オデュッセイアを読む@wiki

オデュッセイア21

最終更新:

diktaion

- view
だれでも歓迎! 編集

第21歌 弓の引き競べ

ペネロペは屋敷で弓の腕競べを開催し、オデュッセウスの弓を用いて、十二の並んだ斧を射通した者に嫁ぐことを約束する。求婚者は次々と弓を試みるが失敗する。オデュッセウスは豚飼と牛飼に正体を明かし、求婚者討伐の協力を求める。オデュッセウスは弓の腕競べに名乗り出て、弓を試みて成功する。


内容

ペネロペ、弓の腕競べを開催する ペネロペは女中たちを随えて、屋敷の外れにある倉庫に向かった。そこには弓と矢筒が置かれてあった。それはラケダイモンの勇士イピトスオデュッセウスに贈ったものだった。妃は弓と矢筒を手に、求婚者の群がる広間に向かった。妃は柱の傍に立ち、求婚者にむかって、「一同よ、さあ、ご所望のものは、腕競べの賞品として賭けますから、試みられよ。ここに置いたオデュッセウスの弓を用いて、十二の斧を射通した人に私は随っていきます」

テレマコス、弓を試みる 妃はエウマイオスに、弓と斧を置くように命じた。豚飼は泣きながら主人の弓を置いたが、牛飼もそれを見て泣いた。アンティノオスは、「愚かな田舎者ども、なぜ泣いて悲嘆にくれる妃の心を乱そうとするのか。弓はそこへ置いてゆけ。この弓を張るのは容易な業ではあるまいが」といったが、心中では成功するつもりだった。テレマコスは、「求婚者の方々よ、競技にかかられよ。私もこの弓を試みてみよう」テレマコスは弓を試みはじめた。弓を張るのに三度失敗して、四度目に成功しそうになった時、オデュッセウスが顎をしゃくって、はやる息子をとどめた。

求婚者たち、弓を試みる アンティノオスが右回りで順にいこうと提案し、一同は賛成した。最初に、レオデスという男が試みたが、弓を張ることはできなかった。アンティノオスはその弱さを罵った。彼は山羊飼メランティオスに弓を温める火を起こさせ、脂のかたまりを取ってこさせた。求婚者たちは弓を次々と試みたが、張りうるものは一人もいなかった。

オデュッセウス、豚飼と牛飼に正体を明かす この時、オデュッセウスと牛飼と豚飼は中庭に出た。オデュッセウスは二人にいった。「おぬしらは今ここにオデュッセウス王が帰ってこられたら、どうするか」ピロイティオスは主人の無事を祈り、主人に助力することを誓った。エウマイオスも、同様に主人の帰還を祈った。オデュッセウスは、「その男はここに帰ってきているぞ、このわしがそれだ。わしの帰国を待っていてくれたのは、召使の中ではそなたら二人だけであると分かった。幸いに求婚者どもを討ち果たせたならば、二人とも財産を分け、家を建ててやろう。では、わしがオデュッセウスという証拠をみせよう」といって、足の傷痕を見せた。二人は再会を喜び、オデュッセウスと抱き合った。

オデュッセウス、手筈を決める オデュッセウスはいった。「では、これからの手筈を決めよう。求婚者どもは、わしに弓と矢筒を渡すまいとするであろう。その時はエウマイオスよ、そなたは弓を持ってきて、わしに手渡してくれ。そして女たちには、部屋の扉に鍵をかけるよう言いつけるのだ。そしてピロイティオスよ、そなたは中庭の門にかんぬきをかけ、縄で縛りつけておくように」そして三人は別々に屋敷に戻った。

オデュッセウス、腕競べに名乗りでる エウリュマコスは弓を試みたが、弦を張ることはできず、「われらは、オデュッセウスにこれほど力が劣るとは。後世の者に聞かれたら恥辱ではないか」と嘆いた。アンティノオスは、「そんなことにはなるまいよ。今日はアポロンを祀る神聖な日だ。こんな弓など片付けてしまおう。明朝続きをして、この競技を終わりにしよう」といった。一同は酒を飲み交わした。オデュッセウスは、「求婚者の方々よ、どうかその弓を私に試させてもらいたい。かつての体力が今も残っているか確かめてみたいのでな」といった。

