりも深い。死ぬまで、そして、死んでも続く絆だろう。


594 : 『lic lac la lac lilac』20 2006/01/05(木) 19:06:41 ID:???
私の用意した食卓の席は、今や自慢になっていた。
エヴァ「美味いだろ、ははは、美味いだろっ!」
男「美味いから、そろそろ君も食べたらどうだ」
エヴァ「…いや、その…」
子供「味見でお腹いっぱいで、焦がしたやつも証拠隠滅したから無理だよ、お父さん」
エヴァ「ぇえい!だから、その力を秘密暴露に使うんじゃない!」

この賑やかさが大好きだ。妙な話だが、シャントトの迷惑な力のお陰で私は遠慮なく全てを話すことができたし、まずこの家には隠し事がないのだ。相手を疑う必要のないことが、こんなにも平和だとは…。


雨が止んだこの日。夕飯の後、私は久しぶりに外に出ることにした。勿論、チャチャゼロを抱いて。
私がこの町に来てから、何度か月が満ち欠けを繰り返してきた。そろそろ吸血の一件も世間から薄れている頃だろう。
とはいえ、通りに身を晒すと、魔法使いやシャントトに迷惑を掛ける事態になりかねない。手始めとばかりに、代わりに屋根に這い上がった。
屋根から見下ろした通りは以前のままだ。漆のように月明かりに応える石畳、煉瓦色の灯りを洩らす蔀の並び、夜空を圧倒的に支配する月…。
屋根の端から両足をだらしなく垂らし振り子のようにしていると、その脇からシャントトの声が聞こえた。
子供「外に出たんだ」
エヴァ「ああ、久しぶりにな」
子供「そっち、行ってもいい?」
このガキは知ってるクセに、敢えて尋ねたりする。いつも通りに返事を先取りしたらどうだ?え?
子供「ねぇ?そっち、行ってもいい?」
エヴァ「ほら、掴まれ」
そう言って差し出した手を、何の遠慮もなくシャントトは握り返した。吸血鬼の力で屋根上まで持ち上げると、坊やは満足げに微笑み隣に腰掛けた。
子供「人間に戻れそう?」
エヴァ「なんとかな。皮肉なことに、吸血鬼化の儀式の記憶が一番の手掛りだ」
子供「でも、戻れるなら…良かったね」
エヴァ「あぁ。もしかしたら、明日にも方法がわかるかもしれない」
子供「え!?すごい」
エヴァ「本気にするな。そんな気がしただけだ」


595 : 『lic lac la lac lilac』21(1) 2006/01/05(木) 19:08:38 ID:???
坊やとの会話の間、私はチャチャゼロに関心を寄せていた。念願叶う私に、チャチャゼロはどのような祝福の言葉を投げ掛けてくれるだろう。

子供「実はさ、渡したいものがあるんだ」
シャントト坊やは遠慮がちに分厚い本を一冊、懐から取り出した。
子供「心を読める本だよ。これはその試作品」
エヴァ「お前が作ったのか?」
子供「うん。あまり詳しくは教えられないけど」
その本は月光に禍々しく栄えたように思えた。それくらいに魔術的な趣に満ちていたのだ。ラテン語の表紙に魔力を秘めた紋様を飾り、しかも無駄に重く厚みがあるのだから。
子供「これが必要になると思うんだ。それはもうエヴァの物。返さないでいいよ」
私は黙って受け取った。自ら親友の言葉に触れられる、その思いが心を支配していく…。
子供「僕はもう戻るね」
シャントト坊やは勝手に屋根を降り、窓から部屋に滑り込んで行った。構うものか、私とチャチャゼロの間にもう小僧は不要なのだ。


596 : 『lic lac la lac lilac』21(2) 2006/01/05(木) 19:09:27 ID:???

月が妖しく掲げられている。雲は白く淀んでも見え、透明な明かりに漂っていた。彼処に行きたい。
もしかしたら、本当に人間に戻れるかもしれない。そして、その日は明日かもしれない。そうなれば、宵の空を舞えるのは今で最後かもしれない。
月の光を透さぬ黒い雲を、私は森の彼方から招いた。その黒い雲は目前で羽音と共に木の葉の如く散り、蝙蝠の羽と姿を変え私を包んだ。
私は吸血鬼。
チャチャゼロと本を抱え、空に向かって足を放した。この無重力な自由、私は忘れていた。今更だが恋しい。一度得た力は、手放すに惜しいものだ。しかし、心は揺るがない。
私は人間に戻る。所詮、これは最後の舞い。吸血鬼への月の誘惑は無駄に終わったようだ。私の決心は固く揺るがない、縦しんばそれが満月であっても。
月夜を游ぐ私は片手で易々と本を支え、風向くままに頁を捲った。最初の頁には使い方が書かれていた。シャントトの字だろう。面倒なので適当に読み飛ばす。
使い方の説明通りに"相手の名前"を唱え、声で心に語り掛ける。
人形の面が頁の上半分に浮かび上がり、下半分には文字が並び始めた。
ゼロ:"ケケケ…、久シブリダナ…"
エヴァ「最初の言葉がそれか?」
ゼロ:"最初ノ言葉?オイオイ…忘レチマッタノカ?アノガキニ会ウ前ハ、心デ言葉ガ通ジテタハズダゼ…"
エヴァ「どういう…」
ゼロ:"コンナ本ナンカ使ワナクテモ、心デ会話デキテタハズダ…"

私の中で何かが音を立てて壊れた。


597 : 『lic lac la lac lilac』22 2006/01/05(木) 19:11:28 ID:???
ゼロ:"トリアエズ、ソノ本ニ頼ラズ話ソウゼ…"
私は雲の影の狭間を漂いながら、チャチャゼロとの交換日記的な会話を止めにした。自分の中に眠っていた何かが思考を埋め尽していく恐怖に脅えながらも、魔法の本を閉じた。
エヴァ「…本は閉じたぞ」
ゼロ「…」
エヴァ「人間に戻る念願を叶えられそうな友に、捧げる言葉さえないのか?」
ゼロ「…」
エヴァ「…話をする気がないのか?」
慎重に、そして徐に本の表紙を掴んだ。チャチャゼロの顔色を伺いながら、ゆっくりと本を開く。開きながら、頭の片隅で懐かしい声が響いた気がする。"ヤメロ"と。
エヴァ「なっ…」
後悔した。本を開くべきではなかった。友は悩んでいただけなのだ。私に捧げる言葉と、自分の正直な気持ちと葛藤していただけなのだ。
ゼロ「ダカラ、"ヤメロ"ッテ言ッタンダ」
手の震えを抑えながらも瞼を閉じる。シャントトの力、そして魔法の本の意味を今、やっと知った。
シャントトの力は、相手の心を知れる力じゃない。知らされる力だ。魔法の本は、会話のための道具じゃない。心を盗み見る道具だ。
魔法の本に綴られたチャチャゼロの心は、私にとって残酷であり、しかし対等なものだった。チャチャゼロは友として、常に私と対等だったのだ。その関係を侵したのは、私。

拭う涙を月明かりに誤魔化して、チャチャゼロの言葉を待っていた。しかし、沈黙が続くだけ。耳に入るのは、私のすすり泣く声だけ。
エヴァ「悪かったな。私は自分の事しか考えてなかったみたいだ」
ゼロ「…」
私が覗いてしまったチャチャゼロの心。閉じ忘れていた本には、それが深々と刻み込まれていた。

ゼロ:"人間ニナッタ、オ前ガ死ンデモ……オレハ死ネナイ"

束の間にして永遠。不死者の、あるいは永久を手にした者の、避けられぬ宿命。
ゼロ「何時マデ、コウシテルンダヨ?」
エヴァ「うるさいな…折角の黙だというのに…」
月の支配する今宵の空は、絶えぬ涙の無数を知って、共に瞬く星々を撒いた。
私は本を静かに閉じ、永遠に開かぬと誓った。涙に滲んだ星月夜は、私とチャチャゼロだけのもの。私は人間に戻らない。所詮、これは永遠の舞い。友を残して逝けるものか。
芽生えた絆は生死よりも深い。死ぬまで、そして、それは永遠と続く絆だろう。


598 : 『lic lac la lac lilac』23(1) 2006/01/05(木) 19:13:17 ID:???
私を嘲笑う月は高らかにあり、寝静まる寸前の町を遥か天井から観賞していた。月は満月と新月に揺れる奴隷の舞台に興じているかのようにも思える。
隠れる気は既にない。堂々と夜空に舞い、町の細い空を覆うばかりに羽を広げた。
満月とも新月とも呼べぬ欠けた月は、私の腹を空かせる。牙は痒く、喉は生命の紅酒に渇いていた。まだ冷静な脳が理由を探す。
エヴァ「私はこの町から出ようと思う。また流浪の者となるだろう…」
ゼロ「…」
エヴァ「あの魔法使いや坊やには悪いことをしたな…」
ゼロ「…」
エヴァ「私は悪い奴だ」
ゼロ「イインジャネーカ?」
エヴァ「?」
ゼロ「別ニ、悪デモ、イインジャネーカ?」
エヴァ「そうか、悪か…。だとすれば、誰一人として善など誇れぬな…」
ゼロ「ケケケ…」


599 : 『lic lac la lac lilac』23(2) 2006/01/05(木) 19:13:59 ID:???

高貴な町一番の屋敷を眼で捉えると、一直線に屋敷の窓を目掛け飛ぶ。風を切り、黒衣をはためかせ、誰の目にも留まらず屋敷の窓縁に張り付いた。
頬を窓硝子に寄せ、吸血鬼の耳は女の吐息を数える。九人は確かだ。
エヴァ「旅立つ前に、少しは腹を膨らませておこうか」
いとも簡単に窓は破られ、寝具に身を埋めた幼い女を部屋で見付けた。まだ子供だ。これを手に掛ける気はさすがにない。自分の肉体と然程違わぬ娘を見て羨ましく思った。
そんな人の心も束の間、家政婦が部屋の戸を開け、私の姿に声も出せないでいる。私は家政婦に飛び掛り、首元に吸血鬼の接吻を施した。
死なない程度に血を吸うと、私は食べ残しを床に突っ撥ね、勢いに乗せて廊下に飛び出した。
他の家政婦たちが私の姿を目にし、様々な反応を見せる。やはり声も出ぬ者、情けなく地に伏せる者、声を張り上げ助けを乞う者、手を合わせ届かぬ思いを天に捧げる者、皆々が私の餌食となった。
敢えて言おう、私は誰も殺していない。死なない程度の吸血だ。懐に隠れたチャチャゼロが呆れたようにケタケタと笑っていたが、やはり私に殺す気はない。
廊下の騒ぎを聞いて、愚かにも部屋から顔を出した女がいた。女の瞳が私を映したか知らないが、素早く近付き、首に印を残してやった。
貧血で倒れたその女を貴族の娘と判断し、私の食欲は急速に萎んでいった。満足したのだろう。廊下の離れた場所から足音が響く、そこから足音より早く男の臭いが漂ってきた。男に用はない。最も近い部屋に入り、そのまま窓を破って外に出た。
夜の翼は空を包む。今の私に残された仕事は、本の返品と別れの言葉だけだった。


600 : 『lic lac la lac lilac』24(1) 2006/01/05(木) 19:16:13 ID:???
魔法使いとシャントト坊やが住む家の扉は他と違い、どこか近寄り難い風を帯びていた。しかし、やらねばならない。
ゼロ「ケケケ…別レヲ告ゲルノガ嫌カ?」
からかうチャチャゼロを無視し、戸に付いた小さな鐘に触れる。これを鳴らせば、全てが止まることなく終わりに向かうだろう。
いや、違うな。この町に訪れたときから、全てが止まることなく終わりに向っていたのだ、きっと。

