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魔法戦の技術

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魔法戦の技術
ズーリン・アルクタス 著
諸名士による注釈付き


第3章:戦力の配備

アルクタス先生いわく:

その一、攻撃を開始すべき時とは、敵が攻撃に対し脆弱となったその時なり。

 レロス・チェイル注:敵の魔術師の意図を知ることが肝要である。相手の意図が判れば、その弱点も判る。

 セッド・マール注:アルクタス先生は五橋の戦いに先んじて、タイバー・セプティムに対し、敵が勝利するまでは予備戦力を投入しないようにと助言された。タイバー・セプティムが「敵に勝たせてしまったのでは、予備戦力を投入してどうなると言うのだ?」と問うと、アルクタス先生は答えた。「勝利の瞬間にのみ、敵は脆弱になるからです」と。タイバー・セプティムはその後、自軍に倍する敵軍を敗走させることになる。

その二、敵の弱点こそが、その強みたりうる。自らの弱点こそが、決定打を繰り出す要になりうる。

 マランドロ・ウル注:ノルドとダークエルフとの戦争にて、ノルドの呪術師たちは毎度、風を操って嵐を呼び寄せ、ダークエルフの戦士たちを混乱させ、その士気を奪っていた。ある日、賢明なダークエルフの妖術師が氷魔を召喚し、ダークエルフ軍の後方に位置する岩場に身を潜めておくように命じた。ノルドたちがいつも通り嵐を呼び寄せるとダークエルフの戦士たちは士気が揺らぎ始めたが、嵐の到来に合わせて氷魔が姿を現した。氷魔がノルドたちの召喚したものだと思い込んだダークエルフたちは怯え、嵐よりも氷を恐れて結果的に敵軍へと突撃を始めた。ダークエルフがいつも通り逃げ出すだろうと踏んでいたノルド側は不意を突かれ、嵐の中から襲いかかってきたダークエルフ軍にその日の勝利を奪われたのであった。

その三、戦役の計画を立てる場合、魔戦力と通常戦力の両方を考慮すべし。賢明なる魔闘士とは、両者の均衡を確保するものなり。片手で持ち上げる重りは、両手で持ち上げる二つの重りよりも重し。


その四、魔戦力と通常戦力の均衡がとれていれば、蝶番に油が差してある扉のように、軍の行動は極めて円滑なものとなる。両者の均衡が崩れている場合、軍は三本足の犬のように、いずれかの足が塵の中を引きずられる状態で動くことになる。


その五、かように軍が攻撃に転じる時、それは晴天を割く雷鳴の如し。最高の勝利とは敵には予期されざるも、事後に顧みれば明白なるもののことなり。


その六、賢明なる魔闘士とは、開戦前に敵の敗北を確実たらしめる者なり。戦場の運気とは時に、最強の妖術をも退けるものなり。綿密な計画でさえ、時に勇気により打ち砕かれることあり。故に接戦は避け、事前に勝利を確実なものとすべし。敵が開戦前にその敗北を悟った時、戦いを避けられることすらあり。

その七、戦いでの勝利とは、最も下級な勝利なり。戦い無き勝利こそ、才覚の極致なり。

その八、力の温存も勝利の鍵の一つなり。戦いに勝利せんがために力を発揮するは才覚ならずして、魔法戦の最下級の形たる戦術なり。

 スリデン・ディル=サルクン注:アルクタス先生のおっしゃる「戦術」には、ありふれた戦場魔術の全てが含まれる。魔法戦の理解において、それらは初歩にあたる。敵を火炎で焼き尽くす程度のことは、そこらの魔導兵でも為しうる。賢明なる魔闘士にとって、敵を滅することは最後の手段なのである。

その九、戦いは木に生えし葉に過ぎず。葉が落ちても木は死なず。だが枝を落とせば木は弱まり、幹を圧倒せしめれば木の命運は尽きる。

その十、戦力の配備を入念に計画せし者、勝利は容易と見なされ、勇名を馳せることなし。戦力の配備が不適切な者、勝利は辛勝と見なされ、その名を広く轟かせる。

 マランドロ・スル 注:魔法戦の大家と見なされている者たちこそ、最も腕の劣る者たちなのである。真の達人は大衆に知られてなどいない。



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