書籍案内 「デイトレード」

(記 2010/8/8)
著者  オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
訳者  林康史(監訳)、藤野隆太
刊行  日経BP社 (原著McGraw-Hill Companies Inc.)
発行年 2002/10 (原著2000)
(注 原著の前半部分の翻訳であり、後半の投資手法部分は省略されている。)


著者の主張を元に投資学の観点からまとめてみる。

投資家の心構え

 第1章「トレーディング勝者への誘い」
 第2章「優れたトレーダーへの精神修行」
 第3章「「逆境」と「損失」」
 第5章「トレーディングにおける7つの大罪」
 第6章「熟練トレーダーへの道」
 第8章「10の教訓」
 第9章「究極のトレーダーからの最後の言葉」

  • トレーダーになるためには、多大なコストを掛け、困難を乗り越えていく覚悟が必要である。
  • 正しい知識を持ち、正しい行動を身につければ、自然と利益があがる。
  • トレーディングに対するポジティブな精神状態が重要である。
  • プロは大勝ちを狙わない。小さく確実な勝ちを積み重ねる。
  • 正しく行動しても負けることがあり、間違って行動しても勝つことがある。正しい勝ちだけに注目しなければならない。
  • 株式市場は本質的に、多数の能力のない投資家から、少数の優れた投資家が利益を奪う構造になっている。
  • 一連の計画に則って行動し、行動している途中では疑問を持たないことが重要である。
  • マーケットは参加者がどう考え、どう資金を動かすかで形作られている。それ以外の事実は投資には関係がない。
  • 投資行動は、人間が快適に感じる行動とは異なるため、訓練を経てそれに慣れるまで、苦痛を感じるものである。
  • うまく行っている状況は長続きしない。うまく行っているときこそ、警戒を怠ってはならない。
  • 成功するためには、成功するまで精神的にも資金的にも継続できなければならない。
  • 常に投資行動を取っている必要はない。投資に向かない環境では何もしないことが重要である。
  • 投資に向かない環境で何もしないことは、損失を避けることで資金を守り、収益率を高めることである。
  • 限られた投資手法に習熟することが重要である。習熟せず別の投資手法に移ってしまっては、一定の成功を遂げることはできない。
  • 失敗した取引から教訓を学んだ後は、その取引については忘れてしまい、ネガティブな精神状態をひきずらないことが重要である。
  • ひとつひとつの取引の勝ち負けは重要ではない。一喜一憂せず、投資行動を正すことに専念するのが重要である。
  • 正しい投資行動を繰り返すうちに、投資家にとってそれが自然な行動になり、第六感ともいうべきセンスが身につく。
  • マーケットを恐れず、侮らず、自分を助けてくれる友のように考えることが大事である。
  • 「主よ、自らの手で変えることができるものを変える力を与え給え。自らの手で変えることができない時にはそれを受け入れる平静さを与え給え。そして、その違いを見極める知恵を与え給え。」
  • 正しく行動しても損失になることがあるため、損失を限定し資金を守り、継続して投資を続けられるようにすることが重要である。
  • 熟練するには時間がかかる。
  • 日々、取引時間外に自分の取引を分析し、間違いを正していく努力が重要である。
  • 投資手法が自分の性格にあっているか確認することが大事である。
  • 時間の経過に不安を感じるような、忍耐強くない性格のほうがデイトレードには向いている。
  • 小さい損失を許容し、小さい利益を積み上げるのを好む性格のほうがデイトレードには向いている。
  • 有名なストラテジストなどは、悲観的な相場見通しを自分の大口顧客に事前に知らせ、準備が整ってから一般に公表している。
  • 有名なストラテジストなどの相場見通しは、自分の顧客である大口投資家の売買がひと段落してから発表されるため、しばしば相場の逆転のきっかけになる。
  • 情報誌や投資アドバイザーは、損失が安定的に小さいかによって採点すべきである。
  • 自分の売買の反対サイドにいる投資家を意識し、相手の感じていることを考えてみる必要がある。