私は戸の鐘を鳴らした。


601 : 『lic lac la lac lilac』24(2) 2006/01/05(木) 19:19:05 ID:???
扉の中で物音がする。その物音がぴたりと消えた後、蝶番に支えられた戸が軋みながら開いた。あの魔法使いが顔を覗かせるとばかり想像していたが、顔を見せたのはシャントトだった。
子供「行くんだね?」
やはり、こうなると踏んで本を渡したのか…。口を閉じたまま、私は魔法の本をシャントトに渡した。シャントトは何も語らぬまま本を受け取ると、軽く頷き、私の瞳を覗き込んだ。
子供「わかった。さようなら」
エヴァ「あぁ、お別れだ」
子供「チャチャゼロを大切にね」
エヴァ「…」
子供「最後に、ひとつだけ頼んでもいいかな?」
なんだろう?想像もつかない。数ヶ月、世話になった相手だ。頼まれてやってもいいだろう。私は軽く首を縦に振った。
子供「嫌だろうけど、最後にもう一度だけ、この本を使って欲しいんだ」
エヴァ「誰に使えばいいんだ?」
子供「僕だよ」
エヴァ「…いいだろう。本を貸せ。…"シャントト"」
何千行の文字を目にしたか知れない。他人の醜い心を知り尽くした無邪気な子供の悲鳴を全て、本は暴露した。
子供「…これでお互い様だね」
私から本を受け取り爽やかにそう言うと、シャントトは戸を閉めた。しっかりと閉ざされた戸に、震える声で私は呟いた。
エヴァ「私なんかより自分を大切にしろ、バカが…」
そして、返事のない扉に背を向けた。

ゼロ「ケケケ…頼ミナンカ拒否スレバ良カッタンジャネーカ?」
エヴァ「…」
ゼロ「ソウスリャ、ソンナニ泣カズニ済ンダゼ」
エヴァ「…」
ゼロ「ソレトモ、アノガキト別レタ事ガ辛イノカ?」
エヴァ「…」
ゼロ「シッカリシロヨ」
エヴァ「お前と二人っきりの旅を嘆いてるだけだ」
ゼロ「ケケケ…」

不幸なのは自分だけだと思っていた。それは違った。私は人を不幸にしてしまうばかりか、幸せにしてやることすらできない。もう少し早く、理解してやればよかっただけなのに…。
町を去る今は、自分を囲むこの町の灯りよりも、本能が愛する月の方が、どこか少しだけ自分に近く感じた。
だから、きっとこの町に来たのだ。


602 : 『lic lac la lac lilac』25(1) 2006/01/05(木) 19:21:05 ID:???
眠り子の欠伸も今宵の何度目か、泪粒は枕の代わりに頬を濡らした。挫けた人間の心は、儚くもまだ幾分か温もりを残した胸に居場所を据えている。人間じゃないと認めることが、こんなにも寂しいとは。
空っぽの胸を掻きながら、心臓の鼓動があることを確かめる。まだ、温かい。

チャチャゼロはまた無口な頃のように黙り、一言も交わすことなく私達はこの地を踏み締めた。振り返ると、動かぬ過去の事実としてか、あの町の灯りが見える。あれは人の灯り、私はそこを越えてしまった。
雲が千切れ棚引くそよ風に、囁く木々が耳に優しい。孤独感を紛らわしてくれるようで、目を瞑ると、小河のせせらぎにも思えて。これは過去の泉の音。ウルズの声。
きっと永遠の中の一瞬先にあるだろう遠い未来、天井支える木の根下も恐れぬ自分が瞼を閉じ、葉音に耳を傾けて、今日の日々を杯に汲むだろう。
これは死なない者の小賢しい戯言に過ぎない。しかし、そうなる時が必ず来る。そう信じたい。その日の私は、もっと利口になっているだろうから。


603 : 『lic lac la lac lilac』25(2) 2006/01/05(木) 19:21:47 ID:???
エヴァ「さて、吸血鬼の私には魔法の知識が活きてくる訳だが…」
何の樹か、とても太い幹に身を預け、私は明日について考える。もう焼かれたりするのは御免だ。力が欲しい。誰にも傷付けられぬように、誰も傷付けぬように…。
魔法使いの書斎で荒読みした本の中身が、地下の水脈の如く湧き出てくる。
エヴァ「始動キーを決めなければならなかったな…」
何も思い浮かばない。当然だ。今の私にはチャチャゼロの他、何もない。しかし、過去を思えば、全てがそこにあった。幸、不幸、愛情、軽蔑、生、死…。

それらも所詮は過ぎたこと。人間であった自分はもう返って来ない。何も知らなかった無垢な少女時代を羨んで、遠くを見据え、何度目か数えるも無益な溜め息を吐いた。
ゼロ「何カ、ヤリタイ事トカ、ネェノカヨ?」
エヴァ「やりたい事?」
ゼロ「ソウダ。魔法ヲ使ウ度ニ、毎回トクチニスル言葉ダカラナ」
エヴァ「…」
ゼロ「名誉ヲ求メルナラ"名誉"ヲ、富ヲ求メルナラ"富"ヲ、ソレゾレノ願イヲ、呪文ニ織リ込ムモンジャネェノカ?」
エヴァ「願い…か。できることなら、失った少女時代を取り戻したいところだ。しかし、突然と饒舌になったな」
ゼロ「…」

もし、口遊んだ魔法が願いを叶えてくれるなら、私は少女の頃に戻りたい。そして、初恋に頬を染めよう。恋人が私をただの少女だと分かってくれるように。


604 : 『lic lac la lac lilac』26 2006/01/05(木) 19:24:41 ID:???
結局、ナギとの思い出を探し当てられぬまま、食事の部屋に来てしまった。その理由を"まだ終わっていないことだから"として励ます。我ながら憐れだ。
そして、食卓に着いた私を迎えたのは、やはり孤独な晩餐だった。茶々丸の用意した皿は、簡素な木造りの卓を鮮やかな彩りで飾り立てている。しかし、孤独は全てを灰色にする。
茶々丸「どうぞ、マスター」
エヴァ「…ぅん」
下ろす腰に茶々丸が椅子を滑り込ませる。私が両手を食卓に置いたとき、意図せず深い溜め息が出た。
茶々丸「マスター、やはり具合が?」
エヴァ「体は何ともない。少し、退屈しただけだ。いや、お前の仕事に不満はない。ただ、人恋しく……」
茶々丸の無表情の中に悲しみを覚え、咳で段落を区切る。さぁ、夕食だ。

静寂に掻き疵を作るように、皿とフォークが触れ合う。どこか、この静けさはぎすぎすしている。慣れたはずの居心地の悪さに、やはり苛立つ。
そしてそのまま、私は自分の心の醜い、あるいは、卑しい部分を押し隠し、食事を終えた。


夜は更けるだけで、遂に私の孤独は闌けた。晩餐の後に始めた針仕事の続きも終わってしまった。退屈が再び時を埋め尽していく。
エヴァ「チャチャゼロ、新しい服が出来たぞ」
ゼロ「オ!ヤット、デキタカ!」
エヴァ「"もう"出来た、だ」
その言葉を置き手紙宛ら残して、私は玄関を出た。身に染み入る寒さに体を震わす。やはり冬だ。凍えるとまでは言えないが、やはり冷える。
口煩い保護者のように茶々丸が後を追って来て、私の肩にカーディガンを着せた。
茶々丸「マスター、そのままでは風邪をひきます」
茶々丸の思いやりを軽く無視し、都市の明るさに遠慮している星空を見上げた。

エヴァ「六年前の雪の夜、ぼーやの前に現れたそうじゃないか…」
茶々丸「…マスター?」
エヴァ「雪の夜なら会いに来てくれるのか?」

そうだ、と言うなら今宵を雪の夜にしてやろう。散った天使の羽のように、はらはらと雪を踊らせてやろう。
紫の『初恋』織り込んだ言葉を、ナギ、お前に残した唇で紡ぐ。

エヴァ『lic lac la lac lilac…


<<終わり>>


607 : 605 2006/01/05(木) 19:44:40 ID:???
>『lic lac la lac lilac』
慌てて補足。
紫のライラック(lilac)の花言葉は『初恋』など。


608 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 19:58:31 ID:???
『以上で猛獣の芸を終わります!』

ちう(ザジが手品やるってから来たけどまだかよ…サーカスなんて今更見てもな。)

『次の演目はザジさんによるマジックショーです!皆様盛大な拍手を!!』

ちう「おっ始まった!なかなか大掛かりじゃねーか。」

ザジ「…今から切断マジックをやります。特別にゲストとして入場券の番号が84956の方はステージに上がってきてください。」

ちう「へぇー。こりゃあ楽しそうだな…って84956って私じゃねーかよ!」

・・・・・・・・・
ザジ「…ゲストのちうです!拍手を!」
ちう「ば、バカ!CN出すなって!…で私は何すりゃいいんだ?」
ザジ「ちうはこの箱の中に入ってればいいよ。」
ちう「へぇー意外に単純なんだな。じゃあ手品頑張れよ。」


609 : マロン名無しさん 2006/01/05(木) 19:59:33 ID:???
ザジ「ではこれより人体切断マジックを始めます!種も仕掛けもありません!この箱に入ってるちうをこの鉄板で真っ二つにします!」
ちう(安全って分かっててもなんか不安だな…)
ザジ「じゃあカウントダウンスタートです!」
『3!』『2!』『1!』
ザジ「えい!」
ちう「痛い痛い痛い!!!???ストップ!ストップ!」
ザジ「どうしたの?」
ちう「な、なんでマジックなのに痛いんだよ!!?」
ザジ「種も仕掛けもないからだよ。ちう真っ二つになって?観客が見てるよ?」
ちう「なれるかよ!!?」


ザジ「っていう初夢を見たよ…?」
ちう「絶対正夢にすんなよ!」


という初夢を見た俺ガイル

617 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 22:33:15 ID:???
むか~し、むかし 貧乏神


むか~し、むかし。あるところにとっても働き者がおりました
しかし、いくら働いてもお金はたまりませんでした
なぜならその家には貧乏神様が住んでいたからです


そんなある日、この家にお嫁さんがくることになりました
このお嫁さんは大変な働き者と評判でした
皆、この二人が夫婦になればお金持ちになると思っていました
しかし・・

刹那 「このちゃん・・」
木乃香 「せっちゃん・・」
なんと二人は運命の出会いであったらしく、働くどころか朝っぱらからまぐわって働かなくなりました
お互いに肌を求め、その指と舌が触れ合っていないところが無いくらいのエロっぷりです
そんな様子を見た貧乏神様は心配になって二人にこう言いました
ハルナ 「同人誌のネタに事欠かないのはいいんだけど・・働こうよ」
ですが、二人から帰ってきたのは冷たい視線でした

刹那 「あなたが働いてください。私たちは忙しいんです」
木乃香 「そうや、アンタが同人誌作って売ればいい稼ぎなんや。ウチらのために働きや」
こうして貧乏神様は地下に監禁され、同人誌を作らされることとなりました

ハルナ 「だ、誰か!たすけて~」

こうして二人は同人誌を売り、ラブラブで末永く暮らしましたとさ
めでたしめでたし




621 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 22:53:50 ID:???
むか~し、むかし 一休さん

1/2
むか~し、むかし。あるお寺に一休という者がおりました
この一休はとても頭がよく、いろいろなとんちで皆を助けていました
そんな一休にいつも無理難題をふっかけてくる者がいました
時の将軍様です
いつも意地悪な問題を出してはこう言います
木乃香 「でけへんかったら・・わかっとるやろうな?」
将軍様はいつもいやらしい目で一休さんを見ます。どうやら手篭めにしたいらしいです


ある日のこと、いつものように一休さんは将軍様に呼び出されました
木乃香 「最近この絵からうめき声が聞こえるんや。何とかしてくれへんか?」
将軍様のいる大広間には屏風が一双が置かれていました
その屏風には少女とピエロが絡み合っている絵がかかれています
刹那 「え・・この絵ですか?」
一休は少し恥ずかしがっています。それもそうでしょう、屏風の絵は明らかにピエロが少女を犯っています
木乃香 「夜中になるとうるさいんや。頼んだで」

仕方が無いので一休さんはその大広間に泊まることになりました
いろんな意味で不安で仕方が無いです


622 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 22:55:39 ID:???
2/2
そして時はいよいよ草木も眠る丑三つ時(午前3時過ぎ)
ガタガタと問題の屏風が動き始めました。しばらくして屏風から二人の少女が出てきます
千雨 「きょ、今日もするのか?」
ザジ (コクコク・・)
千雨 「無茶・・するなよ」
ザジ (コクコク・・)
ピエロは少しニヤリとしたように見えました

