人物
人物全般
第一次大戦と第二次大戦のエースたちを簡単にまとめた総覧的な本。
本書に名前が出る中でウィッチになっている人が多数触れられています。
とりあえず人物の元ネタを知りたい時の第一歩には良いでしょう。
有名エースのエピソードをまとめた本が本書。上記戦闘機A風雲録から収録対象を絞り込んで少し詳しく解説した本だと思ってもらえれば正解の内容。
収録された20名のうち4分の3がウィッチ化されているパイロットです。
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『撃墜王列伝』に掲載されているウィッチのイメージモデルになったパイロット |
- エーリヒ・ハルトマン
- ハンス=ヨアヒム・マルセイユ
- アドルフ・ガーランド
- ヴァルター・ノヴォトニー
- アドルフ・マラン
- ダグラス・バーター
- アレクサーンドル・ポクルイーシキン
- ピエール・クロステルマン
- エドワード・オヘア
- 坂井三郎
- 西澤広義
- 岩本徹三
- 黒江保彦
- 穴吹智
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別冊付録の「第二次大戦戦闘機エース列伝」には140人近くのエースが掲載されています。
一人一人の文章は短いですが、ウィッチのモデルとなったエースはほとんど載っていますので、
かんたんにウィッチの元ネタを確認したい時にオススメです。付録の表紙はおなじみの野上武志氏。
扶桑皇国
帝國陸海軍のエースを総覧できるのが本書です。ウィッチ化された帝國陸海軍のパイロットは大体記述があります。
また、新しいウィッチが登場した際に、元ネタを探す第一歩としても有用。巻末のエース一覧からあたりをつけて調べると良いです。
このシリーズは全般的にページ数が少なく(100ページ前後)、一人当たりの記述量は少ないですが、個人個人について調べる前の概説書として最適です。
上記のヘンリー・サカイダの本など、様々な資料や書籍の参考文献にされている有名な本。撃墜数などはこの本の数字が参照されている事が多い。
内容は、日本海軍の戦闘機隊史とダブルエース(10機撃墜)以上の搭乗員のエース列伝からなっている。本書の内容に少しでも興味があるなら入手しておくことをお薦めする。
なお、入手難度の低さや増補改定の分、大日本絵画版が最も入手しやすいと思われ、かつお勧めできる。
様々な資料や書籍の参考文献にされている酣燈社の有名な本。
内容は、日本陸軍の戦闘機隊史とダブルエース(10機撃墜)以上の空中勤務者のエース列伝からなっている。
こちらは『日本海軍戦闘機隊』と異なり復刻されておらず、古書を捜すしかない。ただし結構なプレミアがついている。
陸軍飛行戦隊とその空中勤務者についてまとまった書籍は少なく、この本はとても貴重。
海軍航空隊の戦功表彰を授与された搭乗員と陸軍飛行戦隊の武功徽章を授章した空中勤務者、合わせて139人を紹介している。1冊で海軍と陸軍の、戦功をあげてそれが軍に評価されたパイロットについて知ることができる。
宮藤芳佳
イメージモデル 武藤金義
坂本美緒
イメージモデル 坂井三郎
世界で一番名前を知られている日本人パイロットのモデル本人による自伝。
美化も卑下もせず、ただ本人が見た日本海軍航空隊を書いた作品。
竹井醇子の元ネタである
笹井醇一のことも触れられています。また、眼帯の案となったであろう片目の失明の経緯など、元ネタの人のイメージを的確に捉えていることが良く分かる。
映画にもなっているので「活字面倒くせぇ」と思うなら映画版もあり。
ただし映画版は本と微妙に違っていたり、物足りない部分もあります。
少年時代から戦後の活動まで、数々の貴重な写真が載せられた一冊。
数々の写真は気取らない日常の写真が多く、普段の生活がどのようなものだったのかのがよく分かります。
『大空のサムライ』の記述の中には、やはり著者の誤認や記憶の混同、記録不備などによる違いが生まれており、再販のたびにそれが修正されて異なっている場合があります。
その「版毎の変遷」や「エピソードの実像」などに触れているのが本書。人名の変化や、戦後出てきたデータによる真実などが本書では指摘されています。
『大空のサムライ』を読む上での副読本として本書を一緒に読むと更に理解が深まるでしょう。
- Sakaida, Henry. Winged Samurai: Saburo Sakai and the Zero Fighter Pilots. (Champlin Fighter Museum Press、1985年)
