桜場コハル作品エロパロスレ・新保管庫

相談相手

最終更新:

匿名ユーザー

- view
メンバー限定 登録/ログイン
「ふわぁ」
中学に入り、最初の中間テストが終ると、早めに下校になったチアキは、なんとなく途中の公園のベンチで佇んでいた。
「よー、チアキ。浮かないカオして」
「なんだ、おまえか」
突然現れたマコトに、驚きもせず見上げる。
「なんだとはひどいなあ。隣り、座るぞ」
「勝手にしろ」
マコトは鞄を腹に抱え、ひょいと隣りに座った。
「で、どうかしたのか。ははーん、テストのせいか?」
「おまえじゃないから、それは無い」
「フナだ」
「なんだそれは」
「いや、コイだ」
「オヤジか、バカ野郎」
最後の台詞、いつもならじっとマコトの方を見て声を上げてくるのだが、今日はぼそりと囁くようだった。
「藤岡を知ってるか? 殆ど会ったことは無かったと思うが」
「そんなこと……あ、どんなヒトだっけ?」
藤岡を良く知ってるのは「マコちゃん」であって自分ではないことを思い出す。
「カナ、いや姉の友人なんだが」
「カナちゃんがどうした」
「二、三回しか会ってないのに、気安く呼ぶな」
「ごめんごめん。最近、会ってないとか?」
「いや、一昨日会った。ちょっと、話したかったんだけど、姉とばかり喋ってた」
「そ、そりゃあ、カ……お姉さんの友達だしな」
「前はその……もっと構ってくれたんだ」
「他に、話せる相手はいない?」
「マコちゃんくらいか」
「はい?」
「おまえじゃない。姉の後輩だ。仲良くしてくれてたんだけど、暫く会ってない」
チアキは空を見上げ「はぁ」と溜息をついた。
「そ、それじゃ、お姉さんに頼んでみたら? 携帯の番号知ってる……」
言いかけた所で「聞いてみる」と、最近買った携帯を開いた。
マコトは先日自分の番号をカナにもチアキにも教えてしまったことを思い出し、少し焦った。
ここは、カナの機転に期待しよう。
「今、調べてくれてる」
と、チアキ。その直後、カナからマコトに“ちょっと隠れろ”と、メールが届いた。
なるほど、と思ったマコトは「ちょっとトイレ」と、公園の隅に向かった。
そしてトイレの影に入るはるか手前、チアキからの着信。
あわてて木陰に隠れた。

「あ、ハイ!」
あわてて声色を作ってみるが、声変わりが進んでしまい、今ひとつ自身がなかった。
『チアキです。覚えてる?』
「う、うん。元気?」
『あまり。ちょっと、相談にのってほしいんだ』
「いいよ」
『実は好きな人がいるんだ。そいつはな』
「うんうん」
──はぁ、藤岡くんね。
『ちょっとバカなんだが、元気者で、顔もそうわるくない』
「へー」
──藤岡くんってバカだっけ? あ、カナの友達だし。
『しょっちゅう会ってるんだが、女扱いされないんだ』
「そーなんだ」
──やっぱ、三つも上だと子供扱いだよなあ。
「そんなタイプなら、ちゃんと言わなきゃわかんないよ」
──と、言ってみる。
『わかった』
電話が切れる。
その直後、「オイ」と言う声がすぐ側で聞こえた。
「ず、ずっとここにいたの?」
「十秒ほど前から、な。番号で分かるだろ」
「えーあーだーらーまー」
「バカ野郎! まったく、昼間っから恥ずかしいことを……」
といいつつ、真っ赤な顔をしたチアキは、マコトの手をとった。
「チ、チアキ?」
「あー恥ずかしい。そうじゃないかって気はしてたが――おいっ!」
掴んだ手を引っ張り、誠を半回転させると、チアキは顔を近づけた。
「いいか、絶対今のは他言無用だ」
「わわわ、わかったよ。でも……」
「でもじゃない。自分でも、なんでだか分からないんだ。
 藤岡とカナがいい感じになって、喜ぶべきはずがなんか変で。
 それから、どういうわけか、おまえの顔みてたら、おかしな気分にだな」
まくしたてるように話すチアキ。顔は相変わらず真っ赤で、その手は小刻みに震えていた。
「オレも、おかしな気分になってきた」
マコトの顔も赤くなり、その目はホイップの十センチ下に釘付けになる。
「おかしな気分とは──ん~~~~~~」

公園の木影、二つのシルエットが重なる。

「なにをする、バカ野郎」
「ごめん……あの、チアキがあんまり可愛いから」
「バカ野郎……バカ野郎……」
「こんなことしたんだ、もう、だめだよね」
俯いたマコトが、手を振りほどいて去ろうとする。しかし、その手は捕まえられたままだった。

「責任とれ。今日は一緒に帰るんだ」
「え? あ、ああのー」
「明日も、あさってもだ。わかったな」

繋がった二つの影が、歩き出した。


  • あま〜い -- 名無しさん (2009-09-06 01:08:34)
  • いい。よすぎる -- 名無しさん (2009-09-06 17:55:44)
  • 吐きそう -- 名無しさん (2017-08-15 17:12:45)
名前:
コメント:


目安箱バナー