桜場コハル作品エロパロスレ・新保管庫

侵入者(前編)

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coharu

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林間学校1日目。夜。清里高原のとある旅館にて─────。

「ケイコ、それは本当なんだな?」
「うん。時間は………たぶん、消灯時間から1時間後、11時だと思う」
「でも、入ってくるのが藤岡くんだったら、それはそれでいいなぁ~、はぁ~~もぅ」
「リコ、藤岡がどうかしたのか?」
「なっ!! べ、別に何でも無いわよ!! アンタもベタベタしてるんじゃないわよ!!」
「何だと? 私はただ、藤岡"で"遊んでるだけだ。別に問題ねーだろ?」
「大問題よ!! アンタに藤岡くんは渡さないわ」
「あ、欲しかったらやるよ」
「やるって……そんな物みたいに言わないでよっ」
「ふ、2人とも……喧嘩はやめよ……うッ?!」
「「ケイコ」」
「な、なに……」
「藤岡の事だよ」
「ふ、藤岡くん?」
「そう。ケイコは藤岡くんの事、どう思ってんのよ?」
「まぁ、私は便利なヤツだと思ってるけどな」
「アンタには訊いてない!」
「何だとー!! やるかー?!」
「いいわ。私だって手加減しないわよ?」
夏奈・ケイコ・リコの3人が泊まることになった207号室は大混乱の様相を呈していた。
話の発端はケイコが他のクラスメイトから「男子が夜中に忍び込もうとしている」という話を聞いて、
3人で作戦会議を開いていたのだった。
ちなみに部屋割りは、女子は3~4人のグループに別れてそれぞれ部屋が割り当てられており、
男子は全員大部屋で雑魚寝である。もちろん、その中には同じクラスメイトの藤岡も居る。
藤岡は出発前から女子の部屋に忍び込む話を知っており、彼も作戦会議に参加させられていた。
だが、夏奈と仲の良い藤岡は、半分脅される恰好で「女子、特に南には喋るな」と口止めされていたのだ。
さて、207号室の作戦会議は相変わらずの混乱ぶりであった。
夏奈とリコは何だかんだ言って仲は良いものの、未だに「水と油」の関係であった。
どちらが水でどちらが油かはさておき、この2人が居ると必ず喧嘩になることは明白である。
ケイコは張り合う2人を見て、深い深い溜息をついた。
「ああ、何でこういう組み合わせになったんだろう……」
言うまでもない。3人は部屋割りの際、見事に「余って」しまったからだ。
夏奈とケイコは最初からペアを組んでいたが、この2人を受け入れるグループが他に無く、
ちょうど余っていたリコが「一緒にならない?」と言ってきたので何となく一緒になった次第である。
まぁ、3人は適度に話す仲なので、これはこれで良かったのかも知れない。



夜10時。宿は消灯の時間を迎えだ。
宿の2階は異様な緊張感に包まれていた。
3人の作戦会議はなおも続行した。
「なぁ、ケイコ」
「なに?」
「いっそのこと、私らが襲っちゃえばいいんじゃない?」
「ち、ちょっとカナ、大丈夫なの?」
「なぁに。もし入ってきたのが藤岡だったら、窓から紐無しバンジーの刑だ」
夏奈が99%冗談でそう言うと、リコは夏奈の布団の上に乗ってパジャマの胸ぐらを掴む。
「アンタねぇ。藤岡くんにそんな事したら1カ月給食抜きじゃ済まないわよ?」
「じょ、冗談だよぅ、そんなに怒るなよ。私とリコの仲じゃないか」
「ふん。べ、別に私はアンタと好きでこうしてる訳じゃないんだからねっ」
「と、取り敢えず、男子が来たら私を起こしてくれ。全員追い払ってやるよ」
「わ、分かったわ」
「あの……一応、結論が出た……で、いいのかな?」
「おう、そうしよう………ぜ……Zzzz」
夏奈は勝手にそう決めて、さっそく眠りに就いてしまった。
1秒あれば寝られると自称する夏奈だけあって、彼女はもう夢の中に居た。
「わ、私達も、もう、寝ましょうか」
「え、ええ。でも、藤岡くんだったらどうしよ~ぅ。素直に襲われちゃおうかしらん。はぅーん」
「………………」
「ちょ、ちょっと何よ。ケイコももう寝ちゃったの? まぁいいわ。私も寝ましょう」



