桜場コハル作品エロパロスレ・新保管庫

五年後くらい(後編)

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coharu

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「あれ、千秋。遅かったじゃない」
千秋が帰宅した頃には、日はとっぷりと暮れて来た。
「遅いぞ。晩ご飯食べずに待ってたんだから」
「はぁ、ごめんなさい」
どこか上の空で返事をした千秋は、少し冷めた夕食が並んだ食卓についた。
「……はぁ」
「どうした千秋? 目が二千光年ほど遠くを見てるぞ」
「……そう」
「ちょ、おかしいって。バカ野郎って言われるかと思ったのに」
「ふーん。あ、ハルカ姉様~」
キッチンで鍋を温め直している春香が「なーに?」と答える。
「私、大切な物を奪われたようです。はぁ」
「千秋、正直に答えろ。ヤッたのか?」
「それはちがう、バカ野郎!」
こんどはフジオカがふっとんで、カナの頭を直撃した。
かなりヘタったフジオカは、その勢いで天井に直撃し、跳ね返って千秋の手に戻った。
「でも、マコトとデートしてたんだろ?」
「いやあれはデートではない。映画を共にみただけだ……あ、なんで知ってる」
千秋は、いきなり目が覚めたようにカナを見た。
「それはデートだろ。藤岡から聞いた」
「なぜ藤岡が……」
「某所で冬馬が、千秋とマコトがいちゃついてるのを見てたのを、捕まえたらしい。
それから、『冬馬って女だったんだなー』だって。笑っちゃうよねー」
「今の今まで気がつかなかったのか。しょうがない男だ」
「あははっ! でさ、めちゃめちゃ可愛いとか……うわ~ん」
急に泣き出すカナ。
「藤岡ったら、冬馬かわいいよ、かわいいよって。かわいい、よ、って」
「泣くなカナ、一時の気の迷いか、気にし過ぎだ」
「そ、そうだよな」
「そうそう。カナのがずっと付き合い長いんだから。はい、ごはんよ」



「で、冬馬。なにがあった」
翌日の教室、千秋がつめよっていた。
「ちあき~、聞いてくれよ。藤岡がいきなり湧いてさあ、ボクが女のが分かるとベタベタしつこくってさ。カナに悪いだろって言ってるのに」
「……そうか、問題は藤岡のほうみたいだ。カナ、昨日泣いてたぞ」
「困ったなあ」
「ときに冬馬、なぜ眼鏡をかけている。両目1.5のはずだろ」
「え、あーっと、花粉症対策」
「ちょっと時期外れだが、まあ体質じゃしょうがない」
「ち、千秋こそ、どうだったんだ」
冬馬は小さく指差して訊いた。
「どうだったとは?」
「真と……あ」
「なぜ知ってる?」
二人の目が合う。そして、同時に赤くなった。
「どうしたのさ、女同士でみつめあって」
ここで湧いたのは、その真だった。
「ば、バカ野郎!」
「なんだ、かわんねーな、二人とも」
「ん? そうかもね。あははっ、ずっと変わってないのかも」
「うーむ……」
私はずっとこんなのが好きだったのか、と一瞬だけ思ったが、あわてて否定する千秋。
「それより冬馬、藤岡どうすんだ」
「参ったなあ、あいつ変にモテるから」


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