刹那 「あのう・・」
一休は少し困ったように二人に話しかけました
千雨 「な、なんだ!!」
ザジ (じー)
刹那 「あのう、この夜中になるとあなたたちが騒いでうるさいということなので、何とかならないかと相談を受けたんですが・・」


千雨 「ほらみろ。騒ぎすぎだぞ。すまないな、今度から騒がないように・・」
ザジ (ごにょごにょ・・)
千雨 「え?でもな・・そんなことしたら・・」
ザジ (じー)
千雨 「わかったよ・・すまねえ、アンタ運が悪かったと思ってくれ!!」
二人は一休に襲い掛かります。やがて三つの影は一つとなり、大広間を性の楽園に変えていきました
大広間に響き渡る一休の女の叫びが、闇に吸いこまれていくようです


翌朝、一休があられもない姿で大広間に転がっている姿が発見されました。一休はただ一言こう言います
刹那 「汚れちゃった・・」



627 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 23:11:11 ID:???
むか~し、むかし 雪女


1/4
むか~し、むかし。ある雪深い山奥に雪女が住んでいました
ふもとの村のうわさではその雪女は人間の肝を食べてしまうということでした
ですがそれは間違いです。雪女は特に普通の人間と変わらないのです
ただ寒さに強く、雪が操れるというだけでした


雪女の村には何人かの雪女が居ましたが、やがて一人消え、二人消えて、雪女は最後の一人になってしまいました
仲間はみんな消えてしまいました。何故消えてしまったのかはわかりません。存在が否定されるように粉雪となっていったのです
最後の雪女は一人で暮していたのですが、毎日が寂しくて泣いてばかりいました
そして雪女はその寂しさに耐えられなくなり、山を下りてしまいました
刹那 「だれか・・」


突然、村に現れた雪女を見た村人たちは大騒ぎしました
和美 「き、肝を食べられる~」
裕奈 「こわいよ~」
美砂 「た、助けて!!」
そして皆、家の扉を閉めて家に篭ってしまいました
村人の言葉を聞いた雪女は悲しみます
そして村人の怖がる姿は雪女の心を深く傷つけました


雪女は誰もいなくなった村の道をとぼとぼと歩いていました
硬く閉じられた家の扉からは、光一つ漏れていません
皆、怖くて仕方がないということが伝わってきます
雪女の悲しみは誰もわかってはくれませんでした


628 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 23:12:33 ID:???
2/4
雪女は涙を流しながら村はずれまでやって来ました
すると、村はずれの一軒の家から光が漏れています
雪女は思わずその光の漏れている格子を覗き込みました
中では暖かな囲炉裏の前で、天井からのらんぷの明かりで本を読んでいる少女がいました
とても優しそうな少女です。うらやましそうに雪女はその光景を見つめました


やがてその少女は格子から覗き込んでいる雪女に気がつきました
少女はびくりと体を震わせると、怯えた目で雪女を見つめました
雪女はその少女の瞳を見て、また悲しそうな表情になります
そして格子を覗くのを止めて、その場を立ち去ろうとしました
少女はそんな雪女の様子を見て、かわいそうだな思い声をかけました

のどか 「あ、あの・・あなたはだれですか?」
自分にかけられた声に驚き、思わず雪女は振り返りました
刹那 「わ、わたしは雪女の刹那です。一人で寂しかったのでこの村にきたのですが、みんな怖がって話もしてくれません」
雪女は悲しそうにそう語りました
その雪女の悲壮な姿を見た少女は、家の中に入れることにしました

それからしばらく二人は話をしました
自分のこと、仲間のこと、村のことなどいろいろ二人は話します
そんな二人が仲良くなるのに、それほど時間はかかりませんでした


629 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 23:14:34 ID:???
3/4
こうして月日は進み、雪女は毎日村に現れるようになりました
はじめは怖がっていた村人たちでしたが、仲のよい二人の姿を見てだんだんと雪女に対する恐怖心はなくなっていきました
皆で食事をして、お祭では一緒に踊り、子供たちと一緒に遊びました
こうして雪女は村人たちと仲良くなり楽しい時間を過ごしてゆきました

ですが、村人には一つ気になることがありました
雪女の髪の毛がだんだんと白くなっていくのです
村人たちはそのことを気にしていましたが、雪女の様子が変わらなかったので特に何も言いませんでした


ある日のことです。いつも来るはずの雪女が姿を見せませんでした
村人は不思議に思いましたが、一日ぐらいはそんな日もあるだろうと思っていました
ですが何日過ぎても雪女は来ません
不安になった少女は、山奥の雪女の家を訪ねることにしました
探すのはとても大変でしたが、何とか見つけることができました

雪女の家はぼろぼろでした
わらぶきの屋根には穴があき、壁も崩れ落ちていました
そして家のそばにはいくつかの石が置かれています
その前には、枯れてはいますがお花が添えられていました。どうやらお墓のようです

少女がそっとぼろぼろの家の中に入ると、ひんやりとした空気が家の中にたまっていました
薄暗い中、雪女はわずかな光の差し込む居間の布団の中で眠っていました
真っ白で透き通った髪が、光を受けきらきらと輝いていました


630 : むか~し、むかし 2006/01/05(木) 23:16:40 ID:???
4/4
のどか 「せ、せつなさん!!」
あわてて少女は雪女の寝ている布団に近寄ります
刹那 「の・・どか・・さん・・」
息も絶え絶えの声で雪女は答えました
のどか 「どうしたんですか!!大丈夫ですか!?」
そっと少女は雪女を抱き起こしました。そして少女は驚きます。雪女の体からは重さというものが感じられなかったのです
まるで、さらさらの雪を両手ですくったときのような感じでした
刹那 「私の一族は・・もう消える運命なのかも・・しれません。仲間もこうして・・髪が白くなり・・消えていきました」
のどか 「そ・・んな・・」
雪女の視線が定まりまっていません。おそらくは少女のことは見えてはいないのでしょう
刹那 「あなたに・・逢えて・・みんなに・・逢えて・・」
かすれたような声で
のどか 「ダメ、消えちゃダメです!!!」
瞳からこぼれ落ちた涙が雪女の頬に落ちます
刹那 「うれし・・かった・・」

きらきらと、きらきらと、粉雪が舞いました
きらきらと、きらきらと、雪女は粉雪になっていきました
きらきらと、きらきらと、少女の腕の中で雪女は消えていきました

のどか 「せつなさああん!!!」
少女の叫びはいつまでもいつまでも山にこだましました


ある雪深い山奥に一つの祠があります
中に祭られている御神体には誰かの名前がかかれているようでした
今ではその由来を知るものもいなくなりました

その祠のそばには真っ白なうさぎと茶色の二羽のうさぎがいます。その二羽は楽しそうにその祠のそばで遊んでいました




645 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 02:24:58 ID:???
>>544

古菲「ムムム、負けっぱなしは悔しいアル」
楓 「しかし、桜子殿はかなりの腕前でござる。 残念ながら我々では…」
真名「…不本意だが、助っ人を頼むか」
刹那(たかがドンジャラに、そこまで燃えるほどのことはないのでは…)

桜子 「またドンジャラ? いいよ~♪」
真名 「…今日は他にも人を招いていてな。まあ、親睦を深めようということだ」

茶々丸「お相手します」
桜子 「…ふ~ん、面白くなってきたにゃ」
楓  (流石にこれならば…)

古菲 「これなら負けは無いアルな。 私たちは見学してるアルよ」
刹那 「だと、いいんだが…」
刹那 (3対1の状況をむしろ、楽しむような桜子さんの表情… あの余裕は何処から?)

茶々丸「ラステル(リーチ)」
桜子 「…マギステル(ツモ) 一般人3色」
茶々丸「なっ、私のラステル牌でもあがり… 何故見逃しを?」
桜子 「それだと安いからにゃ~」
茶々丸「しかしセオリーでは…」
桜子 「フフフ、セオリー? それは誰が決めたことなのかな?」
楓  「!?(今、桜子殿の表情が…?)」
真名 「くっ、このままでは済まさん!!」
刹那 (龍宮の指先やや熱いか… これでは…)
古菲 「な、なんだかまずい雲行きアル」


646 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 02:25:29 ID:???
>>645

真名 「くっ、読めない… わが魔眼をもってしても…」
楓  「なにをしても、すべて桜子殿のいいように事が運ぶでござる…」
桜子 「やった~ また勝ち~♪」
茶々丸「…桜子さん、何故セオリーを無視した戦術を?」
桜子 「ククク、勿論勝つため… それ以外の何物でもない…」
楓  (ま、また!?)
刹那 (あの表情!? 普段の桜子さんが決して見せない…)
超  「フフフ、茶々丸には荷が重すぎたかネ」
刹那 「ちゃ、超さん!」
超  「確率よりも心理、特にこういったゲームではネ。 桜子サン私ともお手合わせ願うヨ」
桜子 「あはは、ちゃおりん怖いにゃ~」
超  「私はパートナーにせつなサンを選ぶネ。 桜子サンも誰か連れてきて2対2で勝負ヨ」
刹那 「わ、私!?」
桜子 「わかったにゃ、後日改めて勝負するにゃん」
刹那 (え? 続くの?)  

650 : 歌うたい </b>◆musicLMbXc <b> 2006/01/06(金) 09:46:23 ID:???
『二者択一の命題』
その光景を目の当たりにした瞬間、夕映の脳裏には複数の疑問符が飛んだ。
(この二人が何故、此処に居るのでしょうか――)
夕映の視線の先。休日で人気の無い図書室の一角で、ネギとクラスメイトである明石裕奈が眠っていたのだ。
ネギは兎も角、裕奈はおよそ図書室とは縁の無い人物である。この意外な組み合わせに夕映は
一瞬、思考停止してしまう。だがそれは哲学を信奉する夕映にとって恥ずべき愚行であった。
(ネギ先生の隣が明日菜さんやエヴァンジェリンさん等の魔法関係者であったなら、或いは私達図書館探険部の
者ならば、私もここまで動揺しなかったでしょう。何故裕奈さんなのか。この一点が問題なのです。
休日の図書室に二人きり……。これは怪し過ぎます。この二人は私の預かり知らぬ処で何やら秘密の関係を
持っているのでょうか。そうだとしたら迂闊でした。彼女は完全にノーマークでしたから。――いやしかし、
状況証拠だけで結論を出すのは些か性急です。そもそも彼女がネギ先生に特別な感情を抱いているとは思えません。

この場合は片方を起こし、事情聴取を行なうのが妥当でしょう。後でのどかが合流する予定ですから
状況を黙認する事は出来ません。あの子の事ですから混乱の極みに陥ってしまうでしょう。
そうなるとどちらを起こした方が得策なのでしょうか――)
夕映が高速思考を展開していると、裕奈はむくりと身体を起こした。どうやら目覚めた様子である。
この時点で事情聴取の対象は確定した。
「――裕奈さん」
夕映の呼び掛けに裕奈は暫く焦点の合わない目でこちらを見つめていたが、やがて意識が覚醒したのか、
普段と変わらぬ笑顔を見せた。
「やっほー。図書館組が来るのを待ってたんだ」
この発言で裕奈はシロである、と夕映は判断した。起き抜けに嘘を吐ける人などそういない。


651 : 歌うたい </b>◆musicLMbXc <b> 2006/01/06(金) 09:50:48 ID:???
「私達に用事ですか?」
「あたしじゃなくてネギ君の方だけどね。――ありゃ、ネギ君も寝ちゃってたんだ」
「裕奈さんは付き添いですか?」
「うん。アスナもこのかもいないみたいでさー、ネギ君図書館組を探してたらしくって」
「それで偶然裕奈さんと遭遇したのですね」
「そーゆーコト。そんであたしが図書室で待ってりゃいーじゃん、って提案したんだけどさー、
やっぱりココにいると眠くなっちゃって……」
裕奈が苦笑すると、満足のいく回答を手にして安堵したのか、夕映は微かに表情を綻ばせる。この二人の関係に
深い意味なんて存在しなかったのだ。それでも勘操ってしまったのは、理性よりも感情が働いたのだろう。
ここ最近の夕映を悩ませるモノ。理性では制御し切れない感情――
(この程度で動揺してしまうとは……。今日も猛省するです……)
「――げっ、もう3時じゃん! 部活始まっちゃってるよ~っ!」
己の未熟さに落ち込む夕映に気付かず、裕奈は現時刻を確認すると慌てて飛び出した。
「じゃあ夕映、ネギ君のコトよろしく~!」
そう言って裕奈は猛ダッシュで図書室を後にした。そして、夕映と未だ夢の中にいるネギの二人だけが残される。
(……ネギ先生)
夕映はしばしネギを観察する。その安らかな寝顔は歳相応のものであった。
(――さて、どうしたものでしょうか)
選択肢は二つ。ネギを起こすか起こさないか、である。
起こさない方が無難なのは明白である。何故ならば、のどかがやって来るのが確定事項なのだから。
ネギを起こし、話し込んでしまっては、のどかに目撃された時にあらぬ誤解を招くかも知れない。でも……
「――もったいねえなあ。今が絶好のチャンスじゃねーか」
「――!!」
瞬間、夕映はびくりと硬直してしまう。そして、すぐさま声の主を睨み付けた。
「カモさん、居たのですか……」
「ま、兄貴の行く処、俺っち在りだかんな」
そう言ってオコジョ妖精はしゅたっ、と机に移動する。