深夜0時─────。

207号室の引き戸が静かに開く。
雨戸は開けっ放しなので、部屋は月の明かりでぼんやりと照らされており、電気が無くても中の様子は良く分かる。
6畳の和室には3人の布団が並べられ、そのうち2つは既に乱れていた。
(な、なぁ。ほ、本当に行くのか?)
(んだよ藤岡。いつも南にやられてんだろ? 仕返しすんなら今のうちだぜ?)
(べ、別におれは南を………)
(お、やっぱり旦那は優しいな。寝ている女房に手は出せねぇってか?)
(そ、そういう意味じゃないよ……)
藤岡も含む男子3人は、部屋の前で中の様子を窺っている。
(よし、オレが見張り役になってやるから、藤岡、行ってこい)
(な、何でおれなんだよ……。お前が行けよ)
(やっぱりここは旦那の出番だろ? 本当に嫁にしちまえよ。ひっひっひ)
(おっと、俺もごめんだぜ? 俺はか弱いから南に蹴られたら一溜まりもない)
((ラグビー部のレギュラーが何言ってるんだ)わ、分かったよ。行くよ)
藤岡は渋々と返事を返し、そして、ゆっくりと部屋の中へと入っていった。
(しゃあない。俺もついて行ってやるよ)
体格の良いもう1人の男子も、続いて入っていった。実は彼、リコ狙いである。

侵入に成功した藤岡達は、まず、部屋の様子をチェックする。
一番手前はケイコ、真ん中はリコ、そして奥は夏奈………のハズだが、乱れた布団の上に彼女の姿はない。
おかしいなと思って奥のベランダの方へ目をやると、
何と夏奈はそこだけカーペット敷きになっている部分でがぁがぁといびきをかいていた。
その様子を見て、思わず笑みが零れる藤岡。
(くすっ、南、寝相悪すぎだよ。でも、南らしくていいなぁ)
そんな夏奈の寝顔を見たくなった藤岡は忍び足で部屋の奥へと進み、気付かれないようにそっと夏奈に近付く。
月の明かりに照らされた、何とも幸せそうな夏奈の寝顔。
「むにゃむにゃ……こんないっぱい…………食べられないよ……………ぐぅ」
きっと美味しいものを沢山食べている夢でもみているのだろうか。
(やっぱり南は可愛いな)
藤岡はついつい、彼女の寝顔に見入ってしまった。
この後、とんでもない事件に巻き込まれることも知らずに。

突然、夏奈の片脚が宙に伸びた。
「?」
藤岡がそれに気付くと、その脚は一端下に引っ込んだかと思うと、もの凄い勢いで藤岡の方へと飛び出した。
 バキッ!!
「ぐはっ!!!??」
顔面に直撃した藤岡は、そのままケイコ達が居る側へと吹き飛んだ。
 ぐきっ
何か嫌な音がしたが、藤岡はなんとか壁や柱への直撃は免れた。
直撃した顔面は、幸いにも怪我は無かった。が、激痛が彼を襲う。
「痛ッ………」
しかし、蹴飛ばした本人には文句は言えない。
相手はは愛しの夏奈であり、まだ夢の中に居る。当然、悪意は無いわけだ。
「あいたたたたたたた、取り敢えず退却しよう」
藤岡はこれ以上の長居はせず、さっさと部屋へ戻ることに決めた。
─────そう言えば、

 むにゅ、むにゅ。

手に柔らかな感触がある。
何だろう?