穴拭智子
イメージモデル 穴吹智
本書では幼少の頃から昭和18年3月のビルマ戦線での空戦について収録されています。
メインはビルマ戦線における空戦で、時折図版(地図)を交えながらどのような空戦が行われていたのか、そして自身はどのように戦ったのかがが書かれています。
空戦中の描写が細かく臨場感のある書き方になっており、読物として優れているのは勿論、作戦について詳細が記載されていることから、著者本人だけではなく飛行第50戦隊、そして陸軍航空隊がどのように戦ってきたのかについて知る資料としても良い資料といえます。
糸河衛
イメージモデル 糸川英夫
加藤武子
イメージモデル 加藤建夫
加藤建夫の部下だった
檜與平と遠藤健の二人による回想録。特筆すべきは本書の原本初版は「1943年」、つまり戦中に発行されたものであるという点。
陣中の生活についても書かれており、日付がそれほど経っていない事から非常に生々しい空気を感じられます。
なお、昭和戦争文学全集編集委員会編
『昭和戦争文学全集 第4・太平洋開戦-12月8日』(集英社、1964年)にも収録されています。同巻には、
淵田美津雄や
マレー作戦の島田豊作のほか、太宰治、坂口安吾、徳川夢声など著名人の戦争文学も所収されており、読みごたえがあります。公立図書館や学校図書館にも所蔵されていることが多いようです。
黒江綾香
イメージモデル 黒江保彦
陸軍の機体の数々が実用化されるまでの群像劇で、陸軍飛行審査部時代の黒江少佐が何度も登場します。
黒江少佐本人だけではなく、審査部がどのような組織だったのかを知りたい際にはお勧め。
西沢義子
イメージモデル 西澤廣義
日本海軍航空隊でもトップクラスのエースながら最期は輸送機に乗っているところを襲撃され戦死した悲運のエース。
坂井三郎・太田敏夫と並び「台南空の三羽烏」と言われた西澤の生涯を描いた作品です。
若本徹子
イメージモデル 岩本徹三
1937年から1945年の終戦まで前線を飛び続け、撃墜数を重ねながら生き延びた帝國海軍トップエースである著者の遺稿をまとめ、発行されたのが本書です。
これほどの長期間にわたり前線に立ち続けたパイロットは非常に珍しく、出撃した戦線も多彩なものになっています。
また、著者は
三号爆弾という空対空爆弾の名手であり、投弾方法などの珍しい内容も記述されています。
横川和美
イメージモデル 横山保
零戦の初陣における驚異的な戦果と後に続く零戦伝説は、最初に零戦を使った部隊の指揮官であった著者によって生み出されたと言っても言い過ぎではないと言えます。
また、パイロットの錬成部隊の指揮官となり、人の育成も担当もしていた「海軍航空隊の屋台骨」と言える指揮官の一人です。
その著者による回想録が本書で、生い立ちから海軍入隊とパイロットへの道、そして零戦と出会い、別れるまでを書いています。
零戦の初陣の裏にあった苦労やラバウルの激戦、そして末期の育成を待たずして出撃せざるを得ない若いパイロット達への想い。「部下想いの名指揮官」と言われた著者の心情が垣間見え、大変興味深い一冊となっています。
管野直枝
イメージモデル 菅野直
ガリア共和国
ぺリーヌ・クロステルマン
イメージモデル ピエール・クロステルマン
クロステルマン本人による自伝で、自由フランス空軍に参加してから終戦後第一線を引くまでが描かれています。
本書の見所としては、遂行した任務の種類が制空任務から爆撃機護衛、対地攻撃等と多彩であり、様々な任務の様子が垣間見える事が挙げられます。
また、クロステルマンが文才に恵まれたため記述が大変面白く、文学作品としても読みやすく仕上がっています。
なお、朝日ソノラマ版ではカットされたり、後年になって追記された部分もあります。カットが原因で唐突に出てくる人名などもあるので
こちらのサイトで補完すると良いでしょう。
- P・クロステルマン『空戦』大月栄一訳(朝日ソノラマ文庫、1982年)
- Clostermann, Pierre. Feux du ciel. (Ananke Lefrancq、2001年)
クロステルマンの二作目であり、世界各国の空戦にまつわるエピソードを収録したのが本書。
戦後割とすぐに初版を発行した為、現在の視点から見るとデータのミスなども多く、特に第9章「神風特別攻撃隊」の間違いぶりは凄まじい(
宇垣纏中将が少将になった上桜花で特攻して空母に命中している等)のですが、逆に戦後すぐはこのような情報が流れていたのかという点で大変面白い資料と言えるでしょう。
ブリタニア連邦
エリザベス・F・ビューリング
イメージモデル ジョージ・F・バーリング