652 : 歌うたい </b>◆musicLMbXc <b> 2006/01/06(金) 09:55:15 ID:???
「居たのでしたら最初に状況説明して下さっても……」
「いや~、あの姉さん中々の代物だったから検査に忙し……、いや、げふんげふん」
(全く、アホの極みです……)
うっかり口を滑らせたカモに対し、夕映の視線は真冬の猛吹雪の如く凍て付いていた。
「――まあ、立証が困難なので一先ず不問としましょう。そんな事よりカモさん、ネギ先生の用件とは?」
「なあに大したコトじゃねーよ。授業で使う資料が必要だっただけさ。つーコトで、ここはゆえっちが……」
「もうじきのどかが来ますので、いい機会だと思います」
カモのアドバイスを端折り、夕映はきっぱりと言い放った。しかし、この程度で引き下がるカモではない。
「よくゆーぜ。さっきまで乙女心丸出しでぐらぐら揺れてたクセによお。只でさえのどか嬢ちゃんには
大きく水を開けられてるんだぜ? ここらで一発ポイント稼いどけって!」
早速、カモの猛攻が口火を切る。だが、今回夕映は全く取り乱していない。至って冷静に対応すれば
カモなど所詮は夕映の相手ではない。夕映は瞬時に思考を疾らせた後、対処方法を決めた。
「――ではカモさんはどういったアプローチが有効だとお考えですか?」
「ん? そうだなあ折角の見せ場だが、じきにのどか嬢ちゃんが来る、ってんなら手早く兄貴の要望に答えて
出来る女をアピールする、ってトコが基本じゃね?」
カモの案を夕映は一笑する。
「その程度ですか。私なら図書館島に行けばより高度な内容の書がある、と虚偽の申し出を立てて二人きりの時間を
確保するのが第一だと考えますね」
「おおっ、さすがはゆえっち!」
「ですが、問題はそこからのアプローチです。二人きりになった後に用いる策を用意しないと……」
「ま、イキナリがっつかずにそのままデートに持ち込んじゃえよ。食事に誘うなりよお」
「む、そこまで器用に立ち回れるか不安です……」
「おいおいゆえっちならイケるだろ? 自然に振る舞ってりゃいいんだよ。兄貴の手伝いをしてる間に和やかな
ムード作って、そのまんまの流れで軽~く誘えばいーじゃんか」
「――そうですね」
夕映は表情を緩ませる。だが、その双眸には決意の火が宿っていた。夕映の決意。それは……


653 : 歌うたい </b>◆musicLMbXc <b> 2006/01/06(金) 09:59:12 ID:???
と、その時。とてとて、と聞き慣れたリズムの足音が近付いてきた。
「ベストタイミングですよ、のどか」
がしっ。
「ふぎゃっ!?」
不意を突いてカモを捕獲すると、夕映は何食わぬ顔で親友を迎えた。
「ゆえお待たせ~。……あ、あれっ、ネギせんせー?」
「のどか。これから作戦を伝えます。頑張るのですよ」
ネギの存在にきょとんとするのどかに、夕映は先程までカモと企てていた作戦を授けた。その間、カモは夕映に
口元を押さえ付けられ、発言を封じられている。
(し、しまった俺っちとしたコトが、まんまと一杯食わされちまった……!)
何の事はない。夕映はカモの企みを逆利用したのだ。淡々と語る夕映の表情には最早一切の迷いは無かった。
「では、私は席を外しますので……」
「う、うん……。ありがと、ゆえ……」
親友の粋な計らいにのどかは小さくこぶしを作る。その重たそうな前髪の隙間からは強い意志を秘めた瞳があった。
そんなのどかの様子に、夕映はもう一度声を掛ける。夕映にしては珍しく、にこりと目を細めたままで。
「頑張って下さい、のどか」
夕映は清々しい表情で図書室を後にした。
コツコツ、と心地良い靴音を奏でながら、夕映は感慨深い表情をする。
(のどかには幸せになってほしいものです。私の分まで――)
ほのかな想いを胸に仕舞い、夕映は心の中で呟いた。未練を断ち切るように。


654 : 歌うたい </b>◆musicLMbXc <b> 2006/01/06(金) 10:01:51 ID:???
と、その時。夕映の手の中でカモが暴れだした。
「ああ忘れてました。手荒な真似をして申し訳在りませんです」
言葉とは裏腹に、夕映は涼しい顔でカモの拘束を解いてやる。
「ぷはあっ! やれやれ、結局いつも通りかよ……」
不服そうにしていたカモであったが、やがてその表情をふっ、と緩ませた。
「ま、今日はゆえっちの友情に乾杯だな。――けどよ、後悔してねーか?」
カモの問いに、夕映は淡々と語り出す。
「私はただ、ネギ先生の笑顔をずっと見ていたいのです。それだけで満たされるのですよ。
――ですから先生とのどかが一緒になれば私も傍に居られますから。――でも」
夕映は穏やかな笑顔を見せる。そして、偽りのない素直な気持ちを打ち明けた。

「今日は先生の素敵な寝顔を拝見しましたから、もう充分です――」

(了)


703 : はじめてのにちゃんねる 2006/01/06(金) 18:53:14 ID:???
私、春日美空!
美空の空は空気の空とまで言われるような扱いだけど…
今日こそ2chにその名を刻んでやる!

まほらちゃんねる
1:ちうとザジに萌(ry PART7921(942)
2:いっそのことザジ新田に萌えようぜ?(82)
3:【手本】くー部長のおへそ観察スレッド【見せるアル】(811)
4:村上夏美はストレイボウカワイイ(129)
5:刹那とこのちゃんでエロパロ第十回(384)
6:【乳】最近噂の揉乳女って誰よ。【揉むで】(32)
7:【新作】早乙女ファクトリー総合スレ151【発売】(982)
8:皆さん茶々●を忘れてませんか…?(955)
9:【鬼畜】アンチ新田スレ【変態】(221)


704 : はじめてのにちゃんねる 2006/01/06(金) 18:54:36 ID:???
「よし!今日はアノ有名なスレでSS投下してやる!」

ザジとちうに萌(ry

939:名無し生徒
以上で投下終わります。長編失礼しました。
940:名無し生徒
ちょwwwせっちゃんカワイソスwww
941:茶々●◆EvaWaGEb0KU
だ が そ れ が い い
942:名無し生徒
まさかせっちゃんが…w GJでした!

「私が書いた力作(私が主役の)で知名度を上げてやる!」

950:名無シスター◆M1S0La09
KAgEuSUi31
以上で投下終わります。結構良作だと思いますVv

「っとこれで良し!…でももし感想レス無かったらショックだよなー。確かここID出ない板らしいし自演しちゃうか!」951:名無し生徒
KAgEuSUi31
全米が泣いた。
951:名無し生徒
KAgEuSUi31
GJです!美空萌え!952:茶々●◇EvaWaGEb0KU
KAgEuSUi31
私も美空さんを見習いたいですね。

「こんなものかな?イタズラは慣れてるしね!さぁて、明日が楽しみだ!」


705 : はじめてのにちゃんねる 2006/01/06(金) 18:57:37 ID:???
―――次の日―――

「早速レスをチェックしなきゃっと…」

953:名無し生徒
KAgEuSUi31痛すぎるんだが。
954:名無し生徒
SSに自演感想ワロスwww
955:茶々●◆EvaWaGEb0KU
私の名前を騙るとは…月夜ばかりとは思わないことですね。

「あ、ageてるとID出るんだ…ど、どうしよう…!」

956:茶々●◆EvaWaGEb0KU
あ、後ついでなので。名前欄にfushianasanと入れれば自演し放題ですよ。今までにした自演のIDも自動変更されます。

「ちゃ、茶々丸さんて本当は優しいんだ…!ふしあなさんっと!

……………アレ?

……………IP抜かれたorz」

―完?―


茶々●「クスクスっ」
師匠「どうしたんだ?茶々丸。」
茶々●「いえ、また厨が釣れたものですから。」
師匠「???」

―完―

710 : 書初め 2006/01/06(金) 19:18:40 ID:???
書初め


1/2
ネギです。日本には年始に一年の抱負を書くという書初めという行事があると聞きました
そういうわけなので書初めを書いてもらいます
人選は・・適当です


まず・・亜子さんです
”たゆ・・”
いきなりですか。破廉恥はいけません、破廉恥は

次は・・茶々●さんです
”マスターの下着をゆっくりとずらし、溢れ出る蜜を指先で・・”
茶々丸さんもですか。破廉恥はいけません、破廉恥は

次は・・木乃香さんです
”せっちゃんと結婚する”
・・頑張ってください

次は・・ハルナさんです
”小太郎はゆっくりとつなぎのファスナーをおろすと、ネギに熱い視線を向けこう言った。「やらないか」”
いけません。パクリはいけません。っていうか、何で僕と小太郎君なんですか?


711 : 書初め 2006/01/06(金) 19:19:43 ID:???
2/2
次は・・龍宮さんです
”仔犬てんこ盛り”
食べませんよね?

次は・・超さんです
”世界征服”
やめてください・・

次は・・いいんちょさんです
”愛、二人きりの愛”
素晴らしいです。でも相手は誰なんでしょうか?

最後は・・ザジさんです
”ちう”
何のことでしょうか?ちうって


色々目標あるようですが、今年一年皆さん頑張ってください
応援しています




712 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 19:34:33 ID:???
てんこもりってwwww

717 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 21:51:34 ID:???
>>584
のどか「あ……ぁ、アデ、アデアット……」
喉の奥から絞り出すようにして、やっとの事でアーティファクトを手元に出現させた。
何かやらなければ。
期待に答えなければ。
幼い頃から培ってきた向上心。誉められるために、叱られないために行ってきた努力。
自分は今、守られている。これだけの人達に。だから、期待に答えなければ。
一枚ずつゆっくりとページを捲る指は、これ以上ない程に震えていた。もう少しで、あの恐ろしい場所に辿り着く。
私の運命を変えてしまった、悪魔のページ。
バクバクと肋骨を打ち付ける心臓の鼓動にさえ、拷問を受けているような痛みを感じた。
刻みつけられてしまった、あのページ。今まで散々悪用してきた、どのページよりも恐ろしい。
いたずらに人の心を読み、木乃香に伝える。その人間が一番恐れている事を平気で実行してきた。
この運命はきっと、私への罰なのだ。目を覆いたくなるような愚かしい行為。私は今まで、完全な悪人だった。

次だ。この次のページ。鼓動が高鳴り、捲る途中のページと同じように、奥歯ががたがたと震える。
恐る恐る瞼を開け、ページを広げた。



718 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 21:59:35 ID:???
>>717
しかし、そこに書かれていたのは、楓の心の中だった。『いつか必ず復讐してやるでござる』、そう書いてある。
あぁ、そうだ。楓が私達に逆らえないようにするアイデアを出したのは、私だ。何て事を。
なら、次のページだ。
しかし、そこもまた例のページではなかった。古菲の寂しさが切々と綴られている。『一人は嫌アル』
心臓が締め付けられる。最早その本に書かれている内容の半数以上が、全て私に向けられた言葉だった。
『あんな事考えてたなんて』
『私だけは見逃して』
『助けて、お願い』
『ごめんなさいごめんなさい』
『ウチならどうなってもええから……まき絵だけは』
『ごめんね、亜子』
『いつまでこんな事、続けるの?』
『私の番が終われば』
私が表層を剥ぎ、無理矢理むき出しにさせた本心。知ってはいけない、人の本音。
出し切ったと思った涙が、再び頬を伝い、地に滴り落ちた。胸を突き破ってしまいそうな鼓動と、
割れそうな程の頭痛に叫び声を上げ、頭を抱えて地面に縮こまった。