投資手法

 第1章「トレーディング勝者への誘い」
 第6章「熟練トレーダーへの道」
 第7章「究極のトレーダーの秘密」
 第8章「10の教訓」

  • 株式投資では、短期の予測のみが可能であり、従ってチャートを使ったテクニカル手法によるべきである。
  • 銘柄選択よりも仕掛けるタイミングが重要である。
  • ひとつの取引手法をテストするためには、最低10回の試行を行い、有効かどうかの判断をする。
  • 連勝の後の大敗
    • 4連勝または5連勝したときにポジションのサイズを半分にする。
    • 連勝の後に2連敗したときに取引頻度を半分にする。
  • プリスティーンの保険(注 アメリカの株式取引に基づいている。)
    • スウィングトレードの場合
      • 1)日足チャートで、売買価格、利食い価格、損切り価格を決定する。
      • 2)損切り価格を、(買いの場合)前日の安値と当日の安値のいずれか安いほうから、1/16ポイントから1/8ポイント下に設定する。
      • 3)当日を含め2営業日は損切り価格は変更しない。それ以降は、含み益を守るために修正する。
    • デイトレードの場合
      • 1)日中のポジションの取り方に従い、5分足か15分足のバーチャートに基づいて売買価格を決定する。
      • 2)損切り価格を、売買価格を決定する際に根拠にしたチャートの(買いの場合)安値から1/16ポイント下に設定する。
  • 取引手法は複雑過ぎないようにする。
  • 株価が安い低位株より、株価の高い高位株でトレードするべきである。
  • 上級者であれば、大きく動き出す前の低位株を仕込む手法もある。
  • 投資を一旦休止するべき状況
    • 1)長く続いた連勝の後に2連敗したとき。
    • 2)S&P先物のマーケットが暴落しているとき。(注 アメリカの株式取引に基づいている。)
    • 3)不安や混乱を感じ集中できないが、その理由もわからないとき。
    • 4)事前の投資行動の計画が、突発的な出来事でうまく行えなくなったとき。
    • 5)気分が悪いとき。健康が良好に保たれていないとき。
    • 6)精神的に疲れているとき。精神的に平穏でないとき。
    • 7)個人的な問題を抱えているとき。
  • あまりに自分に都合よく買いや売りが執行されたときは、逆のシナリオが実現する可能性を警戒し、反対売買の用意をする。
  • 上級者であれば、株価を自分の思惑の方向に動かすための売買を仕掛ける手法もある。
  • 一般的な株価指数より、有効な株価指数(注 アメリカの株式取引に基づいている。)
    • ニューヨーク証券取引所のTICK指数、TRIN指数、S&P先物、公益株指数、米国債
  • 寄付を待ってから売買を行う。(注 アメリカの株式取引に基づいている。)
    • 例えば、30分ギャップルールでは、50セント以上のギャップをつけて寄り付く場合は買い。
    • 例外として、大きいポジションを持っている場合は、寄付で半分手仕舞う。
  • 11:25から14:15の閑散とした時間帯では取引しない。(注 アメリカの株式取引に基づいている。)
  • 典型的なスウィングトレードは、前日の高値を越えた銘柄を買いに行く。
  • 熟練したデイトレーダーは、2分足、5分足、15分足のバーチャートの高値を超えた銘柄を買いに行く。
  • 上級者であれば、マクロ動向から、次の投資の準備をする。
  • スウィングトレードでは、一度に資金を投入せず、1週間から2週間に分散する。
    • 例えば、週に2回、資金の1/4ずつを投入すると、最後の1/4を投入するまでに、最初の資金を回収している可能性が高いことになる。

