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オデュッセイア11

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第11歌 冥府行

オデュッセウスの一行はキルケの島を発ち冥府に行き、そこで羊の血を地面の穴に注いで予言者テイレシアスを待った。血にひかれて寄ってくる亡霊たちを退けているとテイレシアスが来て、予言を語った。それから、伝説の時代の高貴な女たちや英雄たちの亡霊から話を聞いて、一行は冥府を後にした。


内容

冥府に着く  オデュッセウスの話は続いた。「我らは船でキルケの島を出発した。順風に送られて進むと、オケアノス河の涯に着いた。そこは決して日の射すことのないキンメリオイ族の国土であった。船を降り、河に沿って歩き、キルケに教わった場所についた。そこで供物と祈りを捧げ、生贄の羊の頚を切って血を地面の穴に注ぎ込むと、亡者たちの霊が集まってきた。私は非常に畏れ、部下たちにハデスペルセポネに祈るよう命じると、剣を構えてテイレシアスが来るまで他の霊を血に近づけなかった。


テイレシアスの話をきく  最初に部下エルペノルの亡霊がやってきた。彼は私にここを去った後、自分を埋葬するように頼んだ。
次に私の母アンティクレイアの亡霊がやってきた。トロイア遠征の出発の時には生きていた母の姿を見て、彼は憐れんで泣いた。
そこへ予言者テイレシアスがやってきた。私は彼に血を啜らせて話を聞いた。「そなたの帰国は苦難の旅となるだろう。だが帰国の望みはある。冥府を後にして、太陽の神ヘリオスの住むトリナキエ島についた時、彼の飼う牛と羊に決して危害を加えてはならぬ。そして故郷の屋敷に帰ったら、そなたは求婚者たちを懲らしめねばならないだろう。その後は海を知らない人間たちの国へ達するまで旅を続けねばならぬ。そこで、そなたの担ぐものを「殻竿」だと申す者に出会ったら、櫂を大地に刺してポセイドンに生贄を捧げよ。そして国許に帰って、不死なる神々全てに百牛を献ぜよ。そなたの最期は海から離れた場所で、恵まれた老年を送りつつ、老衰して安らかに果てることになる。」
テイレシアスは去った。私は今度は母親に血を飲ませた。アンティクレイアは私の屋敷のことや、夫のラエルテスが息子の帰りを待って寂しく過ごしていることを語り、自分の死因も息子の帰りを待ちわびる辛い気持ちであったと語った。

高貴な女たちの霊に会う  それから高貴な女たちの亡霊が集まってきた。私は一人づつ話を聞くことにした。
私は他にも数多くの女たちに出会い、話を聞いた。

英雄たちの霊に会う  
  • 女たちが去ると、アガメムノンの亡霊がやってきた。アガメムノンの死を知らなかった私は、何があったのか訊いた。アガメムノンはアイギストスによって殺された無念を語った。アガメムノンは私に、女は信が置けぬゆえ、故国に帰ってもしばらくは密かに人目につかないようにせよと、助言した。
次にアキレウスの霊と、パトロクロスアンティロコスアイアスの霊がやってきた。
  • アキレウスは父ペレウスと息子ネオプトレモスの消息を私に尋ねた。私は父親の消息は知るよしもないが、息子はトロイアの戦場で目覚ましい働きをしたと語った。
  • アイアスは、かつてアキレウスの武具をめぐって私と競い、それに敗れたことをまだ憤っていた。私は話を聞いてくれと語りかけたが、アイアスは何も答えず去っていった。
  • 冥王の館の中で、ミノスが死者に裁きを下している姿があった。
  • 巨人オリオンが人気ない山中で、狩った獣を駆り集めている姿があった。
  • ティテュオスが270メートルにわたって横たわっていた。二羽の禿鷹がその肝臓を食い破っていた。レトに狼藉を働いた報いであった。
  • タンタロスが責苦を受けつつ水中に佇んでいた。のどの渇いた老人が水を飲もうと身をかがめると水は消えてしまうのだった。さまざまな果実が頭上に実っていたが、老人が手をのばして取ろうとすると、風がそれを吹き飛ばした。
  • 巨大な岩を両手で押し上げているシシュポスがいた。岩を頂上めがけて押し上げるが、頂上の手前で岩は押し戻され、再び平地に転げ落ちた。
  • ヘラクレスの姿もあった。これは彼の幻影であり、本人は天界にいるのだった。彼は私に語った。「そなたもわしと同じ苦しみを受けているのだな。わしもかつて自分より劣る男に仕えさせられ、この場所へ冥府の犬を連れ帰るべく差し向けられた。わしは見事にその犬を地上に連れて帰ったが、この時ヘルメスアテナが付き添って下さった。」
私は他の英雄を見れないかと、しばらくその場で待っていたが、無数の亡者が集まってきたので恐怖にとらわれた。私は急いで船に戻り部下たちに出発を命じ、こうして我らは冥府を去った。」