私にはできない……。
これ以上、人の本心を覗きたくない。人間の中身を見たくない。
この期に及んで、何と都合のいい言い訳だろうか。自分でもそう思う。だけど……。

あぁ……
みんな、私を守ってくれているのに……。
また私は、人を裏切ってしまう……。
いっそ、もう一度私が標的になれば。
私が虐められれば、どんなに楽だろうか。


719 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 22:42:20 ID:???
>>718
茶々丸の正確な計測により、完璧な正八角形が出来つつある。しかしそれと同時に、
相手にもこの陣の性格が知れる事になる。残り2枚を張る作業が急がれた。

楓「あれは……」
最初は、壁を利用した、ただのトラップかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
試しに符のある場所にクナイを放ってみると、符の周りに施された障壁に弾かれてしまった。普通のトラップには
ここまで防御策はしない。では、あの符は一体何か。
思い当たる八角形の陣を高速で頭に浮かべる。移動陣2種、破戒陣4種、捕縛陣3種。そして、
茶々丸の背に張られていた符。そこから絞り出せる答えは一つしかない。
楓は瞬動で符に近づき、結界破戒で符の周りの障壁を砕いた。急いで符を切断しなければ。
そう思った瞬間、視界一杯が炎に包まれる。焼かれた上着を脱ぎ捨て、ぎりぎりで変わり身に助けられた。
何が起こったかと前方を向き直ると、焼き切れた二枚の符が地面に落ちていた。
楓「なっ……!三枚重ねでござるか……」
捕縛符の上に更に張り付けたトラップ用炎術攻撃符と、障壁符。無印であるがために見抜く事は困難だった。
千草「茶々丸はん!破られた符、守ってや!!」
残り一枚。茶々丸が楓の元へ向かい、丸裸になった符の前に立ち塞がった。
このままここにいては危険だと判断し、フィールドの外に逃げようとした楓を、茶々丸のワイヤーが捕獲する。
結界破戒を使う事ができるのは、楓と龍宮、そして刹那。
装束に身を包んだ刹那が、その三人のみに的を絞り、茶々丸と並んで符の前に立ち塞がった。
龍宮が向きを変え、別の方向にある符に向かって走り出す。
時間がない。
丸裸になった符に新たに障壁符を張り、刹那が龍宮の後を追った。
刹那「させるか……」
一気に龍宮の正面まで飛び、斬撃で龍宮の動きを止める。
龍宮「クソッ!葉加瀬!!メガネの女を撃て!!」
その怒号を聞いた葉加瀬が慌てて照準を千草に合わせる。千草の手には最後の符。
強烈な赤い光が、雲に覆われて暗くなった広場を一瞬で明るくした。


724 : マロン名無しさん 2006/01/06(金) 23:58:44 ID:???
ザジ「ハァ・・・」
ちう「どうしたんだよ、カレンダー見てはため息ばっかつきやがって」
ザジ「冬休みがもう終わる・・・(´・ω・`)」

ちう「はっはっはw
なんだ、そんなことかよw」
ザジ「だって・・・ちうと二人っきりになれる時間が減っちゃうんだよ!?」
ちう「・・・お前、それ夏休みの終わりごろにも言ってたろ」
ザジ「Σ(゚∀゚*)」
ちう「けど、2学期はつまらなかったか?
相変わらず私にベッタリしてなかったか?
つまり、そういうことだ」
ザジ「いつもいつでも、ちうと一緒に居られる・・・」
ちう「そういうことだ。
学校が始まったら始まったで、また楽しく過ごしていけるって」
ザジ「けど・・・やっぱり不安だお・・・(´・ω・`)」
ちう「・・・そうだなぁ・・・
じゃぁ、おまじないを教えてやるよ。
3学期からの生活が、不安どころかとびっきり楽しくなるようなおまじないをな」
ザジ「((o(´∀`)o))ワクワク」

-3学期初日-
まき絵「おはよ!元気にしてたかい!?諸君!」
和泉「おー、おはよーさん。学期明けからテンション高くてよろしなー」

ガラガラッ
ザジ「みんなぁーっ!オーッハローッ!ヽ(≧▽≦*)ノ」
一同「!?(ざわざわ・・・)」
ちう「(ザジのバカ・・・)///」

実に幸せそうな笑みを振りまく色黒の少女と
照れているのか、うつむき加減になっている少女が
おそろいのメガネをかけて、手をつないで教室に入ってきましたとさ。

727 : マロン名無しさん 2006/01/07(土) 00:37:19 ID:???
ゼロ    「マア飲メヤ」
カモ    「おとと… うめぇ、いいワインだなこりゃ」
ゼロ    「アルベールノ日本酒モナカナカイケルナ」
カモ    「秘蔵っ子だからよ」
ゼロ    「コノわいんモ御主人ノこれくしょんダカラナ」
カモ    「ぶっ、大丈夫なのかよ!?」
ゼロ    「気ヅキャシネーヨ。 …シカシアレハナントカナランノカヨ?」
ちびせつな「うははは、もっとおしゃけを持ってくるです~ コラッ、カモおしゃけを注ぐです~」
カモ    「…刹那の姐さんも、酔うとあーなんのかな…」

730 : GTN 2006/01/07(土) 01:06:21 ID:???
GTN~Great Teacher Nitta~ 伝説の教師

新田「お前たち! 席につけぇ!」 3ーAに一人の偉大な教師の怒声が響き渡った
アスナ「なんで新田がいんのよ…」
新田「このクラスの担任はこの私、新田に変更になった! というわけで皆夜露死苦ぅ!!」
その他一同「なにーー!?」 クラス全員が即座に反応した こういうときだけ団結するである
桜子「ネギくんは? ネギくんはどうしたの?」
新田「労働基準法違反で学園長がつくまり、ネギ先生は故郷に強制送還されました」
その他全員「………」 全員が心の中で納得した

続く(かも)


732 : GTN 2006/01/07(土) 01:42:25 ID:???
早朝、アスナは新聞配達をしていた 彼女は親がいないのでアルバイトをしているのだ
アスナ「次の家で終わりか…」 何年もやっているので道も完全に把握している
ぽすっ ポストに新聞をいれた 彼女の今日の仕事は終わったのだ
アスナ「帰って寝よーっと あと2時間は寝れるな…」
そうしてアスナが寮に帰ろうとしているそのとき、
新田「神楽坂… 性が…いや精がでるな」
アスナ「げ……」
二人は公園に移動した ベンチに並んで座っている
アスナ「先生は何してたんですか?」 アスナの質問に新田は改まった顔をして答える
新田「ちょっと尻を触ってみろ」 アスナはそう言われて自分の尻に手をあてる
すぐに違和感に気づいた ズボンが破れて中のパンツと生尻が丸見え状態だったのだ
新田「そのことを君に伝えようと思ってね 寮から出てくる時気付いたんだ」
するとアスナは小声で何か唱え、それと同時にハリセンが出現した
アスナ「早く言えよ変態!!」
バキィィィィィ!!!

薄れゆく意識の中で新田は思った
(なんてことだ 朝から女の子の青い尻を拝見し
思いっきりハリセンで殴られ、おまけに変態と罵られる始末





最高だ 最高のプレイだ)
やはり新田はどこでも変態だった




738 : GTN 2006/01/07(土) 11:00:25 ID:???
新田「お前たちぃ! 今から風紀指導をする」
その他一同「ええ~~?」 生徒たちは突然のイベントに大ブーイングである
新田「やかましい! もし風紀を乱すような者がいれば放課後このわしが直々に調きょ…指導してくれるわ!」
新田は興奮していた なぜなら普段生意気な生徒たちを痛めつけることのできる大義名分
を得たからである
新田「まずは神楽坂 髪を染めるとは何事だ!」 アスナ「あたしだけ!?」
新田「鳴滝姉妹とマクダエル! ロリ度を下げろ」 鳴滝姉妹・エヴァ「ロリ度!?」
新田「那波!胸がでかすぎる 下着ももっと地味なのに変えろ!」 那波「なんで知ってるんですか!」
新田「宮崎!……かわいいぞ」 のどか「おえぇえ!!」
新田「四葉!…痩せろ」 さつき「('A`)ヒドイ」
新田「おらあ 神楽坂! 性格なおせ」 アスナ「なんで2回もあたしに言うのよ! しかもひどいし」
そんな調子で時は過ぎていった
新田「え~ これで全員の風紀指導は終わりました もう最悪ですね
クラス全員放課後指導室逝きですね 全く…」
その他大勢「死ね! 変態教師」
ボクシャーー
新田はリンチにあいました しかし彼は満足そうです



美空「私、忘れられてる…」




742 : マロン名無しさん 2006/01/07(土) 19:02:40 ID:???
休み時間
「よっ、美空」
教会の雪かきで疲れ、うつらうつらしていた美空は突然声を掛けられ跳ね起きる
「うわわ!って、なんだみさきちか…」
相手は美砂、あまり話さない相手に美空はポカンとする
「みさきちって言うな、暇そうねー」
「まーね、美砂こそ円と桜子は?」
「円は部活の仕事、桜子は食券の賭け」
暇つぶしの相手かと思った美空はふてくされる、そこに美砂が耳打ちする
「うちのクラスってさ、あれなカップル多いよね」
「は?、ああ…そうだね」
目の前では木乃香が刹那にベタベタしている
「あとはザジさんと長谷川かな」
美砂はカップルを並べて行く、美空は呆れていたが相手する
「美砂…ここだけの話近衛さんと刹那さんは近々修羅場になりそうだよ」
「え、なんで?」
「ほら」
美空が目配せする方向には真名が嫉妬の眼差し、さらにはのどかもじっと見ている
「うわ…」
「泥沼ってやつ」
「流石はクラス一番の空気、よく見てるー」
( ‘д‘)ゴラァ
⊂彡☆))`Д)←美砂


753 : むか~し、むかし 2006/01/07(土) 23:39:44 ID:???
むか~し、むかし 一休さん2


むか~し、むかし。あるお寺に一休という者がおりました
ある日のこと、和尚様が出かけようとしたときのことでした
真名 「刹那、お堂にある壺の蜜を舐めてはいけないぞ。あれは毒だからな」
和尚様は一休にそう言いつけると、どこかへ出かけてしまいました

和尚様が出かけた後、一休はお堂に行きます
刹那 「これがその蜜か・・蜂蜜かな?」
なんということでしょうか!!
一休は和尚様の言いつけを守らずに毒の蜜を舐めてしまったのです
刹那 「うん。蜂蜜だな、それも上等の・・」
その蜜の味をしめてしまった一休はしばらくその蜜を舐めていました
すると・・
刹那 「うっ!」
しばらくその蜜を舐めていた一休でしたが、そのうちに体が痺れてきました
刹那 「こ・・これは・・いったい・・」


夜、和尚様はお寺に帰ってきて一休がいないのに気が付きました
真名 「愚かな・・」
和尚様はお堂へ行くと思ったとおり、一休が倒れていました
真名 「言いつけを守らんからだ・・それは毒と言っただろう。言いつけを守らなかった罰を与えないとな」
和尚様は袈裟を脱ぐと、ゆっくりと一休に覆い被さりました
このとき一休に与えられた罰は、それはそれは淫らなものであったといわれています


翌朝、一休があられもない姿でお堂に転がっている姿が発見されました。一休はただ一言こう言います
刹那 「汚れちゃった・・」



761 : GTN 2006/01/08(日) 00:19:40 ID:???
<私は死ぬ> 龍宮真名はそう確信していた
それは丁度10分ほど前のことだった 部活を終えて寮に帰る途中、
4匹の魔物が襲いかかってきたのである
彼女はすぐさま人気のない所に魔物を誘導した
一般人を巻き込むわけにはいかないからである
しかし今考えればそんな冷静な行動がとれたのは敵を過小評価していたからかもしれない
魔物を誘導したのはいいものの、自分の銃を破壊されてしまった
そして今に至るのだ あきらめるなど自分らしくないとは思ってはいるがこの状況ではどうしようもない
真名「みんな…」 龍宮は目をつぶった
ズキュン!
しかし何やら銃声のような音がしたので彼女は目を開けた
真名「な…にぃ!」 龍宮を囲んでいた魔物が倒れているのである
新田「こんな雑魚共に手こずってんじゃないよ」 龍宮の背後には新田が立っていた
真名「新田だと? 貴様…何故」 新田「はっ 自分の生徒を助けるのが私の役目だ」
龍宮は新田に抱きつく 本当は怖かったのだ
真名「しかし一体どうやって…」 すると新田は龍宮の手に何か棒状のモノを持たせた
新田「なあに 私の44マグナム(完全態)が火をふいただけさ」





次の日、学園の広場で傷だらけの全裸の男が発見されました



777 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 11:38:11 ID:???
そういや
美空←→円の関係もあったなぁ。しかしラブは…どうだろう
美空とさよって繋がりありそうじゃないか?