- P・クロステルマン『空戦』大月栄一訳(朝日ソノラマ文庫、1982年)
- Clostermann, Pierre. Feux du ciel. (Ananke Lefrancq、2001年)
第三章「マルタのある日」にバーリングのマルタ島時代のことを書いてあり、同時に地中海の真ん中で常に枢軸軍の猛爆撃に晒されつつも、空戦の機会だけは大量にある「戦闘機乗りの楽園」であったマルタ島戦の実情を描いています。
また、クロステルマンとバーリングがイギリスで遭遇したエピソード(素行不良が原因でアドルフ・マランに怒鳴られるバーリングをクロステルマンが目撃)も収録されています。
第17章「マルタ上空の一匹狼」という章がバーリングに関するページで、RAFに入隊するまでの密航騒ぎから始まり、マルタ島上空の空戦について描いています。
帝政カールスラント
史上類を見ない戦果を挙げた、ドイツ空軍戦闘機隊の昼間戦闘機エース104人、夜間戦闘機エース11人(内100機以上撃墜が昼間57人、夜間2人!)の戦歴を一人当たり1~5Pにわたって豊富な写真及び搭乗した機体のマーキングと共に紹介している。
今までストライクウィッチーズの各媒体に登場したキャラクターのモデルでは、ハルトマン、バルクホルン、ヴィルケ、マルセイユ、ガランド、ラル、クルピンスキー、キッテル、ノヴォトニー、ベーア、トネ、メルダース、シュレーア、ザクセンベルク、シュナウファー、ウィトゲンシュタインが紹介されている。
エーリカ・ハルトマン
イメージモデル エーリヒ・ハルトマン
人類史上最高の撃墜数を記録したハルトマンについてならまずはこの本。
中身は大きく分けて二つ、ドイツ降伏前のハルトマンがエースとして、大エースとして目覚めていくさまを。
そしてドイツ降伏後ソ連に抑留され、
NKVDの脅迫・圧迫・拷問……様々な責め苦に耐え、西ドイツで待つ妻ウーシュの元へ帰るまでの抑留生活を。
ハルトマンがおくった壮絶な人生が込められた1冊です。
- エーリッヒ・ハルトマン、ウルスラ・ハルトマン『ドイツ空軍のエースパイロット エーリッヒ・ハルトマン』野崎透訳(大日本絵画、1989年)
- Hartmann, Erlich., Hartmann, Ursula. Der Jagdflieger Erich Hartmann; Die Geschichte des erfolgreichsten Jagdfliegers der Welt,. (Motorbuch Verlag)
文字を読むのが面倒ならこちら。エーリヒ・ハルトマン本人が奥さんと共にまとめた写真集と簡単な自伝。
訓練時から戦場、戦友たち、結婚式、収容所、そして戦後までの豊富な写真と、モノクロだが乗り継いだ機体のカラーリングやパーソナルマーク、相手にした機体の図まで載っているので、資料としても貴重。
また、バルクホルンやロスマンといった身近な戦友から、シュナウファーやゲーリング等一瞬同じフレームに入った有名人など様々な人物が写りこんでおり、ハルトマン以外の人物も見ることができます。
ゲルトルート・バルクホルン
イメージモデル ゲルハルト・バルクホルン
- 野原茂『ドイツ空軍エース列伝』(光人社、2003年)
- 野原茂『ドイツ空軍エース列伝』(グリーンアロー出版社、1992年)
バルクホルンに関するページは4ページ。写真5枚と乗機のイラスト2枚がある分、文章の量は少なめです。
ハンナ・ルーデル
イメージモデル ハンス・ウルリッヒ・ルーデル
- ハンス・ウルリッヒ・ルデル『急降下爆撃』高木真太郎訳(学研M文庫、2002年)
- ハンス・U・ルデル『急降下爆撃』高木真太郎訳(朝日ソノラマ、1982年)
- Rudel, Hans Ulrich. Trotzdem. (Leberecht、1950年)
戦車撃破王としての凄まじい戦果と淡々としている文章の対比が凄まじくギャップのある本です。
ある日対空砲に撃墜され、帰還して開口一番「予備機はあるか?」
別の日対空砲に撃墜され、帰還するも後席(
Ju87は二人乗り)のガーデルマンは肋骨を3本折り本人は脳震盪と診断。続いての一言「休養などはとっていられない、すぐに出撃だ!」
……余りの凄さに
人外とさえ噂されるモデルによる自叙伝です。
アドルフィーネ・ガランド
イメージモデル アドルフ・ガーランド
- ロバート・フォーサイス『第44戦闘団 ザ・ガランド・サーカス』岡崎淳子訳(大日本絵画、2004年)
- Forsyth, Robert. JV 44: The Galland Circus. (Classic Publications、1996年版)