求婚者たち、オデュッセウスを罵る アンティノオスは、「このろくでなしめ。われら貴き者の間に交じって食事ができるだけでも、ありがたいと思わぬのか。お前は酒にやられたのだ。よいか、お前が弓を張ろうなどとすれば、船に乗せて、残忍なエケトス王のもとへ送ってやるぞ」といった。ペネロペは、「アンティノオスよ、この屋敷の客人に無礼な態度は良くありません。その客人が弓をはることができたら、私が彼の妻になるとでも思っておいでか」といった。エウリュマコスは、「われらが弓を張れぬのに、この男が弓をやすやすと張ったら、われらの恥ではないか」といった。ペネロペは、「王侯の資産を食い荒らすような者に、良い評判などありえようか。さあ、弓をこの客人にお渡しなさい。どうなるか見てみましょう」といった。テレマコスは、「母上、この弓をどうするかは、私しか決めることを許しません。母上は、自分の部屋にお帰りになって、後のことは男たちにお任せ願いたい」といった。妃はあっけにとられた心持ちで自分の部屋に戻ると、しばらく夫を想って泣いていたが、やがて眠りについた。

豚飼と牛飼、屋敷を閉めきる 豚飼が弓を持ってゆこうとすると、求婚者たちは「豚飼よ、なにをする、心狂ったのか」と一斉にわめきたてた。豚飼は恐れをなしてためらった。テレマコスは、「爺よ、構わず弓を持っていけ。誰のいうこともはいはいと聞いていれば、ろくなことにならぬぞ」といった。豚飼は、広間を通り、オデュッセウスに弓を渡した。それから、エウリュクレイアを呼び、「テレマコス様の命令じゃ。この部屋の扉を閉めよ。また閉め切った部屋から、うめき声や物音が聞こえても、女たちは仕事をつづけよ、とのことだ」といった。一方、ピロイティオスは中庭の門にかんぬきをかけ、縄で縛っておいた。

オデュッセウス、弓を試みて成功する オデュッセウスは弓を手にとって点検していたが、調べ終わると、事もなげに弓を張った。求婚者たちは顔色を変えたが、その時ゼウスは轟々と雷を鳴らし、吉兆をあらわした。オデュッセウスは矢をつがえ、弦を引き絞り、狙いを定めて矢を放った。矢は斧の柄を刺す穴を全て、見事に射抜いて外に抜けた。オデュッセウスはテレマコスに、「あなたに世話になったこの客は、あなたに恥をかかせないですみました。ところで、アカイア人の方々に夕食を調えるとすれば、すでにその時刻じゃ」といって、目配せをした。テレマコスは剣を肩にかけ、槍を握ると、父の傍らにすっくと立ち上がった。


関連

人名

アテナ ペネロペに弓の競技会を思いつかせる
ペネロペ 弓の競技会を開催する
オデュッセウス 乞食に身をやつして、誅殺の機会を待つ
イピトス ラケダイモンの勇士。エウリュトスの子。オデュッセウスに弓を贈った
オルティロコス メッセネの領主
ゼウス 雷で吉兆をあらわす
ヘラクレス イピトスを殺した。
エウマイオス オデュッセウスに忠実な豚飼
アンティノオス 求婚者のリーダー格。エウペイテスの子
テレマコス 父とともに、求婚者への復讐の時を待つ
レオデス 求婚者。オイノプスの子。蛮行を嫌う占い師。最初に弓を試みる
メランティオス 山羊飼。オデュッセウスに不忠
エウリュマコス 求婚者のリーダー格。ポリュボスの子
アウトリュコス オデュッセウスの祖父
ピロイティオス オデュッセウスに忠実な牛飼
アポロン 弓の神
エウリュティオン ケンタウロス族。酒で失敗して不具となった
ペイリトオス ラピタイ族。エウリュティオンをもてなした
エケトス 残忍な王。誰彼かまわず不具にする
エウリュクレイア テレマコスの乳母


地名

ラケダイモン スパルタのこと。イピトスの出身地
メッセネ スパルタ近くの町
イタカ オデュッセウスの故国
ピュロス  
アルゴス  
ミュケナイ  
パルナッソス アウトリュコスの故国
エリス イタカ近辺の土地


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー