とある街の成人式。懐かしい面々、おなじみの面々が、それぞれオメカシして集まっていた。
「トウマ、ひっさしぶりー」
「ん? おお、内田じゃないか。奇麗な晴れ着だな」
「親戚のお下がりだけどね。トウマは、その、カッコイイね」
上下とも、少々だぶだぶの、男っぽいパンツスーツ姿のトウマ。
「……半分は、アキラ兄貴のお下がりだ」
「実際、男物だったわけだ」
だが、胸の飾りやブラウスの着こなしで、見事にハマっていた。
「ところで、さっきフジオカくんに送って来てもらってなかった?」
「え、ああ。紆余曲折があってなあ」
「ふーん。ま、深くは聞くまい、聞くまい。なんかあったら、連絡頂戴ね」
「お、おぅ。あ、マコトも来たぞ」
入り口の方に、紋付袴姿のマコトが居た。
マコトはトウマを見付けると、パカパカと慣れない草履を慣らしてやってきて、どちゃっとコケた。
「相変わらずだな」
「へへっ。まいど、トウマ。内田は久しぶり」
トウマが「しょうがねえな」と、マコトに手を伸ばし、引き上げる。
「あれっ、チアキは?」
「まだみたいだよ……あ、来た来た」
外の駐車場を見ると、見事な晴れ着姿のチアキが、アキラの運転する車から降りるのが見えた。
「ねえトウマ。助手席にカナちゃんいなかった?」
「この服のヌシと、カナは、いろいろ紆余曲折が」
トウマが溜息まじりに赤くなる。
「……深くは聞くまい、聞くまい」
「いーじゃないかっ! 久々にみんな集まったんだから、たのしくやろーっ!」
呆れ気味の内田の前に、懐から出した扇子をぶわっと開いてみせるマコト。
「なにやってんだ、おまえら」
と、マコトたちを見付けたチアキがむっくり現れた。
「うわっ、キレイになったね。背も伸びたし」
チアキはどこかハルカにも似た、立派なレディになっていた。
「トウマ、ひっさしぶりー」
「ん? おお、内田じゃないか。奇麗な晴れ着だな」
「親戚のお下がりだけどね。トウマは、その、カッコイイね」
上下とも、少々だぶだぶの、男っぽいパンツスーツ姿のトウマ。
「……半分は、アキラ兄貴のお下がりだ」
「実際、男物だったわけだ」
だが、胸の飾りやブラウスの着こなしで、見事にハマっていた。
「ところで、さっきフジオカくんに送って来てもらってなかった?」
「え、ああ。紆余曲折があってなあ」
「ふーん。ま、深くは聞くまい、聞くまい。なんかあったら、連絡頂戴ね」
「お、おぅ。あ、マコトも来たぞ」
入り口の方に、紋付袴姿のマコトが居た。
マコトはトウマを見付けると、パカパカと慣れない草履を慣らしてやってきて、どちゃっとコケた。
「相変わらずだな」
「へへっ。まいど、トウマ。内田は久しぶり」
トウマが「しょうがねえな」と、マコトに手を伸ばし、引き上げる。
「あれっ、チアキは?」
「まだみたいだよ……あ、来た来た」
外の駐車場を見ると、見事な晴れ着姿のチアキが、アキラの運転する車から降りるのが見えた。
「ねえトウマ。助手席にカナちゃんいなかった?」
「この服のヌシと、カナは、いろいろ紆余曲折が」
トウマが溜息まじりに赤くなる。
「……深くは聞くまい、聞くまい」
「いーじゃないかっ! 久々にみんな集まったんだから、たのしくやろーっ!」
呆れ気味の内田の前に、懐から出した扇子をぶわっと開いてみせるマコト。
「なにやってんだ、おまえら」
と、マコトたちを見付けたチアキがむっくり現れた。
「うわっ、キレイになったね。背も伸びたし」
チアキはどこかハルカにも似た、立派なレディになっていた。
「よっ、チアキ。今日は、成人式だし、暴露話があるんだ」
マコトが扇子を仕舞いながら言った。
「内田とトウマは知ってることなんだけどさ~」
ごそごそ。袖の中が探られる。
「ボクと、内田? あれのことか」
「えーっ。いまさら」
「なんだ。私に隠し事か」
「いまさら、かもね」
袖から出て来たのは、旧い髪留めだった。
マコトはそれを掴むと、自分の頭にさしてみた。
「マコちゃんでーーーーっす!」
「バカ野郎!」
満面の笑み。直後に、激しい突っ込み。
トウマが苦笑して、内田が爆笑した。
「いくら名前が似てるからって、ありえないぞ、バカ野郎!」
「いや、ほんとに、マコちゃ……」
「そんなホラ噴いてると、閻魔様に喰われるぞ」
「信じてくれよー」
「だいたいだな、そんな御立派なセガレをぶら下げてるバカ野郎が、マコちゃんなわけない」
やや俯いた目線でマコトを見据えるチアキ。
「……ちょっと待って」
内田がニヤニヤしている。
「なんで、ご立派なの、知ってるの?」
「「あ゛」」
目を合わせて、固まる二人。
トウマが「なんだ、フライングで成人式済ませたのか」と、肩をすくめる。
「うう、うるさいバカ野郎! ノーコメントだっ!」
「い、い、いいじゃないか。年齢的には問題ないよ」
「認めるなバカ野郎!」
ニヤニヤ内田が「あはは、今日は『バカ野郎』多いねえ」と笑う。
で……。
みんな笑った。明るく笑った。
マコトが扇子を仕舞いながら言った。
「内田とトウマは知ってることなんだけどさ~」
ごそごそ。袖の中が探られる。
「ボクと、内田? あれのことか」
「えーっ。いまさら」
「なんだ。私に隠し事か」
「いまさら、かもね」
袖から出て来たのは、旧い髪留めだった。
マコトはそれを掴むと、自分の頭にさしてみた。
「マコちゃんでーーーーっす!」
「バカ野郎!」
満面の笑み。直後に、激しい突っ込み。
トウマが苦笑して、内田が爆笑した。
「いくら名前が似てるからって、ありえないぞ、バカ野郎!」
「いや、ほんとに、マコちゃ……」
「そんなホラ噴いてると、閻魔様に喰われるぞ」
「信じてくれよー」
「だいたいだな、そんな御立派なセガレをぶら下げてるバカ野郎が、マコちゃんなわけない」
やや俯いた目線でマコトを見据えるチアキ。
「……ちょっと待って」
内田がニヤニヤしている。
「なんで、ご立派なの、知ってるの?」
「「あ゛」」
目を合わせて、固まる二人。
トウマが「なんだ、フライングで成人式済ませたのか」と、肩をすくめる。
「うう、うるさいバカ野郎! ノーコメントだっ!」
「い、い、いいじゃないか。年齢的には問題ないよ」
「認めるなバカ野郎!」
ニヤニヤ内田が「あはは、今日は『バカ野郎』多いねえ」と笑う。
で……。
みんな笑った。明るく笑った。
そして式の会場に向かう途中、チアキがトウマに耳打ち。
「気がついてはいたんだ。でも、私のなかでは、マコちゃんはマコちゃんのままでいてほしいのだ」
「ああ、そうだろうな。あの頃から、マコトには気があったんだろ?」
「だぶん、そうだ。マコトと一緒だと照れくさかったけど、マコちゃんなら、ほら」
「たのしかったよなあ」
「ああ」
席つき、式典が始まる。
チアキの両側にはトウマとマコト。
遠目には、どちらも素敵な彼氏に見えなくもなかった。
「気がついてはいたんだ。でも、私のなかでは、マコちゃんはマコちゃんのままでいてほしいのだ」
「ああ、そうだろうな。あの頃から、マコトには気があったんだろ?」
「だぶん、そうだ。マコトと一緒だと照れくさかったけど、マコちゃんなら、ほら」
「たのしかったよなあ」
「ああ」
席つき、式典が始まる。
チアキの両側にはトウマとマコト。
遠目には、どちらも素敵な彼氏に見えなくもなかった。
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