778 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 11:45:57 ID:???
美空×ココネ


779 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 11:58:08 ID:???
ココネを喋らせるのか


780 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 12:18:11 ID:???
ココネ「………ザジお姉ちゃん…」


781 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 12:47:35 ID:???
ココネ「真名お母さん……」

784 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 13:23:09 ID:???
ココネ「古菲父さん…!」

787 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 14:45:15 ID:???
ココネ「シャークティお祖母ちゃん…」
ボグシャー
美空「何で私を殴るんですか!」
シャークティ「お黙りなさい!」


788 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 14:47:55 ID:???
>>787
理不尽ワロスwww


789 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 16:54:07 ID:???
ココネ「おい茶々丸」
茶々●「(#^ω^)ビキビキ」


790 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 17:05:26 ID:???
なんかココネが茶々●に並ぶ黒いキャラになりつつあるんだが。


791 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 17:10:40 ID:???
まぁ肌は黒いな。


793 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 17:35:42 ID:???
茶々●やココネがいくら黒かろうと、千鶴姉にはかなうまい。


795 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 17:48:26 ID:???
千鶴「さてと。今日は2本ネギ必要のようね。うふふふ」


796 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 18:01:53 ID:???
>>719
上半身がサラシのみになった楓の体は、刹那の斬撃と茶々丸のワイヤーによって、糸状の赤い生傷がその
肌をびっしりと埋め尽くしていた。
このかに約束を果たしてもらうため、この闘いにだけは勝利しなければならない。刹那のように、言いなりに
なってはならない。龍宮のように、プライドを捨ててはならない。自分はただ、救うために従う。あの悪魔に。
そして、いつか必ず復讐を果たす。果たさなければならない。

しかし、その思いが今、無惨にも尽きようとしている。
葉加瀬の手元を狂わせたのは、茶々丸の放った一対のミサイルだった。人体に大きな被害が出ないために
威力を抑えてあるので、機体に大きな傷は付けられなかったが、弾道をほんの少しずらすには十分な威力だった。
楓を縛っていたワイヤーを解き、八角形の中心で千草と合流した茶々丸が、千草を肩に乗せて垂直に飛んで行く。
龍宮の放った銃弾は、間に入った刹那が全て切り落としていた。向かってきたもう一人の刹那は斬岩剣で牽制して
いる。技の隙は大きかったが、相手の焦りを視野に入れた攻撃手段としては、的を射ていた。
一定箇所まで飛んだ千草が、最後の符を持って始まりのかけ声を叫ぶと、茶々丸から飛び降りて降下を開始
した。心なしか、楓には、千草の顔が少し嬉しそうな表情に見えた。彼女は今、自分の心の焦りとは正反対の
場所にいる。あの女には、守るべき者がいないのか。そんなふざけた顔で、自分の、叶えなければならない望みを
うち砕こうというのか。




797 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 18:02:28 ID:???
>>796
しかし、そんな憎しみに反して、上空の千草を見上げていると、何故だか少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。
闘いのさなかにおける、冷静さ。冷静さを欠いた者は、全ての道を踏み誤る。そういえば、そんなような言葉を
いつか聞いた気がする。
印を結んだ千草の持つ最後の符に、光りが集まり始めた。広場の壁と地面に張り付けた八箇所の符が、それに
反応するように、共鳴し出した。
千草「行きますえ!京都名物、捕縛型巨大八陣!修羅・弁天・幕の内!!」
突き出した手の先の符から、鉛筆状に光の筋が発射される。
千草「はんなりしっとり、捕まりぃや!!」
光の筋が檻となり、広場上の全員を閉じ込めた。その中から、装束下の直肌に符を張り付けている刹那と、先程
千草に張り付けられた茶々丸、そして防護陣に守られている柿崎達4人を除き、このかを含む全員が捕縛され、
身体の自由を奪われた。


798 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 18:05:19 ID:???
ここまで。




>>793
しかし茶々丸にはネギを挿す場所がなかった


という哀しいお話plz(嘘


799 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 18:17:48 ID:???
>>798
「あらあら、こんなところに丁度いい挿入口があるじゃない」
「千鶴さん違います、そこはゼンマイの差し込みグちwせdrftgyふじこl!」

(ピー、エラー発生。緊急停止します)


800 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 18:18:10 ID:???
新田「やぁ!」
ココネ「…パパ」


809 : はじめてのにちゃんねる番外編 2006/01/08(日) 20:03:28 ID:???
私、春日美空!
普段は空気扱いなのにIP抜かれて別の意味で目立った可哀想な中学生!
今日こそ2chで空気という汚名を返上してや………え??


1:【ついに】ザジちうPART10000【五桁!!】(83)
2:茶々丸はぱんつはいてない(124)
3:PARをパルと読んでしまった人(+8000)(801)
4:レス番801ハンターパル対策本部9(721)
『5:【自演】アンチ美空スレ【空気】(4)』

「ついにアンチスレが立つ程有名に!アハハハ嬉しいなー」


ココネ「可哀想な人…」

―完―


810 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 20:27:20 ID:???
美空「………私もみんなの輪に入りたいなぁ…いや! 行動あるのみよ 自分から仲間に入らなきゃ!」
アスナ・木乃香・刹那・エヴァ「ワイワイ」
美空「よし! 行くのよ 美空!」
エヴァ「それで茶々丸が爆発したんだよ」
アスナ「あははは! 何よそれ」
美空「ねぇ 何の話して…」
刹那「あぁっ! しまった」
木乃香「どうしたん せっちゃん 何かあったん?」
刹那「そういえば3時から部活だったんですよ もういかなきゃ」
木乃香「そか… じゃあ頑張ってな いってらしゃい」
エヴァ・アスナ「いってらしゃーい」
木乃香「せっちゃんいってしもうたし、アタシらどうする?」
美空「だっ…だったら今からみんなでカラオケいか…」
アスナ「そういえばなんかさっきから臭くない?」
エヴァ「そういえば臭うな これは屁というよりもワキガっぽい感じの臭さだが」
アスナ「誰かしら ほんと臭いわね」
木乃香「でもここにはあたしら3人しかおらんし
さっきから30分くらい一緒におるから違うやろ?」
アスナ「それもそうね ここには今3人しかいないし きっと気のせいよ」
エヴァ「じゃあ、帰るか 3人で」
木乃香「帰ろ 帰ろ 3人で」





美空「………」


812 : マロン名無しさん 2006/01/08(日) 20:36:58 ID:???
Smells Like Nirvana

私は悟った……!
この世界に私の居るべき場所はない……!
ならばせめて……せめて私は私だけの世界をッ!
極楽!聖域!フォビドゥン・ゾーン!サンクチュアリ!ニルヴァーナ!
今こそ私の…私自身の完璧な世界を造り上げるッ!
君達には触れる事さえ適わぬ「世界」だ!
さぁ……「世界」の少女達よ……私を導いてくれ……



千雨 「言いたい事はそれだけか?」
龍宮 「女子専用浴場に全裸で侵入……」
刹那 「ビデオカメラを回し……」
明日菜 「腰を振って双子に威嚇を……」
新田 「フ……フ……」

4人 「「「「ボラーレ・ヴィーアッ!(飛んで行きな)」」」」

新田 「フォーーーーーーーーー!!!!!!!」



年が明けても相変わらずの新田であった


817 : 流れ断ち切ってスマソ 2006/01/08(日) 23:08:16 ID:???
円「あのさぁ、私思ったんだけど」
美砂「なになに?」
円「実は長谷川って、ネットアイドルのちうさんなんじゃないの?」
千雨「なっ…!(コイツ、いきなり何を言い出すんだ!?)」
美砂「あ、確かに似てる!」
桜子「うんうん、「千雨」の読み方を変えると「ちう」になるし!」
円「それが関係あるかはわからないけど、髪質とかスタイルとか似てない?」
桜子「そーそー、背も同じくらいだしね」
千雨「な、何言ってんだ!私がそんなことするわけ…(まずい!何て言い返せばいいんだ…考えろ、千雨!)」
美砂「そうかなー、そっくりだと思うんだけど」
千雨「似てない似てない似てない!私はちうなんて奴は知らねーよ!!」
桜子「じゃあ証明してよー」
千雨「証明って…何すりゃいいんだよ」
円「そうね…身ぐるみ剥がして徹底調査とか」
千雨「は!?何言って…(いや待てよ、サイトで公開してるちうの3サイズと違うことが分かれば疑いは晴れるはず…)……分かったよ、気のすむまでやってくれ」
桜子「ホント!?じゃあさっそく。いただきまーす」

がばっ

千雨「は!?何飛び掛かってんだ…ってかそこはマジでシャレに(ry」


その後、千雨の疑いは晴れましたが、代わりに何か大切なものを無くしたそうです。




完璧に自己満足で書きました。反省はする予定です


819 : 温泉 2006/01/09(月) 00:34:57 ID:???
温泉


ひらりと一片の雪が、私たちの入っている温泉の水面に落ちた
空を見ればほとんど雲は無いのだが、一体この雪はどこから落ちてきたのであろうか
暖かい湯気はすぐに冷たい大気になじみ、風が吹けば水面を舐めるように走って消えていった
ちゃぷり、と手を湯の中から出せばそこにはオーラのように湯気がまとわりついて面白い


刹那 「心地よいな・・」
仕事のパートナー、共同生活をする友人、そして・・私が密かに思いを寄せる唯一の人だ
真名 「湯の温かさと、外気の寒さがなかなかに心地よいな・・」
少し白みがかった湯は少しばかり硫黄の匂いがした
ふと視線を落とすと胸より下は、白濁して見ることはできない
当然、刹那もそうだ。私の刹那の裸を見てみたいという目論見は簡単に崩れ去る。残念だ

刹那 「相変わらず・・」
気が付けば刹那が私のことをじっと見つめていた
真名 「何だ?」
刹那 「胸が大きい」
ふふ・・これは自慢以外の何者でもないが、胸が大きいことが私の自慢だ
身長が大きいのはご愛嬌ということで

真名 「触ってみるか?」
すこし、ためらいの時間があったあと、刹那は私の申し出を断った
刹那 「和泉さんではないんだ。癖になっても困る」
お前になら・・揉まれてもいいのだが・・というか、揉まれたら揉み返してやろうと思っていたのだがな
思いっきり抱きしめて、私の胸でお前の胸をもんでやろうと思っていたのだがな
その後はキスして・・岩の上に押し倒して・・のぼせるまで可愛がってやろうと・・
いけない・・鼻血が出てきた



823 : 帰り道1『照れた灯り』(1) 2006/01/09(月) 01:01:27 ID:???
『ここは、青が支配している。』

プールで泳いでいるとき、私はこう思う。
波紋が白で砂丘を描き。空気のガラス玉は、散って、溺れて、息継ぎに急ぐ。私は全身で青を掴み、さらに青と混ざっていく…。今の自分は、しっかり水に成れてる。
どこまでも広がる青の中。音は曇っていて、お母さんのお腹の中にいるみたい。あ…、息が足りない…。
「はーい、もうおしまい!大河内、頑張りたいのは分かるけど、根詰め過ぎるのは体に毒よ」
「あ…コーチ…」
水面から顔を出すと、プールサイドに立った男勝りなコーチの優しく強い声が響いた。
「はい、コーチ。もう、あがります」
疲れて筋力の緩まった両腕を支えにしてプールサイドに上がり、軽く頭を振って、湿った鼓膜を掌で乱暴に刺激する。
そのまま右手の怠さに委せて水泳帽を払うように脱ぐと、今まで押さえつけられていた髪が、濡れて束になったままばらけた。