「部隊章は
騎士鉄十字章」。ドイツ中から大エースを掻き集めまくったリアル501「第44戦闘団」。
自身も最終的に撃墜数104を記録する部隊長アドルフ・ガランドと、ハルトマンと並び301機を撃墜するゲルハルト・バルクホルンが在籍していたドイツ空軍の精鋭部隊の本。
部隊史的な性格が強い本ですが、ガランドやバルクホルンがどのように戦っていたのかについては本書がいいでしょう。
唯一の弱点は「高い(5700円+税)」ことぐらいでしょうか……
アドルフ・ガランドの幼少期のグライダーに乗る姿から戦後ずっと経ってなお飛行機に乗る姿まで、多数の写真を使いガランドの生涯を描き出した本が本書。
ガランドの人物像を知るには最適の本と言えるでしょう。
リベリオン合衆国
シャーロット・E・イェーガー
イメージモデル チャック・イェーガー
- トム・ウルフ『ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士』中野圭二、加藤弘和訳(中公文庫、1983年)
- Wolf, Tom. The Right Stuff. hardcover, (Farrar Straus Giroux、1979年・初版)
- Wolf, Tom. The Right Stuff. hardcover, (Black Dog & Leventhal Publishers、2005年版)
- Wolf, Tom. The Right Stuff. paperback, (Picador、2008年版)
- チャック・イエーガー 、レオ・ジェイノス『イエーガー―音の壁を破った男』関口幸男訳(サンケイ出版、1986年)
- Yeager, Chuck., Janos, Leo. Yeager: An Autobiography. hardcover, (Bantam、1985年)
- Yeager, Chuck., Janos, Leo. Yeager: An Autobiography. paperback, (Bantam、1986年)
チャック・イエーガー本人による自伝。
ロマーニャ公国
フランチェスカ・ルッキーニ
イメージモデル フランコ・ルッキーニ
本書でフランコ・ルッキーニを扱ったページは2ページ半しかない。しかし短い文章ながらも、
スペイン内戦から始まり、
マルタ島をめぐる激烈な空中戦、1942年夏のロンメルによる大攻勢に参加した
北アフリカ戦線、そして1943年に
シチリア島の防空戦で撃墜死するまでの、常に劣勢な戦いを強いられながらも敢然と敵に向かっていったルッキーニ大尉の戦歴が濃密にまとまっている。そもそも、第二次世界大戦期のイタリア空軍を扱った書籍は少なく、特にエースたちについて語った本としては本書の原書が、実は英語書籍としては最初の本。また、北アフリカ戦線では後半になるまで戦闘機に防砂用エアフィルターが取り付けてもらえず、空軍上層部からは「やる気」と臨機応変の対応でガンバレと敗軍にありがちな対応されていたエピソードが紹介されるなど、現場の苦労がしのばれる。
この「世界の戦闘機エース」シリーズの目玉はカラー塗装図資料であるが、本書ではルッキーニ乗機が2つも掲載されている。一つはマルタ島の英国空軍と激しく戦い4機を撃墜した機体、第4航空団第10航空群第90飛行隊所属の
マッキ C.200 サエッタ。第10航空群を示す「後足で立つ馬」、第90飛行隊を示す「赤いゾウ」のマークが見られる。もう一つは
エル・アラメインの戦いなど北アフリカ戦線で活躍した機体、第4航空団第10航空群第84飛行隊所属の
マッキ C.202 フォルゴーレ セリエIII。面白いのは60ページに掲載された写真。白黒写真であるが、砂漠戦用迷彩の模様が左右の主翼でチグハグなのが分かる。実は右主翼はC.202後期生産型のものと交換されて補修されているのだ。それが、ルッキーニ大尉が如何に熾烈な空中格闘戦を重ねてきたかを物語っている。マッキ C.202 フォルゴーレのプラモをルッキーニ大尉乗機モデルとして塗装したい人は、この主翼の迷彩模様の食い違いを再現すると面白いかもしれない。
イタリア軍研究者の
吉川和篤がMILITARY CLASSICS誌に連載しているのが「Viva!知られざるイタリア軍」。この号ではフランコ・ルッキーニを特集しています。
ページ的には2ページしかありませんが、そもそもイタリア軍に関する記事を日本語で読めるという点だけで貴重な記事なので必見。
ジュゼッピーナ・チュインニ
イメージモデル ジューゼッペイ・チェインニ
