第十二歌 セイレン、怪物スキュラ、魔の淵カリュプディス、ヘリオスの牛
内容
キルケの島へ戻る オデュッセウスの話は続いた。「冥府を出て船を進めアイアイエの島に着くと、我らは浜で一泊し、翌朝キルケの屋敷へ部下を送ってエルペノルの遺体を引き取って弔いをした。キルケは食事と酒を持参し我らは飲食してその日を過ごした。その夜キルケはこれからの進路について私に教えてくれた。・・・セイレンの所を通ること、スキュラとカリュプディスの棲家を抜けること。トリナキエの島に着くが、ヘリオスの飼う家畜に危害を加えてはならないこと。
セイレンの海を抜ける 翌朝我らは船を出し、やがてセイレンの住む島に着いた。その美しい歌声を聞いた人間は誘惑によって海へ引き込まれる。キルケの指示どおり、部下たちの耳を蝋でふさぎ、私はセイレンの歌を楽しみたいため帆柱に縛りつけさせた。セイレンたちが来て歌い、私は縄をほどくよう叫んだが、部下はよりきつく縛った。こうして誰も失わずその海を抜けた。
スキュラとカリュブディスを抜ける それからスキュラとカリュブディスの棲家に着いた。そこは二つの岩の間の狭い海路で、一つの岩には6つの首を持つ恐ろしい怪物スキュラが住んでおり、もう一つの岩の根元には海水を吸い込んで吐き出すカリュブディスがいた。部下たちには何も教えずひたすら漕がせた。恐ろしいカリュブディスを避けて進んでいると、スキュラは6名の部下をさらって、生きたまま食べてしまった。
ヘリオスの島に着く その後トリナキエの島についたが、予言者テイレシアスとキルケから、この島を避けるよう警告されたことを部下たちに伝えると、一同は悲しんだ。しかしエウリュロコスが疲労した我々に休息も与えない気かと憎憎しげに言ったので、一同は彼に賛成して不本意ながら上陸することになった。私は全員に神の家畜に手を出すなと誓わせた。
ヘリオスの牛を食べてしまう それから南風が一ヶ月も止まず、我らは飢えはじめた。そんな時、私は救いを求めて神々に祈りに行ったが、そこで眠ってしまった。一方エウリュロコスは仲間に家畜に手を出すようそそのかし、牛を食べてしまった。ヘリオスは怒りをゼウスに訴えた。
嵐に船が砕かれる それから七日目に風が止んで、我らは船を出した。海上でゼウスは嵐と雷を起こし、船を打ち砕いた。部下たちは海に落ち帰国の望みはなくなった。私は帆綱で結えた竜骨と帆柱にまたがって風に流されたが、スキュラとカリュブディスの淵に戻されてしまった。カリュブディスが船材を呑んだとき、私は頭上の樹に掴まって待ち、再び船材を吐き出した時飛びついて両手で漕いで逃れた。
カリュプソの島に漂着する 九日間海を漂い、女神カリュプソの住むオギュギエの島に着いた。女神は私は迎えて面倒を見てくれたが、それからのことは既に昨日お話ししたことで、もはや繰り返し話すまでもありますまい。」
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