関連

人名

亡霊として現れた者を青地で示した。
オデュッセウス テイレシアスの予言を聞きに冥府へ降りた
キルケ 魔女。オデュッセウスを冥府へ行かせた
ペリメデス オデュッセウスの部下
エウリュロコス オデュッセウスの部下
テイレシアス 亡霊。オデュッセウスに予言を与える。
ハデス 冥界の王
ペルセポネ ハデスの妻
エルペノル 亡霊。第10歌で死んだ、オデュッセウスの部下だった男
アンティクレイア 亡霊。オデュッセウスの母
ヘリオス 太陽の神
ポセイドン オリュンポスの神
アルテミス オリュンポスの神
テレマコス オデュッセウスの子
テュロ 亡霊。サルモネウスの娘。エニペウス河に恋をした
クレテウス テュロの夫。アイオロスの子
エニペウス 河神。テュロが恋した神。
ペリアス テュロの息子。父はポセイドン
ネレウス テュロの息子。父はポセイドン
アイソン テュロの息子。父はクレテウス
ペレス テュロの息子。父はクレテウス
アミュタオン テュロの息子。父はクレテウス
アンティオペ 亡霊。河神アソポスの娘。ゼウスと共寝した
アンピオン アンティオペの息子。テーバイを築いた
ゼトス アンティオペの息子。テーバイを築いた
アルクメネ 亡霊。アンピトリュオンの妻。ゼウスと交わりヘラクレスを生んだ
ヘラクレス アルクメネの息子。本人は天界におり、影が冥界にある
メガラ 亡霊。クレオンの娘。ヘラクレスの妻。
エピカステ 亡霊。オイディプスの母。首を吊って死んだ
オイディプス テーバイの王。エピカステの娘
クロリス 亡霊。ネレウスの妻。イアソスの子アンピオンの娘
イアソス アンピオンの父
ネストル ネレウスの子
クロミオス ネレウスの子
ペリクリュメノス ネレウスの子
ペロ ネレウスの娘
イピクロス 豪勇の者。ペロと結婚する条件は、彼の牛を奪うことだった
レダ 亡霊。テュンダレオスの妻
テュンダレオス レダの夫。スパルタ
カストル テュンダレオスレダの子
ポリュデウケス テュンダレオスレダの子
イピメデイア 亡霊。ポセイドンと交わった
アロエウス イピメデイアの夫
オトス イピメデイアの子。巨人
エピアルテス イピメデイアの子。巨人
オリオン 巨人
アポロン 神。ゼウスレトの子。オトスエピアルテスを討ち取った
パイドラ 亡霊
プロクリス 亡霊
アリアドネ 亡霊。ミノスの娘
ミノス 亡霊。クレテ王。冥府では、亡者を裁いている
テセウス アリアドネを連れ去ろうとした
ディオニュソス
マイラ 亡霊
クリュメネ 亡霊
エリピュレ 亡霊
アレテ アルキノオスの妃
エケネオス パイエケス人の長老
アルキノオス パイエケス人の王
アガメムノン 亡霊。アトレウスの子。ミュケナイ
アイギストス アガメムノンを殺した
クリュタイムネストラ アガメムノンの妻。夫を殺すのに協力した
プリアモス トロイア
カッサンドラ プリアモスの娘。アガメムノントロイアから連れ帰った
ヘレネ メネラオスの妻。トロイア戦争の原因となった
ペネロペ オデュッセウスの妻
メネラオス スパルタ
オレステス アガメムノンの子
アキレウス 亡霊。ペレウスの子。アイアコスの末裔
パトロクロス 亡霊
アンティロコス 亡霊
アイアス 亡霊。テラモンの子
ネオプトレモス アキレウスの子
エウリュピュロス トロイア軍の勇士。テレポスの子
メムノン トロイア軍の勇士
エペイオス トロイの木馬を作った
アレス 戦さの神
テティス 女神。アキレウスの母
アテナ アキレウスの武具を賭けた競争を審判した
ティテュオス 亡霊。[[ガイア]の子。ハゲタカに肝臓を食われている
タンタロス 亡霊。責苦を受けており、目の前の水を飲むことができない
シシュポス 亡霊。岩を押し上げ続ける責苦を受けている
ヘベ ゼウスヘラの娘。ヘラクレスの妻
ヘルメス ヘラクレスの冥府行きに付き添った
テセウス 古の英雄
ペイリトオス 古の英雄

地名

オケアノス 世界の果てを流れる河
イタケ オデュッセウスの故国
アイアイエ キルケの島
イリオス トロイアのこと
テバイ テイレシアスのいた町
トリナキエ ヘリオスの牛がいる島
イオルコス ペリアスが住んだ国
ピュロス ネレウスが住んだ国
オルコメノス イアソスが統治した国
ピュラケ イピクロスが牛を飼っていた地
クレタ アリアドネがいた地
アテナイ テセウスアリアドネを連れて行こうとした地
ディア アリアドネが死んだ島
スパルタ メネラオスの地
スキュロス ネオプトレモスがいた地
パノペウス ピュトへ行く途中の町
ピュト デルフォイのこと


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