投資教育

 第1章「トレーディング勝者への誘い」
 第4章「真の勝者を目指すトレーニング」

  • 投資手法の教育は可能であるが、実践は投資家本人が自分で訓練するしかない。
  • 真似るべき真の勝者を見つけることが重要である。そのコストが高くても最初の困難を軽減できることは大きい。
  • 指導者を真似るだけでなく、それ以上になることを目指す必要がある。
  • 指導者の条件、そしてペテンに注意!
    • 1)指導者は毎日取引を行っていること。現役でない指導者は能力がない可能性が高い。
    • 2)指導料が安すぎないこと。安い場合にはペテンの可能性が高い。
    • 3)指導者が実際に取引するところを見ることができること。実践を見せられないなら問題がある可能性が高い。
    • 4)指導内容が実際の取引に関するものであること。トレーディングソフトの使用方法だけなどということはないか注意する。
    • 5)一連の授業の後も連絡を取り続けることができること。受講後に実践とのギャップを埋める指導も重要であり、指導者の責任感の現われでもある。
  • 投資教育を行う者は、自らもそのことで投資技術を向上させるものである。熟練に達したものは、初心者の指導も行ってみて欲しい。
  • 投資教育を行っている団体(注 アメリカのものである。現在の状況については自分で確認すること。)
    • Pristine.com(注 著者が主催している)、コーナーストーン証券、トレーダーズ・エッジ・ネット
  • 推薦図書(注 内容は自分で確認すること。)
    • 1)How I Made $2 Million in the Stock Market, by Nicholas Darvas
    • 2)Trading for a Living, by Dr. Alexander Elder
    • 3)Japanese Candlestick Charting Techniques, by Steve Nison
    • 4)How to Make Money in Stocks, by William J. O'Neill
    • 5)The Disciplined Trader, Mark Douglas
    • 6)Winner Take All, William Gallacher
    • 7)Reminiscence of a Stock Operator, by Edwin Lefver
    • 8)The Electronic Day Trader, by Marc Friedfertig and George West
    • 9)How to Get Started in Electronic Day Trading, by David Nasser
    • 10)Strategies for On-line Day Trader, by Fernando Gonzalez and William Rhee

訓練法

 第5章「トレーディングにおける7つの大罪」
 第6章「熟練トレーダーへの道」
 第8章「10の教訓」

  • 損切り
    • 損切り水準を決めてからポジションを取り、一度決めた価格で機械的に損切りを行うことを繰り返す。
    • 全てのポジションを一度に損切りすることに困難を感じる場合には、半分のポジションを損切りすることから始めるのも良い。
  • 利食い
    • 利食い水準を決めてからポジションを取り、一度決めた価格で機械的に利食いを行うことを繰り返す。
    • 全てのポジションを利食い水準まで我慢することに困難を感じる場合には、半分のポジションを利食い、残りを決めた利食い水準まで我慢することから始めるのも良い。
  • 時間軸
    • 仕掛ける理由となったチャートが5分足であるなら、利食い、損切りの水準も5分足のチャートに基づいて決定する。日足チャート等でも同様である。
    • 利食い、損切りとも機械的に行うことを繰り返す。
  • 躊躇による機会損失
    • ニュースに頼らず、チャートで投資行動のタイミングを決定する。
  • 連勝の後の大敗
    • 4連勝または5連勝したときにポジションのサイズを半分にする。
    • 連勝の後に2連敗したときに取引頻度を半分にする。
  • 精神面、間違った取引行動に関する自己正当化
    • 自己正当化の兆候を察知する。
      • 1)株価動向に「疑問」を感じていたら自己正当化が始まっている。
      • 2)ニュースを調べ始めたら自己正当化が始まっている。
      • 3)将来の予想を始めたら自己正当化が始まっている。
    • 自己正当化が始まり、状況に確信が持てなくなってきたなら、ポジションを手仕舞う。
    • 全てのポジションを手仕舞うことが困難であるなら、半分を手仕舞う。
  • トレーディング日誌
    • 1)全ての取引を実際の損益にかかわらず、取引ルールから逸脱していないか点検する。
    • 2)点検の結果、取引ルールからの逸脱があったものは、失敗の取引とする。損失になっていても、取引ルールからの逸脱がないものは、成功の取引とする。
    • 3)失敗の取引が、どの取引ルールからの逸脱による失敗であるか明らかにする。
    • 4)最も多い失敗の理由の対策を確認し、以後の取引で取引ルールからの逸脱をなくすよう機械的に繰り返す。
  • 紙に書いて、投資行動を規律的にする。

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最終更新:2010年08月08日 15:48
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