第十歌 風神アイオロス、ライストリュゴネス族、魔女キルケの物語
内容
アイオロスの島に着く 次に我らはアイオリアの島に着いた。ここにはアイオロスが住んでいた。一ヶ月そこで歓待を受けた後、帰国を願い出ると、彼は出発を手配してくれて、吹き荒れる風を封じこめた袋をくれた。我らは順調に船旅を続け故国の間近まで来たが、そこで私は眠ってしまった。部下たちは風の袋を宝物と思いこみ開いた。大風が起こり、船はアイオリアの島に逆戻りしてしまった。アイオロスを訪ねて助けを乞うたが拒否された。
ライストリュゴネス族の国に着く 風の助けなく船を漕ぎつづけ、ライストリュゴネス族の町テレピュロスに着いた。他の船は湾の中に停めたが、我らの船は用心深く湾の端に停めた。私は部下3名を調査に送り出した。彼らはその国の王アンティパテスの屋敷を訪ねたが、そこで部下の一人は捕まって食べられてしまった。他の二人は船へ逃げ帰ってきたが、大勢のライストリュゴネス人たちが襲ってきた。彼らは巨人族に似た姿をしており、岩を投げつけてきた。他の船は皆破滅し、我らの船だけは逃れることが出来た。
(画像/キルケ)
キルケの島に着く 次にアイアイエの島に着いた。ここは怖るべき女神キルケが住んでいた。港で二日間休み、三日目に私は島の奥地へ向かったが、そこで煙が立つのを発見した。私は船に戻り一日休み、部下たちを二つの組に分け、一つは私が、もう一つはエウリュロコスが指揮を執った。くじ引きでエウリュロコスの組が調べに行くことになった。彼らはキルケの屋敷を発見した。一同が案内を乞うと、彼女が出てきて招じてくれたので、一同は中へ入っていったが、エウリュロコスのみは後に残った。彼女の勧める飲み物を飲んだ一同は豚になって豚小屋に入れられてしまった。
キルケの魔法をうち破る エウリュロコスは戻って我らに何があったかを話した。それを聞くと私は一人でキルケの屋敷を目指したが、途中青年に扮したヘルメスが現れ、彼は私にキルケの魔法を破る薬草と助言を与えた。私は屋敷を訪ると、彼女の魔法を破って剣で脅しつけた。彼女は恐れて私を寝台に誘ったが、私はヘルメスの助言に従って、部下たちを人間に戻させ、今後我らに害を与えないと誓わせた後にはじめて彼女の寝台に上がった。
キルケの島で一年を過ごす キルケは部下を人間に戻し、歓待してくれた。エウリュロコスは反抗したが、結局私の怒りを恐れて従った。我らは一年をそこで過ごしたが、部下から帰国すべきと忠告があり、私はキルケに帰国を懇願した。キルケは了解したが、帰国の前に我らは冥府に赴き、予言者テイレシアスの霊に行先のことを訊ねなければならないといった。彼女は冥府の道を示し、そこで行う祈願の儀式を教えた。私は部下に出発を伝えたが、部下の一人エルペノルは酔って屋根から落ちて死んでしまった。私は部下に今から冥府に向かうことを言うと彼らは嘆き悲しんだ。
関連
人名
アイオロス | ヒッポタスの子。風の神 |
オデュッセウス | 故郷イタカを目指している |
ラモス | テレピュロスの町の創始者 |
アンティパテス | ライストリュゴネス族の王 |
キルケ | 魔女 |
アイエテス | キルケの姉 |
ヘリオス | キルケの父 |
ペルセ | オケアノスの娘。キルケの母 |
エウリュロコス | オデュッセウスの部下。偵察隊のリーダー |
ポリテス | オデュッセウスの部下 |
ヘルメス | オデュッセウスを助ける |
ハデス | 冥王 |
ペルセポネ | ハデスの妻 |
テイレシアス | 予言者 |
エルペノル | オデュッセウスの部下。酔って屋根から落ちて死ぬ |
地名
アイオリア | アイオロスの支配する島 |
イリオス | トロイアのこと |
テレピュロス | ライストリュゴネス族の町 |
アイアイエ | キルケの住む島 |
オリュンポス | 神々のすみか |
イタカ | オデュッセウスの故国 |
オケアノス | この世の果ての河 |
ピュリプレゲトン | 火焔の河 |
ステュクス | 憎しみの河 |
コキュトス | 嘆きの河 |
アケロン | 冥界を流れる河 |
エレボス | 闇の世界 |