困難な状況のなかでも常に不屈の精神とユーモアを忘れなかったジューゼッペイ・チェインニの生誕、栄光、そしてその死までを実に40ページにわたって書き出した良書。
ごく普通の青年であった彼がなぜ空軍に入ったのか、そして戦闘機乗りとして従軍したスペイン内戦をへて、優れた急降下爆撃パイロットとしての才能を開花させてゆく姿を丁寧に記述しています。
この本では、チェインニの他にも各国の代表的な急降下爆撃パイロットを扱っており、単純に読み物としても楽しめる内容になっています。
問題点としては、古い本である故に翻訳に少々難があること、手に入りにくいことが挙げられますが、その点を除けば金額的にもお得な本だと言えます。
スオムス
エイラ・イルマタル・ユーティライネン
イメージモデル エイノ・イルマリ・ユーティライネン
一度もまともに被弾しなかった(かすったのは1発だけある)伝説のような事実を持つフィンランドエースの自伝。
航空機の質、物量共にソ連に圧倒的に劣る小国フィンランドが冬戦争と継続戦争、2回続けて善戦しついには独立を守り通した戦い。
その中でフィンランドの翼はどう戦っていたのか。奇跡とさえ謳われたその戦いの実情を書いています。
しかしユーティライネンの文章に重苦しさはなく、むしろ牧歌的な雰囲気さえ感じられます。
そして空戦の合間に戦友たちに仕掛ける数々の悪戯も必見。本書の牧歌的な雰囲気はおそらく本人のこの性格にも起因しているのでしょう。
- Kiviranta, Eero. Assien assa sodan taivaalla: Eino Ilmari Juutilaisen tarinaa. (Alea-kirja、1978年)
エルマ・レイヴォネン
イメージモデル エイノ・アンテロ・ルーッカネン
フィンランド空軍第3位の56機という戦果を挙げているエース、エイノ・アンテロ・ルーッカネンの自伝。
自身の戦闘記録としての意味合いが強めで、戦争のアウトラインには触れていないので、先に
こちらで紹介している概説本で概要を掴んでおくとわかりやすくなります。
また、上述のユーティライネンの本とはまた異なる中身なので、フィンランド空軍に興味を持ったならこれも読むといいでしょう。
ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン
イメージモデル ニルス・エドヴァルド・カタヤイネン
「ついてないカタヤイネン」とさえ言われる墜落と縁があるフィンランド軍エースパイロット。常人なら死ぬような事故を経験すること12回。
本書はフィンランド空軍を全体的に描いた本ですが、カタヤイネンも本文中に登場しており、その度に何かの事故に遭っては生き延びています。
巻末に著者とユーティライネン、カタヤイネンら八人のフィンランド人エースとの座談会の模様を収録。
オラーシャ帝國
サーニャ・V・リトヴャク
イメージモデル リディア・リトヴァク
ソ連に存在していた女性のみの飛行隊を扱っているのが本書で、リトヴャクを含めた女性パイロット達の生き様を描いています。
「兵士」としての彼女達だけではなく、「年頃の女性」としての彼女達という側面にも触れることで、彼女達の一人一人を生き生きと描いています。
リトヴャク本人だけではなく、彼女が置かれた環境や人間関係、そして他の女性パイロット達について考えるなら本書をお勧め。
なお写真の収録や誤字誤訳訂正が学研M文庫版で行われているので、ソノラマに思い入れがある場合以外は学研M文庫版の入手をお勧めします。
『北欧空戦史』を書いた中山雅洋が「第25章 白百合の戦闘機隊」としてリトヴァクを1章使って生き生きと描いている。中公文庫版の表紙もリトヴァク。リトヴャク本人について簡潔に調べたい時はこちらをお勧め。
- ヒュー・モーガン『第二次大戦のソ連航空隊エース 1939‐1945』岩重多四郎訳(大日本絵画、2000年)
リディア・リトヴャクについての記述は1ページしかない。しかし、この「世界の戦闘機エース」シリーズの売りの一つは、カラー塗装図。本書では、リディア・リトヴャクがその最期に乗っていたであろう、第296戦闘機連隊(1943年5月からは親衛第73戦闘機連隊)所属の
Yak-1「黄の44」のカラー側面図を見ることができる。ヤコブレフYak-1 リディア・リトヴャク搭乗モデルをプラモで組みたい人には、塗装資料として重宝するかもしれない。また、本書はソ連崩壊後の西側からの研究成果に基づいており、第二次世界大戦期のソ連空軍の実像を知る上でも興味深い一冊。
最終更新:2010年11月20日 10:17