「いい加減、どいてくれるかしら?」
「!!!!」
藤岡は驚いて声のする方を振り向く。そこにはリコの姿はあった。
しかし、藤岡の顔は月明かりのせいで逆光となっており、リコからは誰だかは分からない。
「アンタねぇ、何時まで揉んでんのよ? さっさと……」
そう言ってリコは……
「ど・き・な・さ・い・…………」
握った拳に力を溜めて………
「よォォォ!!!!」
 バキッ!!
藤岡にその拳をお見舞いする。
「うわぁああああ!!!」
 ドン!!
突き飛ばされた藤岡は、そのまま壁に激突した。頭の中がフラフラする。
ふと、眩しい光が藤岡の顔に当たった。
「……………って、藤岡くん?」
リコは明日のオリエンテーリングで使う予定の懐中電灯を彼に向けて、そして目を丸くした。
あろうことか、自分で殴り飛ばした相手は、片思いの藤岡本人であった。
「な、何で………」
藤岡はさっさと事情を説明すれば良いものの、すでにパニック状態に陥っており、その場でおろおろするだけであった。
何とも情けない……。
「ご、ご、ごめんなさい。お、おおおおお俺はわわわわわわわわわ悪気があってこのようなここここここことは………」
そう言えば? と相方の事を思いだした藤岡は、出口の方に目をやる。
一緒に居たはずの男子2人は先に逃げ出してしまったのか、気配すら感ぜられなかった。
呆然とするリコ。おろおろする藤岡。2人はしばし、互いに見つめ合っていた。

(藤岡くんがここに来たということは……多分、他の男子が仕組んだに違いない。
 でも、これは良いチャンスかも知れないわ。
 考えようによっては藤岡くんが『私のために』来てくれたのかも知れないんだから)
(ど、どうしよう。彼女に睨まれている。このまま先生にバレたら大変だ。
 多分、他の男子も巻き添えを喰らう事になるだろう。そうなったら南にも嫌われてしまう……)
(うん、ここで私が色仕掛けをしたら、ふふふ、藤岡くんはイチコロね。
 見てなさい、カナ。アナタから彼を奪ってみせるわ。覚悟しなさい)
(うわ……、何かニヤニヤしている。マズい。女子全員に言いつける気だ。
 まずは南とケイコさんに言うに違いない。わぁ、おれ、絶対に南に嫌われたぁぁああああ)
藤岡の顔は蒼白としていた。だが、悪夢の始まりはこれからだった……。



「やっぱりお前が来たか…………」
「なッ……!!!!」
振り向けば、夏奈が自分の目の前に立ち、上から鋭い目線で睨み付ける。
藤岡は文字通り、「蛇に睨まれた蛙」状態である。
「み、南、おおおおお落ち着くんだ。お、おれはべ、べ、別にお、おか、おか、おか、」
『おかしなことをするつもりはない』と言いたいところだが、舌が回らず上手く弁解出来ない。
夏奈の背後に雷雲が迫ってきた。今にも藤岡を直撃せんとばかりに稲妻が光っている……様に見える。
「ふぅーん。私らが寝ている間に『お菓子』を奪おうとしたのか。いい度胸だ」
「へ?!」
「藤岡。食べ物の恨みは恐ろしいって、知ってるか?」
「あ、あの、だ、だだだだだから、そ、そうじゃなくって……」
「フッフッフ。どうやら知らない様だな。何ならこのカナ様が教えてやる、クックックック」
(南、違うよ。そういう意味じゃないよ)
藤岡は頻りに許しを請おうとするが、恐怖のあまりに言葉が出ない。
夏奈が何か勘違いをしているのは確かだが、ここまで怒らせたそもそもの原因は自分自身にある。
「お、おれが悪かった。だ、だだだだだだから今回だけは、その、見逃し………ひぃっ!!」
夏奈のグキゴキと間接を鳴らす音が聞こえる。藤岡は遂に最期の時を迎えたのだと悟った。
「最期に言うことは?」
「ひゃぁああ!?」
後ずさる藤岡。しかし夏奈は、クックックと不敵の笑みを浮かべながら、ゆっくりと彼に近付く。
「無いのか? 無いんならその場で消してやる」
チアキから聞いた話だと、本気で夏奈を怒らせた男子は、無事で帰った試しが無いという。
その話を思い出した藤岡は、ついに最期を迎えることを覚悟した。
──────その時だった。

「ちょっとカナ!! やめなさいよっ!!」



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