「あ、大河内…」
コーチの声がプール全体に広がる。大人しく揺れるプールの水面が微かな波音を立てている。
「はい…」
「外で友達がアンタのこと待ってるみたいだったよ。今夜は冷えるから、早く行ってあげなさいね」
「はい」
友達?…誰だろう…
髪を結んだゴムを解きながら、熱った頬を手の甲で撫でる。私の手、冷たいな…。
私が更衣室に入ったと同時に、プールの照明が落とされた。


824 : 帰り道1『照れた灯り』(2) 2006/01/09(月) 01:03:32 ID:???
シャワーを浴びてから屋内プールの出口まで来ると、もう夕方を過ぎていた。遅すぎる放課後にオレンジ色の灯りが並ぶ。手前から二番目の街灯が弱々しく点滅を繰り返していた。寒いな…。
街の灯りに照らされて、誰かの影がアスファルトを移る。頬がオレンジに栄えて、その顔がおぼろに覗き出た。あの娘は…いつも気弱なイメージのある後輩の…。
「大河内先輩!」
「どうしたの?…」
「あの、先輩、こっ、これ!」
その娘は両手でマフラーを差し出す。でも、その立ち位置、渡すには少し遠すぎない?
「あ…ありがとう」
受け取らないわけにもいかない。それに、もう慣れてしまった。
「しっ、失礼します!」
そして後輩の後ろ姿は街灯の列をくぐって、すぐに影と見分けがつかなくなった。ところで、背中に視線を感じる…誰かはわかってるんだけど…。
「本当にモテモテだね~、うらやましいにゃ~」
「ゆーな、見てたの?…」
「ここでアキラ待ってたら、あのコも手に何か持ってアキラ待ってるみたいだったからさ。これでも気を利かせたつもりなんだけどな?」
悪戯好きな仔猫のように、上目使いで甘えながら見つめてきた。ううん…返事はひとつしかない。
「別に怒ってないよ…」
「うん、知ってる(キッパリ)。それにしても、今シーズンはマフラーいくつ?私の計算だと大体3か4なんだけど」
「5だよ…」
「5!?最高記録樹立してない?」
「うん…」
急に沸いた話題は冷めるのも早く、時刻に似合った沈黙が一時的に流れた。
「そっか。じゃあ、帰る?」
「うん…」
あれ?何で裕奈は私を待ってたんだろう?
「あ、ゆーな」
「ん、何?」
「何で待っててくれたの?」
「ぇ、え~と、なんとなく…かな」
"なんとなく"か、裕奈らしいよ。
「本当に、"なんとなく"?」
「そ!…あ、そういえば前から訊きたかったんだけど、水泳してるのにアキラの黒髪がキレイなのなんで?」
「………ヒミツ…ふふっ」
裕奈の活発な顔を見てたら、なんだかイジワルしてみたくなっちゃった。それは裕奈もわかってたみたいで、作った膨れっ面はいつもの笑顔にすぐ移り変わった。


825 : 新田 2006/01/09(月) 01:05:47 ID:???
>>821
わたしが吸いとってあげよう


826 : 帰り道1『照れた灯り』(3) 2006/01/09(月) 01:06:09 ID:???
それにしても寒いなぁ…、息の白さがしばらく残る。
「寒いんだから、もらったマフラー使えばいいんじゃないの?」
ゆーな、それは鋭い意見だね。
「ぅ…ん」
「使わないの?」
答えづらい質問だって、わかってて訊いてる?イジワル……あ、さっきのお返しのつもりか。
「使わないんだ…。だったら………、それっ!」
背丈に合わせて軽くジャンプした裕奈は、私にマフラーを巻き付けた。強引に巻き付けたものだから当然かもしれないけど、マフラーは口まで塞ぐ。
「ふむぅ!」
「バスケ部のジャンプ力を甘く見てもらっちゃ困るよw」
「ぶはぁ…!」
思わず息継ぎ。マフラーに溺れたのは初めて。マフラーを脱ぎながら、裕奈を睨みつける。してやったりとばかりに裕奈は笑ってる……ん?…あれ?このマフラー、私のじゃない?
「それ、アキラにあげる」
え?
「記録更新だね。6つ目のマフラーだよ」
微笑む裕奈、戸惑う私。だって、このマフラー、手編み?
「ゆーな、これ…」
「大事に使ってよ~、手編みで愛情が篭ってるんだからさ」
「ゆーな……ありがとう」
「へへっ、"ついで"だよ、"ついで"!お父さんのマフラー編んでたら、毛糸が余っちゃってさ~」
はにかみながら照れ隠しに外方を向いて話す裕奈の後ろ姿は、いつも目にしてた友達の背中と少し違って見えた。見えない顔を想像しながら尋ねる。照れ隠しに。
「どうしたら、こんなに毛糸が余るのかな…?」
「クックック……ヒミツ!」
小学校以来かな、久しぶりに私達は手を繋いで帰った。普段でも話の多い裕奈が、今夜はより一層賑やかだった。でも、私があまり喋らない方だから、丁度良いのかもしれない。
延々と寮まで続く道の途中、何故か点滅する街灯を思い出し、立ち止まって振り返った。
「アキラ?…どうかした?」
室内プールのある建物まで、全ての灯は消えることなく光っていた。
「ううん、何でもない…」
前に向き直って、私はまた裕奈と一緒に歩き出した。


836 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 10:42:08 ID:???
美空「新田先生……なんてオイシイ役!」


837 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 11:05:31 ID:???
「うー、寒い・・・」
美空は余りの寒さに早く目が覚め眠れなかった、仕方なくココアを啜りながら窓の外を見る
一面雪景色、道路も埋まっている
「こりゃ大変だなあ・・・朝から雪かきだな。はぁ・・・」
大雪は麻帆良も例外ではなく、美空もココネと毎日教会周りの雪かきでうんざりしていた
ただひとつラッキーなのは、道路がなぜか歩ける程度に除雪されていることである
除雪車が来るまでの間歩行者にそれは重宝されていた
「道路はまだかぁ、うん?」
ドドドドドドドドドドドド!!!
轟音と共に雪煙が向かってくる、その先頭にいるのは・・・
「うおらっしゃああああああ!」
新聞を抱えた少女、明日菜だった
美空は暫しその勢いに呆然となる、明日菜は道路の雪を吹き飛ばしながら新聞を正確に投げ込んでいく
「あ、明日菜だったのかあ・・・まさに人間除雪機」
明日菜の通った跡は例の道路の道が出来ていた
いつも美空と体育の短距離で争う明日菜、まさかこれほどの健脚とは美空もびっくりだ
「これじゃ次負けちゃうなー、せっかく控えめにしてる私が目立つ機会なのに」
美空はココアを飲みため息。
「あ、そうだ!くひひ」
美空はおもむろに携帯を取り出して誰かに電話する。
そして数日後
「ちょっと朝倉、なにあの記事!」
「おっ人間除雪機あすなっち、いい事してんだからいいじゃん」
言い争う明日菜と朝倉
そう、明日菜の走る姿がまほら新聞のトップを飾ったのだ
「で、誰から聞いたのよ?。情報はクラスの人って書いてあったけど」
「はいはい、えーと・・・あれ?」
「どうしたのよ?」
「いや・・・あれ誰だっけ?」
朝倉は本当に分らないようだ、確かに名前は聞いていたはずなのに
「くくくっ・・・」
それを見て笑うのをこらえるのに必死の美空がいた


841 : GTN 2006/01/09(月) 12:06:45 ID:???
美空「あ~ 退屈だな~」
美空は学校を無断欠席するようになっていた もう何日休んだだろうか
彼女はそれ程自分の存在感の無さにウンザリしていた
彼女は学校を休んでいる間様々な悪事に手を染めた
万引き(気づかれなかった)、キセル(気づかれなかった)、放火(監視カメラに映ってたのに気づかれなかった)etc…
しかし美空は退屈でだった あまりにも上手くいきすぎるからである
彼女は自分という存在を誰かに気づいて欲しくて悪事をした筈だった
だがそれもただのヒマつぶしになってしまっていたのだ
美空「学校… 行ってみようかな 何日も休んじゃったし」
美空は学校に向かった 流石にみんなもこれだけ欠席したのだから心配してくれると思ったからである
美空「おはよう」 美空は教室に着いて挨拶をした しかし誰も気づかない
彼女は落胆したがチャンスすぐはめぐってきた
新田「お前ら 席に着け 出席とるぞ」 彼女は心の中でガッツポーズをとった
流石に出席をとる時には気づかれるだろうと思ったからである
新田「今日も全員きてるな 感心 感心」 しかし気づかれなかった…
疑問と絶望が頭の中に飛び交う中、美空は一つの結論にたどり着いた



宇宙は私に興味がない



846 : 僅かな空気が本当の魔法 1 2006/01/09(月) 15:43:54 ID:???
地下水道。高畑の救出にやって来たが田中の大群と新たなロボ兵器の前に、為す術をなくした明日菜達。
絶望にうちひしがれる彼女達の背後に立った大小二つの影。

美空「明日菜……」
明日菜「え…美空ちゃん!アンタいつの間に!?」
美空「下でね、奴らをまとめて倒せるモノ、見つけたよ」

そこに倒れてる高音と愛衣程ではないがボロボロな姿の美空とココネは、大きな金属製の円柱を二つ、
各々抱えていた。

明日菜「何よ、ソレ」
美空「百m四方を吹き飛ばせる爆弾。爆発時に電磁波を発生させるから、全壊免れた奴も機能停止するって」


847 : 僅かな空気が本当の魔法 2 2006/01/09(月) 16:00:24 ID:???
明日菜「でも、ロケットとかついてないじゃない。どうやって奴らにぶつけるの?私だって無理よ、
ソレ向こうまでブン投げるのは」
美空「ロケットなんかいらないよ。前と後ろで私とココネが持って行くんだから」
ココネ「……(コク)」
明日菜「なっ…ダメよそんなのっ!」
美空「いいの。それが私達の役目だから。明日菜は高畑先生の所へ行ってあげて。そして……
全て終わったら、シスターシャークティーに私達の記憶、消してもらってね。これからの明日菜には
必要のないものだから」

明日菜の脳裏を遠く悲しい記憶が一瞬横切る。


848 : 僅かな空気が本当の魔法 3 2006/01/09(月) 16:14:53 ID:???
明日菜「嫌…嫌よ!ねえ美空ちゃん、他の方法考えよ?一緒に高畑先生助けて…一緒に帰ろうよ
私バカだけどさ、きっといい方法が見つ」
美空「明日菜とこんなに沢山喋ったの初めてかもしれないけど…楽しかったよ」
明日菜「ダメ、美空ちゃん、ココネちゃん、やめてーーっ!」

爆弾を抱えたまま前後の田中達へと突進して行く美空とココネ。
数秒後、二つの大爆発があり、煙の晴れた後に動いてるロボ兵器は存在しなかった。

明日菜「何で…何で…ぐすっ、うう、バカ…」

泣き続けている明日菜。目を覚ました高音達はカモから事情を聞いた。


849 : 僅かな空気が本当の魔法 4 2006/01/09(月) 16:32:19 ID:???
しばらく明日菜を黙って見つめていた高音は思い切って彼女に言った。

高音「失態晒した私に言えた事ではありませんが…明日菜さん、泣くのはもうやめにしましょう
私達がここで立ち止まっては、彼女の心が無駄になってしまいます」

明日菜は顔を上げてぼんやりと高音を見つめた。

カモ「裸姉さんの言う通りだぜ。あのチビ助だって姐さんに前へ進んで欲しかった筈だ」

…あれ?

高音「誰が裸姉さんですかっ。ココネちゃんの事で涙するのは、高畑先生を救出してからです」

美空は?

明日菜「そうね…ごめんなさい高音さん」


850 : 僅かな空気が本当の魔法 終 2006/01/09(月) 16:44:42 ID:???
明日菜は涙を拭った。強い決意の心を目に浮かべて。

明日菜「そして、ココネちゃん。私がココネちゃんの分までしっかりしなくちゃ申し訳ないよね。
私、頑張るよ。だから見守っていてね、ココネちゃん」

…ねえ、美空は?





美空「――なあんて事になっちゃいそうだからさ、生き残っとかないとダメよねー?
そんな訳でやっぱりお先っ!」

かそくそーち!

明日菜「待てこらあああああああっ!覚えとくからねーーっ!」


855 : GTN 2006/01/09(月) 18:28:23 ID:???
水泳部更衣室の裏に朝倉和美は潜んでいた
和美「うへ 今日も水泳部の皆さんの美しい姿を撮りますか」しかし隣には窓から中を覗きをしている新田がいた
和美「な…なにやってるんですか」
新田「なあに 覗きや盗撮をしているヤシがいないか監視しているのさ」
新田は毅然とした態度で言い放った
新田「そういう君こそ、盗撮なんてしてるんじゃないのか?」
朝倉の表情は氷ついた だが何か思いついたかのように内ポケットから何かを出す
和美「これいりませんか」
新田「な! これは女子高等部の生徒が×××している写真」
朝倉「ふふ それあげるから新田先生… このことは内密に」
新田「ふふ わかっとるわ それに君は取材の一貫として撮ってるだけだろう?」
和美「新田先生ものわかりがいいねぇ
しかし背後にはアキラが立っていた
アキラ「何してるんですか…」  彼女がそう言った瞬間
朝倉はアキラに抱きついた
和美「新田に襲われそうになったの!」 アキラの中で何かがキレた
アキラ「変態教師が…」アキラは怒りに満ちていた しかし新田は動揺すらしていない
むしろこの状況を楽しんでいるようだ
アキラの拳が顔面に入り、意識が薄れていく中で新田は思った

大河内の拳は気持ちいい




857 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 18:53:00 ID:???
新田「どれだけ歳を重ねても、決して無くしてはいけないものがある。
これを無くしたら、一生後悔する、そういうものだ。
この事を生徒たちに伝えるのは私の義務なのだよ」

千雨「いいからとっととパンツをはけ」

861 : 絶望の淵から 2006/01/09(月) 21:32:36 ID:???
>>493
「そ……んな…」
「辛いかもしれませんが、受け止めて下さい。私が今言ったのは紛れもない事実です」
信じられない。嘘に決まっている。
そう思って気を集中させようとしてみたが、少しも手ごたえが無い。
半妖態への変化も試してみたが、結果は同じだった。私を構成していた『力』の部分だけが完全に抜け落ちていた。
言葉を失う、というのはまさにこういう事を言うのだろう。何も考えられなかった。眼前が真っ暗になり、頭の中は真っ白になった。
「……桜咲さん?どうなさいました?」
「オイ!!刹那!!!」
「……せっちゃん?せっちゃん?」
「刹那さん!」
遠くで誰かが何かを言っている。私の名前を呼んでいるような気もするがもうどうでもいい。
そうだ、これはきっと悪い夢なんだ。起きればいつものように部屋の中で、布団の中にいるんだ―――




そこからどうやって部屋まで帰ったかは記憶に無い。
今は、ソファの上に腰掛けている。
「ほら……白湯だ。とりあえず飲め。落ち着くぞ?」
「………飲みたくない」
「好き嫌いはイカンアルよ刹那~」
茶化すようにクーがおどける。
クーが私の事を元気づけようとしてくれているのは分かったが、正直鬱陶しかった。
「………クー、少し外へ出よう…今は一人にしてやれ」
こういう時、龍宮は頼りになる。私の心情を察して、一番いい対応をしてくれる。
今の私は何を言うか分からない。下手をしたらクーの心に修復不可能な傷をつけてしまうかもしれない。
それを私が発する雰囲気から読み取って、クーを私から遠ざけてくれた。


862 : 絶望の淵から 2006/01/09(月) 21:34:09 ID:???
>>861
「むぅ……分かったアル…」
「いい子だ。……刹那、落ち着いたら電話をくれ」
「……わかった」
それじゃあ、と言って龍宮がクーを連れて行った。バタン、と扉の閉まる音がして部屋の中に居るのは私だけになった。
部屋の中に響くのは、時計の針が動く音だけ。
………まだ、なにもする気が起きない。できる事といったら、カップから立ち昇る湯気を見つめる事くらい。
実感が湧かなかった。頭だけでなく、体でも分かっているはずなのに。
心で受け止められていなかった。
気が使えない。それが何を意味するのかは知っている。
純粋な体術に関してはあまり影響は無いが、その他の攻撃や防御に関しては致命傷だ。
殴られれば傷を負い、銃で撃たれれば死ぬ。何ら一般人と変わりが無い。
それは同時に、人に害為す魔に対して対抗する手段が全く無いということも意味している。
そして、私にはもうお嬢様を守る力が無いということも。
あぁ、どうして私はあそこで気を抜いてしまったのだろう。もっと周りを見ていれば、こんな事にはならなかった。
お嬢様とまた仲良くできるようになって、明日菜さんという友達もできて――――
私の人生で今まで無いくらいに上手くいっていたのに。それなのに。
「後悔先に立たず、か……」
悔やんでも悔やんでも、悔やみきれない。
自分で自分が情けなさすぎて、エヴァンジェリンさんに会わせる顔が無い。
私の事を心配して忠告してくれたのに、大口叩いて分かったように振舞った挙句がこのざまだ。
笑い話にもなりはしない。


863 : 絶望の淵から 2006/01/09(月) 21:37:52 ID:???
>>862
「……っくそ…」
口を開けば、漏れ出す後悔の念。
そして、胸を満たすどうしようもない悔しさと、無力感。
今更ながら泣けてきた。あぁどうしよう。涙が止まらない。
「……ひぅう……なんで…っ………くそぉっ…」
なぜ?どうしてこんなに涙が出てくるんだ?
「うぁあ……くそぉ………」
悔しいからか。泣くことしか出来ない自分の無力さが。
「…っ……くそぉ……」
情けないからか。泣くことすら我慢できない自分の心の弱さが。
「………くっそぉぉぉぉおぉおおおお!!!!」
血が出るほど拳を硬く握り締めて、叫んだ。
部屋に響くのは、悔しさと、情けなさと、無力感が全てないまぜになった、絶望の雄叫び。
涙はカーペットに落ちて染みを作り、窓は声に反応してビリビリと震えた。




ひとしきり泣いて少し心が落ち着いた時、私の目にあるものが写った。
私の愛刀、夕凪。
いままで多くの魔物を屠り、その血を啜ってきた私のパートナー。
おもむろに鞘から抜き放ち、青白く光るその刀身を見つめる。
これから先、私がこの刀を振るって戦う事は無い。そう思うと、ますます気が重くなる。
『いっそのこと死んでしまえたら楽だったのに』
そんな思考がよぎる程に。
――――簡単な話じゃないか。この刀を使えばいい
頭の中にそんな声が響いた。
何を馬鹿な。
――――お前だってさっき思ったろ?死ねば楽になれる。まさにその通りだ
……確かにそうかも知れない。


864 : 絶望の淵から 2006/01/09(月) 21:38:59 ID:???
>>863
――――そうさ。死んじまえ
死ねば、楽になれる。頭の中からする魔性の響きに身を委ねれば、この苦しみから解放される。
一旦そう思ってしまったら人間弱いものだ。いつの間にか私は夕凪を手に取っていた。
――――ほら、一思いに
頭の中からする指示に従って思い切り夕凪を振り上げて――
コンコン
胸をめがけて振り下ろそうとしたその瞬間、誰かが部屋の扉を叩いた。
「…刹那さん、居る?」
音の主は明日菜さんだった。
「……居る…よね?」
返事が出来ない。
と、いうよりもしたくなかった。自分が今しようとしていた事を声から気取られそうで。
「出てきたくなければそのままで良いから、聞いて?ネギと木乃香から伝言預かってきたから」
お嬢様とネギ先生が私に?
「まずネギからね。『これから大変かもしれないけど、諦めないで頑張って下さい!!!』だって」
ネギ先生らしい……それでも、心の奥がほのかに温まる言葉だった。
「で、木乃香が…『例えどんな風になってもせっちゃんはせっちゃんやから、気にせんと今まで通り仲良うしてや。早まったらあかんで』って」
あぁ、お嬢様は分かっていたんだ。私がどういう風に思って、どういう行動に出るのかも。お嬢様が直接来たら、私が辛くなるだけだって事も全部。
「最後に私から。負けちゃだめだよ、刹那さん。苦しくたって、生きてれば必ず良い事あるから。力が無くたって、幸せになれるから。ね?」
胸の奥に響く、重い、重い言葉。
なによりも私が欲しかった言葉だった。
「……………あり、がとう…」
悔しさからでは無く、本当に嬉しかったから。
ネギ先生と木乃香お嬢様と、明日菜さんの優しさが、温かかったから。
いつの間にか、また泣いていた。
そしてもう、私の中の闇は、消えていた。


892 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:29:46 ID:???
5レス投下します。ほぼ全部ネタですが
ちゃんと形になっているかどうか心配……



9 JAN., 2006
NEAR A DISPUTED BORDER

「あいつのことか。ああ、知っている。
話せば長い……そう、古い話だ。

……知ってるか? 戦士は五つに分けられる

目標に突っ走ってく奴、
只管に強さを求める奴、
プライドに生きる奴、
楽しいからやってる奴、
何かや誰かを護る奴、

……この五つだ。

あいつは――――」




893 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:31:25 ID:???

* ***., 2003
  MAHORA HIGH SCOOL
「龍宮、桜咲。撤退は許可出来ない。迎撃せよ」

「だろうな。報酬上乗せだ」
MAGISTER NEGI MAGI
THE MAHORA WAR
三年前――――       
世界を巻き込んだ戦争があった                            A RECOD OF
THE MAHORA WAR


「『エリアTHZR』で大規模な戦闘!
上も下もバケモノだらけだ!」

「龍宮、刹那、援護に向かえ!」

「よう相棒。私たちにはお似合いの任務だ」


彼女は『黒肌の妖精』と呼ばれた傭兵                    A SISTER IN ARMS
『彼女』の相棒だった女


「東洋魔術師多数接近。
全員撃破し、橋頭堡を確保しろ」
WAR AREA-THZR "THE MAHORA GARDEN"
「大橋でお出迎えだ」                  エリアTHZR――――通称『麻帆良の庭』


894 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:32:13 ID:???

A GRAND STAGE FOR MASTER OF THE MAGIC
私は『彼女』を追っている                魔術師たちに与えられた舞台


A KNIGHT THAT LIVES BY FRIEND
「今までの奴らより強い!」
THE STRATEGIST

「マレブランケだ! 油断すんな!」            A WOMAN WHO UPHOLDS HONOR

THE PRIDER
「黒肌の銃使いがいる。
噂に聞いた奴か」                            THE BRINGER OF TRICK

 ファンギー                            A WOMAN WHO LIVED FOR MONEY
「牙持ちどもには贅沢な墓場だ」
THE REBORN VAMPIRE

A WOMAN OF UNDYING LOVE
「ここは『麻帆良』
死人に口なし」                                 A REVOLUTIONARY



THEY CALLED THEM "THE KNIGHTS OF THE SPRINGFIELD"
人は彼女らを『スプリングフィールドの騎士』と呼んだ



895 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:32:57 ID:???


CHANGING ENCONTERS
変化する出会い

そして――――

TWISTING FATE
変わる運命

『黒肌』の言葉で

AN UNCHANGEABLE WORLD
変われない世界

物語の幕は上がる


TOLD FROM THE HEART OF A KNIGHTS
彼女らが語る――――

THE LIFE OF SETSUNA
刹那の生き様


896 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:33:27 ID:???

「あれは雪の降る寒い日だった……」



MAGISTER NEGI MAGI

THE MAHORA WAR



THERE IS ONLY ONE ULTIMATE RULE IN WAR――――
交  戦  規  定  は  唯  一  つ

生き残るぞ! 刹那!

S U R V I V E
"生 き 残 れ"



2006

 TAKING TO WAR GARDEN

"再び戦火の学園へ"



897 : マロン名無しさん 2006/01/09(月) 23:34:12 ID:???
エヴァ「……と言う夢を見たんだ」

茶々丸「ゲームのやりすぎです、マスター」

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最終更新:2009年01月26日 00:00